果たして肥後国の役人の画力はアマビエをどれだけ正確に伝えられたのか?
コロナウイルス禍を受けて、やにわにスポットライトを浴びた妖怪というか神様というか。それがアマビエです。
1846年5月上旬、熊本の海に現れたというアマビエ。夜の海に光る物体を確かめるために出向いた役人に、こう告げたといいます。「これから6年は豊作が続くけど、疫病も流行る。我が姿を描き、人々に見せるがいい」。役人は早速その姿を描いて江戸へ。さらにそれを江戸の人が瓦版のために描き写して、噂は広まったようです。
だからなのか、このなんとも言えないゆるキャラ的ルックス。とても江戸後期の絵とは思えない斬新なテイストですよね。プロの絵描きではとてもこうは描けない。浮世絵タッチのアマビエ…どうなっていたことやら。さらに伝言ゲームのように描き写すうちに変形していった可能性大。果たして本当の姿はいかに…? 水木しげる先生が描いたアマビエは原典にかなり忠実だったけれど。ていうか、普通に可愛い。一瞬、雑コラかと疑った(笑)。
そんなアマビエに関してはWikipediaをはじめいろんなサイトを読みましたがダントツに面白かったのはこの記事。
兵庫県立歴史博物館学芸員の香川雅信先生による解説で、なんとアマビエは「アマビコ」の誤記であるかもしれないとのこと。「コ」を「ヱ」って間違っちゃうくらいだから、元絵をどれだけ正確に写してくれたか…。そもそもの元絵でさえデッサンあやしげだというのに…いや、もしかして肥後国の役人、字まで下手過ぎて「コ」が「ヱ」に見えたってことなのか? ただ逆にアマビコよりもアマビエのほうが国籍不明感が醸し出されて素敵です。つねにアマエビと誤読されるリスクも孕むし。
でも、このアマビエの「我が姿を描いて人々に見せよ」という指示は、あまりに現代のSNS文化にマッチしていたとは思いませんか。コロナウイルスが猛威をふるう中、それに対抗するようにツイッターやインスタグラムのあちこちで湧き上がった「アマビエチャレンジ」。江戸時代の瓦版とは違って原画の写真をそのまま見ることが出来るので、高い信頼性も維持されます。ハッシュタグでまとめてその作品の数々を一望できるのも、なんて壮観で楽しいんでしょう。令和の時代に、170年も前の妖怪伝説が、こんなにもビビッドに希望を与えてくれるなんて素敵すぎる。あの『いらすとや』さんまでがソッコーでアマビエをラインナップに加えたのも笑えます。
東京都をはじめ多くの自治体から外出自粛が呼びかけられ、イベントは中止になり、飲食店はガラガラ。経済が回らず世界の空気が停滞する中、30日朝には志村けんさんの訃報が流れ、悲しみと危機感はつのるばかり。その夕方にはついにJリーガーにも陽性反応が出たとの一報。イタリア、スペイン、アメリカと、世界のあちこちからも悲惨な状況が伝わってきます。
そんな状況に背を押され、遅ればせながらわたしもアマビエ描きました。説明では半人半魚というけれど、どう見てもあの嘴は鳥じゃないか…肥後国の役人の画力のせいかもしれませんが。そんなふうに思いながら自分なりのタッチで描いてみた結果がこれ。
ゆるキャラ的な可愛さが微塵も残ってない…。
でも、これが本当の自分なりのアマビエさま。祈りを込めて描きました。写真ではあまり繊細に再現されていないけど、ペンで描いて色鉛筆で着色しています。この後アマビエの周囲にいろいろ背景的なものも描き足しました。
描きながら思ったけれど、絵を描く作業はセラピーでもあります。外出しづらい現在、部屋にこもって無心に手を動かすのは自らの癒しにもつながる。
そう思えばなおさら、疫病が流行ったときには自分の姿を描けと言ったアマビエはすごいなと思います。だからきっとあんなゆるキャラ的な、見るからにユーモラスで楽しげなルックスなんだな…。(しつこいようですが役人の画力)
これをきっかけに、またひさしぶりに絵を描いてみようかと思います。それもまたリハビリ的に。
最後になりましたが、あらためて志村けんさんのご冥福をお祈り申し上げます。そして、一日も早く疫病が収束し、懐かしく平和でありがたい日常が戻ってきますように。
あ、追伸。昨日、いつも何かにつけて頼りにしている春日神社に参拝してコロナウイルス退散を祈り、おみくじを引きました。
頑張ろうって思えた。いまは自分に出来ることをしながら耐えるときですね。
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