[WS音源探訪メモ] GForce Oberheim OB-1
GForceから2024年7月にリリースされたソフトウェア音源のGForce Oberheim OB-1を購入したのでウィンドシンセ用に触ってみた記録です。
OB-1概要
OB-1はOberheim社のハードウェアシンセでこれをソフトウェアエミュレーションしたのがGForce社のOberheim OB-1。他のGForce社のOberheim音源同様、「Oberheim公認」のソフトであります。
オリジナルのOB-1は販売数少なく著名アーティストのヒット曲での使用も少ないようなので、エミュレータソフトはこれが初かもしれません。同じ理由でOB-X等に比べるとシンセサイザー機種としてのネームバリューが弱いと思いますが、そのぶんソフト化にあたってオリジナルから変更があっても気にする人が少なく、自由度が高いとも言えます。それもあってかOB-1には16音ポリ化を始めとしオリジナルに無い機能がかなり追加されていて、デモ版試したらウィンドシンセ向けにかなり使いやすい印象だったのでイントロセールにつられて購入してしまいました。
Mac/Win プラグイン、スタンドアロン £99.99(時々セールされると予想)。またGForce Oberheim製品の既オーナーはセールの種類や時期によっては公式サイトSHOPで買う場合さらに割引されることもあるかもしれません。
国内代理店からなら
https://h-resolution.com/product/oberheim-ob-1/
デモ版あり、一部のプリセットしか読み込めないのと、作成した音色の保存ができない制限はあるものの7日間6時間以内ほぼフル機能を試すことができます。
結論
私はGForce社のOberheim SEM(これも初のOberheim公認SEMエミュレーションソフト)を愛用しておりまして、これとの違いや、あえて買い足す必要があるのか、という視点も交えつつデモ版を試していたのですが、試していたら楽しくなってつい買ってしまいました。
良いと思った点:
・ブレスによるフィルター開閉ノイズは発生無しとみなせるレベル
・音の切れ目のパツパツは初期設定のままで全く気にならない
・音の立ち上がり速め可能(ゆっくりめも可能)
・音は良い!
・ローパスフィルターが2poleと4poleの2種類ある(劇的変わるわけではないが、少しmoog寄りにできる)
・ほとんどのツマミとボタンにMIDI CC LEARNできて、一つのCCを複数のノブにアサインすることも可能
・MACROツマミで全てのツマミを最大値を決めてコントロールできる。MACROツマミにCCをアサインすることでCC(例えばブレス)でツマミを最大値を設定してコントロールできる。
・内蔵エフェクトが使いやすい
・必要ならXLFOとXADSRで、ほぼ全てのノブに個別にLFO設定、ADSR設定できる
・16音ポリ
不満というほどではないけれど、、、いう点
・RESONANCEかけると音が小さくなる傾向が他のシンセに比べると大きい
・まとめて音量をコントロールするパラメータが「VOLUME」しか無く、これでコントロールするとエフェクトのWET音の音量も変わってしまう。エフェクト前の音量を変えられるツマミが欲しかった・・・・
・ここまでできるのならVCOをもう一つ欲しい・・・
・MACROツマミは便利かつ機能として充分ではあるが、例えばCUTOFFをMacro1、Macro2の両方でコントロールすることはできないのは残念
GForce Oberheim SEMとどっちを買えば良い・・・?
・1VCO SAW音色などの、基本的な波形をローパスフィルターをブレスコントロースした音色をGForceのSEMと比べると、同じと言ってよいかと思います。自分が比較して効いた限りではフィルターのかかり具合なども同じでした。つまり基本音色の音、音質は同じ。
・ブレスコントロールの自由度、エンベローブ設定の自由度はOB-1の圧勝。
・パツパツの少なさは同じ程度。パツパツしにくいです。
・操作は基本的なアナログシンセの方法がわかっていれば、SEMよりやりやすいです。ただしパラメーター数は多いので、シンセが初めてというひとはSEMのほうがシンプルで良いかもしれません。
・OB-1は2VCO+SQUARE波のサブオシレーターという構成ですが、GForceのSEMは3VCOなので(オリジナルハードウェアSEMは2VCOだがGForce SEMはもう一つ追加されている)、自由度の高いVCOの数としてはSEMのほうが勝っています
・OB-1はポリ発音可能。SEMはモノ。
ということで、音は同等なのでシンプル優先ならSEM、もう少し複雑なことをしてみたいならOB-1と言えましょう。
あるいは、Cherry Audioが無料のSEMを出しておりますので、https://cherryaudio.com/products/synthesizer-expander-module
SEMはCherry Audioを使うとして、その機能追加版かつOberheim公認としてOB-1を買うというのもアリかしれません。 GForceのSEMはあまりセールをやらないので、OB-1がセールの時に価格差が少なくなることも予想されますのでそういうタイミングがあれば狙い目かもしれません。
あと、OberheimではOB-X系のエミュレータソフトも多いのですが、どうもOB-Xは人気シンセだからかそのソフトも「操作性含めて本物を再現」することにこだわりすぎていて、これがブレスコントロールしたい場合には操作性があまり相性が良くないように感じています。GForceのOB-Xも音は良いのですが、どうも操作していて楽しくなくてデモ版試しただけでスルーしてしまいました。
ウィンドセンセでコントロールする際の設定メモ
いろんな方法があると思いますが、私の設定方法のメモです。
ウィンドコントローラー側
・ブレスセンサーから、CC2を出力。
・グライドセンサーから、CC5(0〜127)を出力
OB-1側
MIDI LEARNの設定(図1参照)
・Macro1ノブにCC2(息)を設定
・Macro4ノブにCC5を設定
Cutoffに直接CC2をアサインするだけも充分演奏できるしこれでも良いのですが、この場合cutoffの範囲は常に0〜127に固定されてしまい音色作りの自由度が下がるので、Macroノブを経由することで最小値・最大値を設定した音作りを可能にしています。
また、GForceのSEMでは、「Aftertouch」でフィルター等をコントロールできるのですが、OB-1でこれをやると、PolyとMono発音の時に、運指に対し発音が遅れる挙動があります(ver1.0、もしかしたらバグ?)。のでとりあえずおすすめしません。
音量とCutoffのコントロールの設定のポイント
前述の通り、cutoffはMacroノブ経由でModulation Matrix的に行います。
Macro1ボタンの隣の「+」を各ノブにドラッグするとアサインができます。そのノブを「右クリックしながら動かす」ことで動かす範囲を設定できます(図1)。ノブの位置に対し、増加方向にも減少方向にも範囲設定できます。
ブレス-Cutoffの設定(息に対する反応も)
Macro1ノブ(CC2をアサイン済み)でCutOffをコントロールします。
ちなみに、CC2でMacro1とMacro2ノブの両方をコントロールすることはできますが、CutoffをMacro1とMacro2の両方で加算してコントロールすることはできません(Cutoffを動かせるMacroノブはどれか1個だけ)。
息によるフィルター開閉ノイズは感じません。かつレスポンスも良いです。この点はウィンドシンセ的には素晴らしいです。
ブレス-音量の設定(パツパツ消しも)
息でcutoffをコントロールするだけでもOKです。
息で音量をコントロールするには設定としてはいくつかありますが、「VOLUME」をMacro1(CC2)でコントロールするのが楽です。ただしこの場合、OB-1の内蔵エフェクトのWET音もコントロールされてしまうので、たとえばリバーブの余韻が一緒にすぐ消えてしまうので、外部エフェクトを使用するなどの必要があります。各オシレーターのLEVELをMacro1(CC2)でコントロールしてもよいのですが、設定が面倒なんんですよね・・・
グライドの設定
グライドセンサーの出力CC(CC5)をMacro3にアサインし、Macro3をPORTAMENTに最大値を決めつつアサインします。最小値・最大値を音色ごとに設定することができますので、特に最小値は、音の切れ目をはっきりさせたい音色の場合はゼロ、なめらかにしたい場合は少し上げる、というのを音色ごとに設定できます。
ピッチEGのかけ方その他の音色コントロールや設定
いわゆる「JUDD音色」をつくるには、アタック時の音程をEGでコントロールする「ピッチEG」が必要ですが、OB-1は丈夫に「XADSR」という、ほぼ全てのノブに個別にEG(ADSR)を設定できる機能があるので、これを使います。変えたいノブをクリックして、XADSRのところの「AMP」を上げる、こうするとADSRが有効になります。
その他の音色コントロールや設定
例として
・VCOの波形をいろいろ変えてみる
・Macro1ノブでオシレーターのパルス幅をコントロール
・SYNCをONにしつつOSC2の音程(Frequency)を変えてハードシンク音色
・XADSRをうまく使ってピッチEGをかける
音作りの過程デモ(動画)
ここで書いたことを中心に、設定や音作りの過程を動画にしました。よくある音色しかつくれていませんが、参考になれば幸いです。
最後に
OB-1、オーソドックスなアナログシンセの操作体系で動かせて、パツパツとかフィルターノイズとかの、いじっていてストレスが溜まるところが無いので、触っていて楽しいシンセでした。なので、SEMでだいたい同じことができるけど買ってしまった感じです。既にウィンドシンセでSEMやmoogのソフトシンセを使っている方が追加で必要かというと微妙ではありますが、まだ持っていない、というのであればオススメできるソフトでした!
※各設定の詳細は公式のチュートリアルもおすすめ