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酒税法はじめの一歩と自分でウイスキーを蒸留する方法(滋賀県へ行こう)

ウイスキーの製造工程を勉強してみると、つい自分でもウイスキーをつくってみたくなって、ついついアランビック型蒸留器をぽちりそうになったりします。とはいえ自分でお酒をつくることは違法であり、密造になってしまうとの認識はあったので、備忘録として初歩の初歩的な酒税法情報をまとめます。そして最後に、長濱蒸溜所を推します。

1.YouTube動画で「Moonshine」を検索すると…

最近は動画でなんでも調べられる時代になったなあと驚いています。例えばYouTubeで「Moonshine」と検索すると、海外における蒸留酒の作り方動画がずらりと並びます。
ウイスキーづくり動画もありますが、私のお気に入りはバナナからフルーツブランデー(ウガンダの地酒とのこと)をつくる動画です。英語が得意なわけではないのでフィーリングですが、バナナは果物なのに糖化工程が必要になること等、化学的なアプローチを学べて面白いです。

2.酒税法ざっくりまとめ・酒造免許の取得のハードル

とはいえYouTube動画はあくまで根拠法が異なる海外の場合で、日本においては、酒類(アルコール分1%以上の飲料等)をつくりたいと考えたときは、酒税法に基づき、酒類の品目別・場所ごとに、税務署長から製造免許を受ける必要があります。
以下、国税局HPのQ&Aから一部を抜粋して引用します。

【自家醸造】 より:
Q3 …自宅で自家製ビールを造ることに問題はありますか。
A 酒類を製造する場合には税務署長の免許が必要となります。
…酒類の製造免許を受けないで酒類を製造した場合は、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられるほか、製造した酒類、原料、器具等は没収されることになります。

【酒類製造免許関係】より:
Q1 酒類を製造するにはどのような手続が必要ですか。
A 酒類を製造しようとする場合には、酒税法に基づき、製造しようとする酒類の品目別に、製造場ごとに、その製造場の所在地の所轄税務署長から製造免許を受ける必要があります。…

酒類製造免許の申請にあたっては、以下のような事項を記載した申請書や添付書類が必要になり、申請者の法律の遵守状況や経営の基礎の状況、製造技術能力、製造設備の状況、最低製造数量基準といった要件が審査されます。
製造免許取得後の1年間の製造見込数量として、ウイスキーで年間6000リットル(700mlボトル×約8,572本!)以上が求められる等、事業化を考えていない個人にとっては、酒類製造免許のハードルはものすごく高いです…。

新規免許申請時に申請書や添付書類として用意すべきもの(「酒類製造免許申請書(A)チェック表」より):
・敷地の図面、建物等の配置図
・ 製造工程、設備の状況がわかる書類
・ 事業概要や収支の見込み、所要資金額及び調達方法の説明
・販売管理方法に関する取組計画
・酒税法10条の規定に該当しない誓約書、履歴書、住民票の写し
・地方税の納税証明書
・製造に必要な技術的能力を備えていることを記載した書類
・契約書等の写し、土地及び建物の登記事項証明書 等

なお、ウイスキーではありませんが、東京クラフトリキュール代表の方が、ブログにて免許取得にどれほどご苦労なさったのか分かりやすくまとめてくださっており、とても参考になります。さらに当時のクラウドファンディングページの説明によると、「東京23区内は人口密集地帯のため、火力と高温の蒸気を取り扱う設備の使用許可はそう簡単には取得できません。…小規模設備を揃えて1年近い行政との交渉を重ねた末、昨年ついに酒造免許取得に至りました」とあるように、製造する場所を確保するにも、また別のハードルがあったようです。免許、たいへん!

3.Strathearn蒸留所のウイスキー・スクール

なんとか酒類製造免許のない個人でも、ウイスキーの製造体験をすることができないものか考えていたところ、『ウイスキー・ライジング』において、嘉之助蒸溜所の方が、南ハイランドのストラスアーン蒸留所で研修を受けていた記載があったことを思い出しました。

「小正醸造はまた海外にも目を向け、インスピレーションや専門知識を求めた。2016年5月に小正芳嗣氏は焼酎蒸溜蔵の2人のスタッフと一緒に、スコットランドのストラスアーン蒸留所のウイスキー・スクールに参加し、実際に手作業でウイスキーを造ったのだ。それはわずか1週間で、生産規模は非常に小さなものであった。ストラスアーンはマッシュが300kg仕込みの、スコットランドで最も小さい蒸溜所の1つであったが、嘉之助は1トン仕込みであった。しかし小正芳嗣氏によれば、それはかげがえのない経験であったという。」
以上、ステファン・ヴァン・エイケン『ウイスキー・ライジング』小学館、2018年、pp.243-244より引用。

なんとも魅力的なウイスキー・スクールの記述に、私も参加してみたいとざっくりストラスアーン蒸留所のHPを拝見してみたのですが、一般募集している様子はなく、悲しい限りです…。

4.長濱蒸溜所の蒸溜所体験ツアーへ行こう!

もはやこれまでと思ったときに出会った蒸留所こそ、滋賀県長浜市にある長濱蒸溜所です。長濱蒸溜所では、なんとウイスキーの蒸溜体験ツアーを定期開催されているのです。

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一泊二日の長濱蒸溜体験ツアーでは、「粉砕作業、マッシングからのモルトだし体験、蒸留工程(初留、再留)、フィリング、ウォッシュテイスティング」といった作業を体験できるだけでなく、併設の長濱浪漫ビールのレストランでの昼食2食に夕食1食、ホテル宿泊費、Tシャツ、グラス1脚、 ピンバッジ、当日自分でボトリングしたニューポット1本(500ml)、修了証までついてきます。
JR長浜駅から徒歩約4分とアクセスも良く、ありがたいかぎりです。

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自分でウイスキーを蒸留してみたい方、ぜひ滋賀県に行ってみてください!