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洋上風力ラウンド3選定結果の素朴な疑問

前回のNoteで書ききれなかった洋上風力ラウンド3選定結果の資料に関する素朴な疑問を書いていきます。

疑問1:遊佐の工事スケジュール

遊佐の工事計画には、2つの無理があるように思われます。1つ目は、同一年内の基礎と風車の工事、2つ目は、冬の風車の工事です。

出典:経済産業省国土交通省

1つ目の「同一年内の基礎と風車の工事」が無理なのは、日本の基地港湾にはSEP船を接岸できる岸壁が1つしかないためです。欧州の基地港ならば、SEP船を接岸できる岸壁が複数あるため、基礎の保管と風車タワーのプレアッセンブリ(事前組み立て)を同時並行できます。

出典:Groningen Seaports

日本の基地港湾は、SEP船を接岸できる岸壁が1つしかないため、基礎を保管している間は、SEP船を接岸できる岸壁の近くで、風車タワーのプレアッセンブリができません。SEP船を接岸できない側の埠頭でならば、プレアッセンブリできますが、その場合、いったいどうやって風車タワーをSEP船に載せるのでしょうか。

2つ目の「冬の風車の工事」が無理な理由については、以前のNoteでもさんざん書いてきました。以下のリンクをご参照ください。

風車の基数が30基であることを考えると、2029年6月までに風車タワーのプレアッセンブリができるのであれば、7月から11月半ばまでの3ヶ月半で建てきる可能性はあります。ところが、2029年前半は基礎の工事が予定されていますので、SEP船を接岸できる岸壁に近い埠頭には基礎が置かれているはずです。酒田港は幸い日本の基地港湾の中では埠頭面積が広いので、SEP船を接岸できる岸壁から遠い埠頭ならプレアッセンブリできるかもしれません。2029年前半に、埠頭から遠いところでタワーをプレアッセンブリして、2029年後半に埠頭の近くに持ってくるのでしょうか。このあたり、お分かりの方、コメントで教えてください。

不思議なのは、2029年に基礎工事に着手するのに、2028年に基地港利用開始になっています。2028年は基地港の準備があるにせよ、準備だけで1年はかかりません。2028年に基礎工事をはじめないのは、なぜなのでしょうか。

ウィンドファーム認証を取得して、経済産業省に工事計画届が受理されてから、30基分すべての基礎を調達する計画だからでしょうか。

洋上風力関係者なら、工事計画届が受理されないと、レンダーのFID(Final Investment Decision:最終投資決定)がもらえないから当たり前だと思うかもしれません。しかし、青森南陣営は、全基分をまとめて発注していては間に合わないスケジュールを組んでいます。

出典:経済産業省国土交通省

青森南陣営は、ウィンドファーム認証の見通しが立ったところからバッチ発注する方向でレンダーを口説いたか、陣営が自らのリスクを取って発注するか決断したのでしょう。青森港が酒田港のように埠頭が広くないため、もともとは苦肉の策だったのでしょうが、結果的に2028~2029年の工事工程には無理がありません。運転開始日が同じ遊佐の陣営は、無理のない工事計画のために、バッチ発注を考えなかったのでしょうか。

別の可能性として、2028年はラウンド1と2に国内のSEP船を取られてしまうので、2028年のSEP船の出動をゼネコンから断られて断念したということもありえます。

ダイヤモンド・オンラインで、洋上風力ラウンド1の遅延・撤退リスクがすっぱ抜かれているようですが、それ次第で遊佐の陣営も2028年のSEP船が確保できるのかもしれません。

疑問2:青森南の国内経済波及効果

青森南の1位の陣営は国内経済波及効果でトップランナー(満点)を取っています。遊佐では1位の陣営でも満点を取れなかったのに、なぜなのでしょうか。

青森南の陣営の公募占用計画要旨を見ると、「事業全体での国内調達率85%、風車単体国内調達率40%」という驚異的な数字を謳っています。

出典:経済産業省国土交通省

これは、今回の入札に参加したどの陣営もびっくりではないでしょうか。「風車単体国内調達率40%」を謳うには、風車メーカーの協力が必須ですから、早くからこの陣営がSGRE一本でSGREと話をしていたのかもしれません。

上図でいくつかのイメージ写真が透かしで入っています。左下は海底ケーブルでしょうか。海底ケーブルは、日本では国産を使うのは当たり前なので、そこでは差がつかないでしょう。右側にはタワーの写真が入っており、国産タワーを使う方向で風車メーカーと話をつけたようです。

気になるのは、左上のブレードと右上の謎のブツです。SGREは、台湾にナセル工場があり、韓国にもナセル工場を造る計画があります。もしかしてSGREは、ブレード工場を日本に作る計画でもあるのでしょうか。

そして、右上のブツはなんでしょうか。お分かりの方、コメントで教えてください。

SGREが国内調達率向上に取り組んでいるとすると、それは遊佐の陣営にも当てはまります。風車メーカーの取り組みだけでは、青森南だけが満点の説明がつきません。

公募占用計画要旨を青森南の陣営と比べると、遊佐の陣営は要旨の左側の情報量がスカスカです。説明の丁寧さの問題なのでしょうか。

出典:経済産業省・国土交通省

以上、ラウンド3選定結果資料に関する素朴な疑問でした。

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