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世の中は明るいのに暗い #ある日の日記

打ち合わせの終わった夜、
電車に乗って、
当たり前のように、
日野に向かう。

今日はハードな1日だった。
熱中症かなと思い飲んだ、
あんなにまずかった経口補水液は、
今日は絶妙な美味しさを持っていた。

そんなことを思うことが、
最近よくある。
去年、経口補水液は、
熱中症の人が飲むとおいしいという、
噂なのか、本当なのか、
よくわからない話を信じるのなら、
今年何度も飲んだ経口補水液は、
すべておいしかった訳で、
体の無理を感じるばかりだなと思った。

どんな人でもおいしいものを作れば、
もっと売れるはずなのに、
人は面白いことを考える。

まぁそんなことはどうでもいいけども、
ハードで疲れた体を、
少しでも休めようと、
ガラガラの電車で眠ることを試みる。

体は疲れているのに、
寝れる気配は全くなく、
せめて落ち着いて目を閉じたい、
そう思って目を閉じても、
夜なのに電車は明るい。
当たり前の話だ。

ふと外の景色を見ても、
どこもかしこも明るく目に映る。
特急電車で通過していく駅は、
やはりどこも明るい。
なのに人はいない。

走る電車の中では、
明るいことだけは見えても、
景色は見えない。

電車の中を見ても、
明るい人など見当たらない。
電車は謎の空白の時間だ。

地元、日野に近づくと、
夜中まで営業しているであろう店の、
電気が消えていることに気づいた。

なのに周りの電灯は明るい。

世界は何かを失ってしまったのかもしれない。

中身のない箱のような世界。
どこかもの悲しい。

自分の家の最寄り駅で降りると、
なぜか今日はいろいろな音が耳に入る。
その多くは雑音、といわれるものだけど、
いつもは聞こえない音だ。

そのよくわからない感覚のせいか、
家に帰るためのバスが来ていたのに、
バス停の少し離れた所で、
そのバスをあえて見送った。

あと15分はこないだろう。

たまには歩くか、と思ったが、
体は疲れていたので、
15分ほど待つことにしたが、
やることもないまま、
不思議な時間をすごすことになった。

やっぱり今日の耳は不思議だ。
普段聞こえないものが聞こえる。
自分はこんなにもいろいろな音が、
混ざる世界に生きていたんだな。

バスの中もそんなことを考えながら、
団地に着いた。
周りを見ても誰もいない。
半径50~100メートルの中には、
おそらく誰もいない。

さすがに誰もいない、
真っ暗で自然ばかりの団地は、
さっきのような雑音はない、
そう思って歩きだしたものの、
虫が生きるために必死で叫んでいた。
そして自分が発してる音もうるさく感じた。
服、足音、傘が当たる音、
普段は気づかない音だ。

静かな世界に行きたい、
そう思って見上げた空には、
虹色に光るものが見えた。

空の上はきっと静かだろう。

そんなことも考えた夏の日の夜だった。

暗いから光が素敵に見えた。
うるさいから静寂を求めた。

辛くて暗い毎日は、
きっと未来のためにある。

20/09/07

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