もう一人の自分
他人の夢の話ほど興味の無いものはないだろう。でも書く。ビックリしたから。
蜘蛛の糸を登っていけば、この地獄から脱け出せるらしい…
Aさんは蜘蛛の糸を探して、地獄を何十年も彷徨っている。
Bさんはそれを見ている。
Aさんはどこをどれだけ探しても蜘蛛の糸が見つからず、あきらめそうになったこともあったけど、最近は何だか蜘蛛の糸が見つかりそうな気配を感じていた。
Aさんはある日、とうとう蜘蛛の糸を見つけた。
「やっぱり、蜘蛛の糸は、本当にあったんだ…」
同じくらいのタイミングで、周りにいた人達も蜘蛛の糸を見つけた。しかしその時、蜘蛛の糸の一番近くにいたのはAさんだった。
Bさんは、きっとAさんは何十年も蜘蛛の糸を探していたのだから、他人を蹴落としてでも我先にと蜘蛛の糸を登るだろうと思った。
Aさんが蜘蛛の糸に手を掛けようとした時、周りの人達もすぐAさんの傍まで迫ってきていた。
その時、Aさんは言った。「お先にどうぞ」
えっ!?Bさんは自分の耳を疑った。まさかAさんがそんなことを言うとは想像もしていなかった。
Aさんは夢の中の自分で、Bさんはこれは夢だなと何となくわかっている自分である。
俺は混乱する。何でこんな夢を見るんだ?もう一人の俺がいて、そいつが俺に何かを伝えようとしているのか?
そんなことを考え始めたら、夢は終わった。