ウインドシンセ音源紹介 1 (ウインドシンセ最適化済みソフト音源編)(2024年2月改訂)
ウインドシンセサイザー向きの外部音源(ソフト、ハード)をいろいろ試してみたり、情報を漁ったりしたメモです。まずはソフト音源でウインドシンセ向けに開発されたもの。導入の参考になれば幸いですがノイズになったらごめんなさい。
・2022年4月3日初版
・2024年2月1日改訂(IFWが配布停止となったので番外へ変更し現在状況を追記。Lyrihorn-1 -2を追加)
はじめに
ウインドシンセサイザー、最近はEWIシリーズやAerophoneシリーズの音源内蔵のものでまずは始めることが多いと思います。というか音源内蔵してないのはEWI-USBとNuRAD/NuEVIだけですものね。で、始めてみて「ウインドシンセおもしろいっ!」て状態まで行くと、内蔵だけでなく外部音源も使ってみたい・・・となりましてこれが沼の始まりと。私自身はそんなにたくさん音源いじったり買ったりしているわけではありませんが、触ったものに関してはメモできますし他の方が使っている情報のメモを集めたりすればそれなりに役に立つかなと思ったので記事にしてみます。
まずはソフト音源でウインドシンセ向けに開発されたものについて。2024年2月現在でこの6つしか無いと思います。他にあったら教えてください。
ウインドシンセ用に作られたソフト編
1. AKAI EWI USB ARIA Software
無料で使えるウインドシンセ最適化済みの生楽器系主体のPCM音源
無料・Mac, Windows プラグインおよびスタンドアロン。ポリ発音可能、PCM方式
http://ewi.akai-pro.jp/ewiusb/
AKAIのEWI-USBの付属ソフトですが、上記からダウンロードしてどのEWIでもAerohponeでもNuRADでも使えます。EWI想定なのでブレスコントロールの設定に悩まなくて良いのが最大の利点。ブレス信号=CC2を送ればOKです。サンプリング音源で生楽器系が得意です。細かい設定は出来ないですが、ソフト内で4音色重ねられるのでその組み合わせで音作りするだけでも充分楽しめて、アナログシンセ音と生楽器系を重ねたりすると個性的な音が得られます。全般的にちょっと音の立ち上がりがもさっと感じるのがいまいちなところですが、超速ビバップとかやらなければ充分使えます。フルートとかLyle Mays系シンセ音色は結構好きです。
[良い点]:無料。ウインドシンセ用に設定済み。4音簡単に重ねられる
[イマイチ点]:細かい設定はできない。アタックがもさっとした音が多め。
♪僕が吹いてみた例(音源全てARIA Software)
その他僕が吹いてみた例↓
https://youtu.be/eWuu6RXBRpY (EWI-USB + ARIA Software)
https://youtu.be/bLk9rl2LXC0 (WX5 + ARIA Software)
https://soundcloud.com/wx5workbook/aria-original-rays-aria-wx5 (WX5 + ARIA Software (音源設定用の.xmlファイルをいろいろ変えてます)
https://soundcloud.com/wx5sandbox/pythagoraswitch-wx5-trio-aria
https://youtu.be/mM3MZ7lSFZ4
2. EVI-NER
Steiner-EVI音源を再現した個性的な音が特徴のウインドシンセ用モノアナログ音源。
$15、Mac & Win プラグイン版のみ、モノ発音アナログ系
https://www.davidsonaudioandmultimedia.com/products/evi-ner
1970年代のSteiner-EVIの音源を再現した超マニアック視点のソフトシンセです。アナログ系モノ発音。ブレス(CC2)だけで特に設定に気を使わずそのまま、EVIだけでなくEWIでも普通に気持ちよく演奏できます。プリセットのいくつかは非常によく出来ていて、特にブラスシンセ系の音色はすごく良いと思いました。お気に入りのプリセットが見つかればめちゃくちゃ幸せになれると思います。IFWと違う音源も吹いてみたい!という場合の第一歩にも良いと思います。CC#2だけでなくEWI5000やNuRADにあるハイレゾのブレスにも対応している数少ない音源です(実のところそんなにハイレゾの効果はありませんが・・・)。ちょっと弱い点としては、プリセットを脱してあれこれやろうとすると機能が限られていたり、操作系がちょっとわかりにくい点。音の立ち上がりが「ぷわっ」となるプリセット音が多いので、それが気に入らない場合調整するのが結構面倒で、ちなみに僕も購入はしたのですが音の調整がしにくいのであまり使ってはいない状態ではあります。あと細かいですが購入時からレジストレーションまでの手間が少し煩雑です。
なお2022年4月現在(ver.1.0.2)はM1 MacのDAWでは「Rosettaモード」で起動しないとレジストレーションが終わらず完全には動作しません)
また、基準ピッチが440Hz固定かもしれません(プラグインホストの環境や、最新版で修正されているかもしれないのでデモ版で試してみてください)。
多機能というわけではないですがプリセットが気に入れば常用間違い無しの素晴らしい音源だと思います。まずはデモ版で試してみることをおすすめします。
[良い点]:ウインドシンセに最適化済み。スムーズ。
[イマイチな点]:細かい音色の調整がしにくい
↓プロフェッショナルの方々による各種ベータテスト演奏
3. Lyrihorn-1
4. Lyrihorn-2
往年の初代リリコン(Lyricon-1)、2代目リリコン(Lyricon-2)の音源部分をエミュレートしさらに機能追加した、個性的な音が特徴のウィンドシンセ用音源。ポリ発音可。
どちらも4500円、Mac & Win プラグイン版のみ
EVI-NERと同じDavidson Audio & Multimediaの製品です。
Lyrihorn-1は初代Lyriconの音源部分のエミュレートをもとに設計されています。初代Lyriconはいわゆるアナログシンセ方式ではなく、オルガンのような倍音加算方式をベースにしているので音作りのインタフェースは結構複雑で狙った音を理論づけて作るにはかなり勉強が必要です(私もまだ全然把握していません)。
参考:初代リリコン外観・サウンド(Garage99さんBlog)
https://lyricon.garage99.net/2022/08/10/lyricon1-movie/
ただしLyrihorn-1のプリセット音色には初代リリコン的な音色がいくつか入っており、それをウィンドコントローラーからブレス(CC2)を出すだけで特に追加設定無しで最初から楽しめるのは大きなメリットです。アナログシンセ方式ではなかなか出しにくい息による音色変化を伴うプリセット音色もあります。また音作りも複雑なことは考えずに、波形を変えたりフィルターやエフェクターを少しいじったりする程度でも充分楽しめます。デモ版を試してプリセット音色が気に入れば購入を検討しても良いと思います。
Lyrihorn-2は、リリコン2の音源部分のエミュレートをもとに設計されておりこちらはアナログシンセ方式ベースなので、音作りに関してはLyrihorn-1よりだいぶとっつきやすいです。これも良いプリセット音色が入っておりブレス(CC2)を出すだけで最初から楽しめます。Tubeという管楽器的コンセプトのパラメーターがあるのでそれをいじると通常のアナログシンセよりも管楽器的な音色変化を比較的簡単にさせることができます。これもデモ版を試してプリセット音色が気に入れば購入を検討しても良いと思います。
Lyrihorn-1 私のデモ演奏(Michal Urbaniak的な何か)https://twitter.com/m_kirino/status/1734555769272717535/
Lyrihorn-1 私の演奏(独り4重奏)https://twitter.com/m_kirino/status/1737485680547176847/
Lyrihorn-2 私のデモ演奏(ネタ的ですみません)
Lyrihorn-2 私のデモ演奏(Tom Scott的な何か)
https://twitter.com/m_kirino/status/1718962449532211371/
-1と-2のどちらにするかですが、デモ版を試して気に入ったプリセットが入っていたほう、で良いかと思います。自分で音色を作る方は音色の作りやすさも含めてデモ版で試してみましょう。
[良い点]:ウインドシンセに最適化済み。スムーズ。
[イマイチな点]:細かい音色の調整がしにくい
※補足:Davidson Audio & Multimedia製品の購入処理について
EVI-NER、Lyrihorn-1 /-2共通ですがこのメーカーは個人経営ですのでタイミングによっては購入後のアクティベート番号のメールや、メール問い合わせのレスポンスが遅い場合があります。少なくとも2営業日程度は、あわてず待ってあげましょう。逆にそれを過ぎても返事がなければ催促のメールを入れたほうが良いです(メールを見逃している可能性あり。笑)。また、各ソフトのWebサイトに説明記述がありますが、購入時は「PCまたはMacの「ハードウェアUUID」を入力して手続きせよ、との指示がありますので忘れないようにしましょう。アクティベート番号のメールがなかなか届かない場合はこの番号を記載して催促メールを送ると良いと思います。UUIDはデモ版のabout画面(メイン画面のオーディオ端子っぽい絵の中央に「?」が書いてあるところを開く)の長い英数字です。Macでしたら「システム情報.app」を開いてハードウェアの概要: でも確認できます。
5. Respiro
YAMAHA VL音源の流れを汲むモノ発音シンセ。民族楽器系の笛・REED音色には他に変えがたい個性あり
165Euro, 物理モデリング方式、モノ発音 MAC, WIN, プラグイン版およびスタンドアロン。 iOS版(無料プレーヤーの位置付け)あり。
https://www.imoxplus.com/site/
iOS版(無料プレイヤー)
https://apps.apple.com/us/app/respiro-wind-synth/id1537945616
開発元のIMOXPLUSはもともとWX5演奏者の方でYAMAHAのVL音源(VL-1,VL70-m)エディターを開発してます。そのVL音源の研究成果を元に独自音源として開発されたのがこのRespiroです。VLのパラメータを上手に取り込んでおり、他方式の音源では出来ないような吹奏楽器特有の音色変化を得られることが最大の利点です。特に民族楽器系の笛・ダブルリード音色は優れておりサンプリング系シンセでは出来ないような演奏ができると思います。VL70-m等VL音源のパラメータには管楽器特有のパラメータがたくさんありますが、正直複雑すぎてなかなかバランス調整が難しいのですが、Respiroでは相互に関係のあるパラメータを上手く「Reed」とか「Overtone」とか「Growl」とかのパラメータにまとめて、それをそれぞれブレス(CC2)や他のCCにアサインして、個別にカーブと最大最小も設定できるようになってます(下画像の、レーダーチャートとグラフの部分)のでプリセットを選択してマウスで適当にいじってやるだけで自分好みに調整できます。
全くゼロから音を作ることは出来ないので、プリセットを選んで調整するのが基本です。またアナログシンセ系の音色は苦手です。また、全体的にちょっと音の線が細い感じはするので、これはDAW側でディストーションとかアンプシミュレーターとか通して少し補ってやると良いかもしれません。ちょっとお値段高めでデモ版も無いのは躊躇するところですが、iOS版で、6音色が無料で試せるものが無料で配布されています。MAC/WIN版で作成した音色ファイルをiOSに持ってきてプレイバックすることに特化したものですが、無料で最初から入っている6音色を試せば、Respiroがどんなものかわかると思います。ブレスを吹き込んでいったときの音色変化の自然さは管楽器奏者の方は特に感じるのではないかと思います。
[良い点] VL系のユニークなパラメータと音色変化。民族楽器系強し
[イマイチ点] 少し音の線が細い。動作重め。
公式サイトによるマルチトラックでのデモ↓
Eli Denacot氏による演奏2つ。フルートのようなダブルリードのようなフリューゲルのようなバイオリンのようなシンセのような・・・不思議な音色ですよね↓
↓僕のイマイチな演奏(WX5+ Respito 5管アンサンブル)
6. Wind Synth Virtual Instrument
ポリ発音可能なアナログ系シンセ、多機能。
$30, MAC, WIN プラグイン版のみ。 ポリ発音可能、アナログ系
EVI-NERと同じDavidson Audio & Multimediaのソフトです。名前の通りウインドシンセに特化して作られていて、特別な設定無してプリセットのままブレス(CC2)で演奏できます。ポリ発音に対応しているので、NuRADのPoly modeで特に設定も無し演奏できる点は良いです。デメリットとしては機能は豊富なのですがちょっととっつきにくいこと。これもデモ版が用意されているので、試してみて、特にプリセットで気に入ったものがあれば購入してみる、というのが良いかと思います(僕はデモ版を試したのみで購入に至らず)。
つづく
そしてウインドシンセ特化というわけではないですが使用を充分想定されているものには
AUDIO MODELING社のSWAM Engineシリーズ(弦、金管、木管楽器)
https://audiomodeling.com/swam-engine/
が生楽器サンプリング/モデリング音源として有名かつプロ現場での使用実績も多いものと思います。EWIやAerophoneの内蔵音源や前述のARIAで、生管楽器や生弦楽器をウインドシンセで演奏することに可能性を感じた方は、SWAMを導入すればそれだけでもレベルアップができるでしょう・・・ちょっと値が張りますけれども。残念ながら僕は使ったことが無いので詳しく書けないのと、そこまで考えるようになると既に下図の悪循環にハマりつつあると思われますので、とりあえずこの今回はこれ以上触れないことにして、この次のエントリで簡単に情報をまとめてみたいと思います。これとあわせてこの次はソフトシンセで僕が触ってみてウインドシンセに比較的向いていると思ったものを中心に紹介します。(準備中)
そのまた次はハード音源の予定。(準備中)
そしてこれ以上先に進むと下図の悪循環にハマってしまうおそれがあるので充分注意しましょう・・・
番外・IFWの現況(2024.2月)
IFWは2022年末頃までベータ版が公開されていましたが現在は配布されていません。過去公開されていたものも、Windows、Mac版ともにバグがあり最新OSではうまく動かないケースがあります。また、iOS版はもともと限定のクローズドベータであり最初から公開されていません(一部プロ奏者の方が使っているのはこのiOSクローズドベータ版です)。配布/開発が再開・継続されるかは開発者の意向次第ですが、もともとベータ版ですのである意味仕方ないことでもあります。Facebookページは継続されていますが、上記のような状況ですのでIFWの再配布についてはなんとも言えませんのでこれから新規にIFWを入手する方法はありません。また、同じ開発者による「TWV2000」(Win版、Mac版、iOS版)も一般公開について何とも言えない状況ですのでどちらもご了承ください。
IFWもTWV2000もどちらも大変極めて非常に素晴らしいソフトなので是非正式版を公開して欲しいと願っております。全世界のウィンドシンセプレイヤーが待っています・・・・
参考までに以下に2022年4月のこの記事の初稿のテキストを掲載しておきます。
(繰り返しますが下記は2022年4月の記事で、2024年2月時点ではIFWは配布停止しており新規入手はできません)
IFW
モノ発音アナログウインドシンセソフト音源として最強、唯一無二。
※繰り返しますが2024年2月現在IFWは配布停止中で新規入手はできない状況です。
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