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「むりやり引きを作ってみようの段」s2e2 10/2


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 悪い夢を見て目が覚めた。ズボンのなかにバッタが入り込む夢だった。もぞもぞとふとももをバッタの脚がうごく感覚が気持ち悪く、慌てて眠りの世界から逃げ出してきた。瞼を開けるとそこはいつもの自分の部屋だ。ほっと息をつく。まだ胸は高鳴ったままだった。


 今日は休みだから布団から出たくない。8時間も寝て二度寝もできないのでゆっくりと布団のなかでタブレットを操る。ゲームのスタミナを消費したりしてゆっくりとした朝を過ごす。
 そのうちに空腹を感じた。朝ご飯に食べられそうなものがないので買いに行く。せっかくだから朝マックを買おうと思い立ち、ぼくは家を飛び出した。10月の朝は暑くもなく寒くもない。完璧にちょうどいい気温だった。マクドナルドは以前はよく通っていて店内で本を読んだりして過ごすのが好きだったが地獄の番犬ケロべロスが徘徊するようになってからはそれもできずにいる。今日も持ち帰りで注文し、家で食べることにする。

 読みかけだった『夏のロケット』という小説を読み切る。高校生のときにロケットを作っていた仲間たちと大人になってから再開し、またロケットを本格的に作り始めるという筋の小説だ。読み終わってから次に『シュナの旅』という本を読んだ。宮崎駿が描いた絵つきの物語の本だ。長いものじゃないのでこれも読み終わった。一日で二冊も本を読み切るなんて珍しいことだ。

 そんな風に過ごしていたらスマートフォンに着信があった。なんだろうと思い出ると、男の声が聞こえた。
「おい、”計画”はどうなっている」電話の男はいきなりそう話し始めた。
「問題ない。計画通りに進んでいる。俺の辞書に失敗の二文字はない」
「ならいいんだが。お前は優しすぎるところがある。二年前のあの件だって……」
「よせ、そのことは言うな!」ぼくは声を荒げた。電話の男はやれやれといったように息を吐き、「しくじるなよ。今度はかばいきれないからな」と言い残し、電話は切れた。
 あの件か……。この二年間忘れたことは一度もない。そう、あの日もこんな晴れた金曜日だった。


 つづく。

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