ファンタジーの浅瀬 第4回 悪魔の孤独と水銀糖の少女 

愛よ、傲慢であれ
悪魔の孤独と水銀糖の少女 紅玉いづき


‪——‬お前の愛が、この男を孤独にするだろう。

 紅玉いづき「悪魔の孤独と水銀糖の少女」電撃文庫 2018年 217P


第4回は「悪魔の孤独と水銀糖の少女」。無国籍風な愛と幻想のファンタジー小説。
「ミミズクと夜の王」でお馴染み紅玉いづき先生の作品で、電撃文庫から現在2巻まで出版されています。
「ミミズク」を紹介しろやって話ですよね。
だってミミズクは同年代のラノベ読みなら全員読んでるじゃん!?(偏見)
最近完全版が出たぞ。姉妹編「毒吐姫と星の石」もいいぞ。

さて「水銀糖」
時間の止まった悪魔の島に来た、魂を封じた宝石を纏った少女シュガーリア
亡者ばかりが暮らす島で、ただ一人死者ではない悪魔背負いの男ヨクサル。少女は彼を愛するために来たと独白するが……という話。

シュガーリア。かわいいの権化

紅玉先生の描く少女たちは、みんなどこか欠けていて歪なのに最高にかわいくて生命力がめっちゃ強いのが魅力です。
本作のヒロイン・シュガーリア(名前超かわいい)は、その中でも大分悪い女

「死霊術師の孫」という不思議な肩書を名乗る彼女は、一言でいえば人を愛し愛される才能のある女の子。
それはもちろん今まで愛されて育ったからでもありますが……
彼女の可愛さ・あざとさ・危うさ・眩しさに、気がついた時には(読者含め)誰もがばっちり落とされてしまうのです。


一方、悪魔背負いの男・ヨクサルは、まあ見た目通りの人間です。
真っ当に生きられず、人と深く関わった経験が極端に少なくて、暴力で全てを解決してきた、それでもどこかで諦めきれていない人。
人殺しの才能を持って生まれ、罪人として流刑にされ、悪魔に魅入られた彼はどこからどう見ても悪党です。
けれど彼の言動から透けて見える不器用さ・運の悪さ・損な性質は、何かがひとつ違えばどこかで穏やかに生きられたのかも、と思わざるを得ません。少なくとも、彼は差し出された愛に絆されるだけの弱さを持っているのです。それは長い孤独がもたらした弱さなのかもしれないけれど。

悪人が光の女に目を灼かれてめちゃくちゃになるやつ、みんな好きだろ!?わたしも大好き!!!!



そして「水銀糖」は幻想の話でもあります。
魔術や悪魔を絶やさんとする世界で、幻想はここにあると叫ぶ反逆の物語です。
科学に支配された現実の片隅にも、もしかしたら説明のつかない何かが生きているかもしれない、そう思ってしまうような物語こそファンタジーだと思います。

愛は傲慢やわがままであればあるほどいいよねというあなたに。

孤独や、死の恐ろしさや美しさに惹かれてしまうあなたに。

それから、「幻想」に幻想を抱くあなたに。


個人的には2巻がとても好きなので読んで……
とひとことで言ってもいろいろあって、情や執着に近い愛とその力の話だった1巻に比べ、2巻はすべてを燃やす恋のお話です。

3巻ください!!!

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