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洋上風力ラウンド3公募の選考事務局の技術的な審査に使ってほしいウェブサイト

以前に、「洋上風力ラウンド2に選ばれた発電事業者の事業実施能力の玉石混交ぶり」と「その公募の選考事務局の技術的な目利き能力のなさ」について触れました。

こんな惨状が続けば、国益を損ねるだけでなく、アンチ再エネ連中に「やっぱり洋上風力ダメじゃん?」とSNSで吹聴されて、アンチ世論が形成されかねません。

そんな惨状に歯止めをかけられないか?

風力業界の中の人、一人で歯止めは無理です。さすがに、無理です。でも、一石を投じるぐらいはやってみようと、洋上風力の公募の選考事務局に「発電事業者を目利きするなら最低これだけは知っておいてほしい」という情報を載せていこうと思います。

ここでは、洋上風力発電のラウンド3以降の公募の選考事務局に技術面の審査に使ってほしいウェブサイトについて、その使い方を解説します。

設計・輸送・建設のためのデータベース

NeoWins(洋上風況マップ) - NEDO

https://appwdc1.infoc.nedo.go.jp/Nedo_Webgis/top.html

出典:NeoWins

NeoWinsは、風況マップというタイトルながらも、風況以外の諸条件を調べるのにも重宝します。特に、洋上風力の公募の選考事務局には、以下の機能を使いこなしていただきたいものです。

  1. 月平均有義波高

  2. 底質

例えば、村上胎内沖の1月の平均有義波高を見てみましょう。ほぼほぼ黄緑色の1.6~1.8mあたりにあります。

出典:NeoWins

有義波高1.6~1.8mの海がどんだけしけているかピンとこなくても、この時期の新潟の日本海の動画を見れば、ざっくりおわかりいただけます。

発電事業者は、そのサイトの輸送・建設可能時期を見極めるために、より正確な波浪情報(最低でも後述のナウファス)を使わなくてはいけませんが、選考事務局はNeoWinsで月平均有義波高を見て、輸送・建設に適さない時期をざっくりスクリーニングしてほしいものです。

NeoWinsで底質もざっくりわかります。例えば、西海江島沖の底質を見てみましょう。全面的に茶色の礫または岩石です。

出典:NeoWins

一部、水色になっているのはデータがないところです。凡例を見ると、くすんだ水色が「シルトまたは粘土」となっています。下図の伊島周辺のように、水色とくすんだ水色はそれぞれ別の意味になるので、要注意です。

出典:NeoWins

色は似ていても「データなし」と「シルトまたは粘土」では大違いです。勘違いしないようにご注意ください。

ナウファス(全国港湾海洋波浪情報網)- 国土交通省

https://www.mlit.go.jp/kowan/nowphas/

NOWPHASは、Nationwide Ocean Wave information network for Ports and HArbourSの略称で、国土交通省とその関連団体の相互協力で構築・運営されている日本沿岸の波浪情報サイトです。発電事業者をはじめゼネコンや風車メーカーも、最寄りの観測点の波浪情報から、輸送・建設可能時期を特定したり、月別の輸送・建設可能日数を算定したりするのに使います。

公募の選考事務局は、輸送・建設可能計画の実現性・妥当性を検証するのに必須です。特に、入札資料の洋上輸送・建設時期が本当に輸送・建設可能時期なのかを見極めるために、選考事務局には、以前の記事に書いたナウファスの使い方をお役立ていただきたいところです。

IECRE Certificates - IECRE

https://certificates.iecre.org/#/home

風車の型式認証情報を検索することができます。Keyword欄に、風車名の一部を入れて検索すると、風車の型式認証の進捗情報を見ることができます。

出典:IECRE

風車選定時にIECREで風車の型式認証の進捗状況を見て、ウィンドファーム認証までに型式認証(Type Certificate)が間に合いそうかIECREの情報と風車メーカーの説明が合っているか)を確認します。

洋上風力の公募で迅速性評価を続けるならば、洋上風力の公募の選考事務局は、IECREウィンドファーム認証の予定時期に型式認証が間に合いそうか確認すべきです。特に、入札時点から5年以内の運転開始目標を掲げている計画は要注意です。そこから5年以内に運転を開始するなら、PTC (Prototype Certificate)すら取れていない風車を選ぶのは無理があります。入札時点でTC (Type Certificate)がなくても、PTCが取れていたらなんとかなるかもしれません。

ちなみに、IECREは、IEC System for Certification to Standards Relating to Equipment for Use in Renewable Energy Applications(再生可能エネルギー応用機器に関するIEC規格認証システム)という覚えてもらうつもりゼロの長すぎる正式名称の略称です。

読者の皆さんにお願い

前々回の記事の通り、ラウンド2で選ばれた発電事業者の大半はコミットしている運転開始時期を達成できないことは、公開資料で明らかです。

公開資料で見て明らかなことさえ見抜けない公募の選考事務局の技術的な目利き能力のなさは危機的です。そこで、誰からもお金をもらっていない風力業界の中の人が、国からお金をもらっている選考事務局のために、無償でこの記事を書いています。

本来は経済産業省・国土交通省のやるべき仕事ですが、選考事務局の技術的な目利き能力の向上のために、選考事務局が押さえておくべきウェブサイトがあれば、そのサイトへのリンクとそのサイトの簡単な使い方をコメント欄で教えてください。

また、今回も経済産業省・国土交通省の洋上風力行政の関係者に届くよう、この記事の評価・拡散をよろしくお願いします。

出典:Pixabay




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