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ニンジャスレイヤーAoM感想/S5第4話「ゲイシャ・フラッシュバック」

こんばんは。
秋めいたと思ったら揺り戻しのような残暑です。服装に迷いますね。
シーズン5、第4話はスペクタクルな2〜3話から打って変わってしっとりした小編です。今シーズンになってから単話で読んで!と布教しやすいお話が増えてうれしい〜!

◇◇

前回の記事


【前提】望月のニンジャスレイヤー知識

・書籍第一部 3巻まで(中断)
 →6年経過(ほとんど内容を忘れる)
 →2019年、『スズメバチの黄色』で復帰
 →4部から読むことに。AoMシーズン1~3を読んだ後、PLUS加入
 →AoMシーズン4以降はトリロジーと並行読書中(現在三部序盤)

◇◇◇

今回のエピソードはこちらです。

シーズン5「ゲイシャ・フラッシュバック」

午前4時、ライブハウスから駅への坂道を歩く。いつもなら通り過ぎる街灯の下に「そのひと」が立っていた。イツコは01ノイズを纏う昔風の女に心惹かれつつも、脳の異常を疑い受診する。診断は「サイバネアイのドライバ異常」。簡単に消えるエラー。でも、消したくない……。イツコはドライバ更新前にもう一度、夕暮れの駅に降り立つのだが。

 ♯1

「おつかれ」イツコは階段をあがる。明け方の空は灰色がかった黄色だ。

ここいいですね。

「先生、ユーレイ信じます? 私、信じないです。だって、脳って臓器ですよね? 脳が無ければ、考えたり喋ったりもできないですよね。それが無いんだから……」

それはそう。じゃあ逆に脳さえあれば喋れるかというと(反射的にジョンの方を見る)

「先週の流星群といい、以前キルゾーンに出現して以来動くことのない、所属企業不明の城郭といい……」

流星群はKOL博覧会のあれで、所属企業不明の城郭はキョート城ですね。
けっこう長いこと現世に降臨してるんだなぁ。

博覧会場でミッションに立ち向かっていた面々にとってはかなりの衝撃的結末だったわけですが、何の関係もない一般人イツコにとっては「先週、空に光る流星群を見たとき、胸騒ぎを覚えた。だが、それだけだった」で終わる話なのがすごくいい。イツコにとってはレリックの散逸なんてどうでもよくて、それを見上げた「道端の自分」の方が記憶に残ってる。

ニンジャスレイヤーが群像劇として美しいのってこういう箇所だな~と思うんですよね。

時刻は日の入り。混じり合う時間帯だ。

ここも好き。

遠く、広告音声の微かな音楽。日は落ち、夕闇が谷間めいた路地裏に降りた。建物の狭間に飾られたマネキネコが、走るイツコを見守っていた。

(なぜ建物の狭間に招き猫が……?)

◇◇

 ♯2

夕闇の裏路地から、また知らない街角へ。イツコは女に誘われるまま、やがて裏通りのとある館へ辿り着く。女同様に、電子戦争以前の古びた佇まいの館だった。

どうして女は自分を誘ったのか? どうして大昔から在り続けるのか? 答えてくれるのだろうか? そこには、イツコが苛まれる、薄く引き伸ばされた漠然とした無為の不安から一番遠い、価値あるものが、きっとあるのだ。

ここもいいですね……。
古い時代には今にない感情がある、宝物がある、と願う気持ちがさらっと表現されており、文章が上手い。良い文章は健康にきく。
漠然とした無為の不安に苛まれている≒現実に対処が必要なあらゆる不安と戦い続けていない、という意味では安寧のしるしでもあるのだけれど。渦中にいる彼女にとっては無為の不安こそが紛れもない現実だから、そんなことを言っても仕方がないのですよね。

KATANA治安部隊はイツコに無配慮なライト照射を行いつつも、銃口を下ろし、頷いた。(略)入ってきた四人目はデッカーめいたコート姿。「ドーモ。KATANAのミノです」

おっ、KATANA治安部隊だ! レイテツさんの同僚ですよね?
ミノさんふつうにいい人だったのにニンジャにやられちゃって悲しい。

餌を誘い込み、弄び、命を喰らう事は、いわばニンジャの本懐。違いますか?(略)」

マスラダくんどう思う?
あっ、冷たい目だ

「なに? 撒き餌に使った幻影の事ですか?」サイコミラージュは呆れてみせた。「食卓に表示させているイメージが気に入りましたか? 奇特な人ですね。ネットワーク上から集めた素材がお気に入りですか。ジゴクへの手土産に、ダウンロードできる場所を教えましょうか。重要なのは御子の天啓ですよ!」

きっっつ……な、なんてこというの。
あまりにも、こんな……

サイコミラージュさんの言い分は一方的で人の心がないんだけど、かたやイツコさんの感情だって彼女の個人的な気持ちでしかなくて……

御覧なさい! 我がソウルアブソープション・ジツは、今や余すところなく天啓のレリックに注がれる! これぞ聖杯なのです!」

ソウルアブソープション・ジツで……茶釜を聖杯代わりに……?
茶釜を………?

スーサイドさんどう思う?
答えてッ 目を逸らさないでッッ

スタン・パルス・ジュッテは短い柄から殺傷性のパルスを放出して相手を焼く、護身用のテック武器だ。

怖いよ!!
なんですかその殺意あふれる護身武器は。
でも犯罪都市ネオサイタマじゃないとそのくらいしなきゃ護身にもならないのかもしれない(ほんと最悪!)

◇◇

 ♯3

イツコは殺人狂信ニンジャに誘い込まれただけだった。古い時代の女も、彼女の微笑みも佇まいも、ただのネットから拾った素材だと突きつけられ、憧憬を踏みにじられた挙句に無惨に殺されるのか。許せない。許せない……! 彼女の怒りに呼応するかのように扉が蹴り飛ばされ、赤黒のニンジャがイクサにエントリーした!

二者は滑らかで油断なき動作で互いのカラテ姿勢を取る。ニンジャスレイヤーは右手を床に垂らした前傾姿勢。

マスラダくんのいつもの姿勢、私が四十肩改善のためにやってるストレッチと似てることに気づいてしまい、なんか……その…

ごめんなさい

「サンズ・オブ・ケオスは祝福者サツガイを追い求める真摯な探求者の集団。しかし、かつての導師ブラスハート=サンは何者かの手で惨たらしく殺された……何たる悲劇と損失か」

導師ブラスハートの響きにじわじわウケてる。

あれがなければ今頃我ら選ばれしニンジャはニンジャを超えた存在、ヌンジャへの道を拓かれていた筈。

これ今でもちょっと理解が及んでいないというか、理解したくないというか、ニンジャの次がヌンジャってあのさあ!という気持ちが未だにある。

ボンモー、『なん者ひなた丸』読んだ? ということも地味に気になっている

「貴方を我が手で仕留め報いを受けさせる権利を得た! まさに祝福! 死になさい!ニンジャスレイヤー=サン! 死ぬのです!

死ニ死構文だ! 超久しぶりに見たかも!

「人口過密なネオサイタマは実際わが餌場。呼び寄せ、命を頂き、ヌンジャに脱皮致します!

何が脱皮だ。皮をはいでやろうか? チッ(舌打ち)

そもそもヌンジャって脱皮で何とかなるものなんですか? ブラスハートさんが2回接触した時点で黄金立方体が見えていたのは記憶しているんですが、それがニンジャより高次元の存在になるために必要なことなのでしょうか?

よくわからないな……

ブッダの頭めいた表面のリベット。読者諸氏の中にはご存知の方もいるだろう。ブディズム密教僧兵団が密かに鍛え上げたとされる平安時代の名物茶釜、ザ・フロアバンガーである。

は?

(いちおう茶釜の名器といわれるものをいろいろ調べてみましたがそれらしきもの見つからなかった。元ネタあるのでしょうか?)

螺旋状に撚り合わさったワイヤーは、この瞬間、頑丈な縄となった。「大体わかった」ニンジャスレイヤーは言った。

「大体わかった」キターーーーー!!!!(サイリウム!)

ワイヤーも束ねれば鎖と同じ、スーサイドさんと同じ破り方で危なげなく撃破。マスラダくんさすがです。

ニンジャスレイヤーは死体袋を吊り下げたサイコミラージュのカラテ生成ワイヤーをスリケンで断ち切って落としては受け止め、床に並べた。彼は無惨な死体をあらため、恐怖に目を見開いた死に顔の者がいれば、手を当てて瞼を閉じた。

マスラダくんの丁寧な所作、ぶっきらぼうな態度のなかにも優しみを感じ、好き。(なぜその優しさをタキさんにはわけてあげないんですか…?)

「そう思うのなら、それでいいだろう」ニンジャスレイヤーはイツコを見て言った。
「お前がそれを見て、お前がそう感じ取った。それなら、罠だの何だの、どうでもいい事だろ」

ワ゛ーーーーーーーーーーーーッ!!!!泣!

この「~だろ」っていう口調、素のマスラダ・カイから出てくる言葉なので身をよじって悶えてしまう……マスラダくんの「どうでもいい」は時に無慈悲だけれど、時にこのうえなく優しい、それは「おまえがそう思うならそれでいい、(他者の意見など)どうでもいいだろ」の意味を持って、人から見たらつまらない何かに対しても、拘ることを許してくれるから…

人に行動を指示されることを好まないマスラダくんだからこそ、彼自身も他人の行動を自分の思い通りにしようとは思っていない。だからコトブキちゃんがついてきても強いて追い返そうとはしないし、ザック少年が危険な旅についてきたいと言っても受け入れてくれる。彼らを大切に想っているのは自分マスラダ・カイの都合で、だから何かあれば駆けつけて守ればいい。そういうところが、マスラダくんの魅力だなあ、と私は思うのです。

だからこそタキさんを自分の都合で巻きこんだとき、執拗に「貸し借り」を持ちだしていたんじゃないかと。「貸し借り」という建前を盾にして、マスラダは無理に自分を納得させていたんじゃないかと思うんですよね。そこまでしてもタキを手放すわけにはいかなったんですよあの頃のマスラダはさぁ!ハァッハァッ、想像の翼をはばたかせ、至福の幻覚とともに今から私はティータイムってわけですよ!!(やばい! 瞳孔が開いている!)

イツコはサイバネアイにチリチリとした感覚をおぼえながら、近所の横丁の入口を通り過ぎた。輪郭に01ノイズを纏った、レトロな装いの女が、LED看板の傍で佇んでいた。

イツコさんは結局ドライバをアップロードしなかったのでしょうか。それでもいつかバージョンは上書きされて、そうしないと機能に支障が出てしまうのでしょうけれど。彼女の意志で消したくないと決めたなら、きっとそれが彼女の真実。

短いけれど、とても上質な短編でした!
AoMでこういうタイプのお話を読めたの久々? もしかして初めて? な気がするので、とても新鮮で良かったです……!

おまけ

いつものおまけ。手書き感想ノートを端末カメラで撮っただけのやつです。内容は記事とはほぼ同じですが、取り上げそびれた細かな感想メモや、ノート隅の落書きがたまにあります。

補足代わりにどうぞ。

では今回はこの辺で。
また次の感想記事でお会いいたしましょう!

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次の感想はこちら。

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望月もなか
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