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文化財に泊った体験 

 これは、温泉と建物の一部が「国指定登録有形文化財」になっている法師温泉の一軒宿、長寿館に泊まった話。

 秘湯の本に出てくる有名な宿で、首都圏からのアクセスもいい。
車であれば日帰りにも挑戦できる範囲にも関わらず宿泊したのにはワケがある。
文化財になっている名物の「法師の湯」は混浴なのだ。泉質は硫酸塩泉のため透明。極めつけは湯あみ・タオルNGと極めて難易度が高い混浴なのである。
宿泊すれば、夜に2時間だけ女性専用の時間がある。私はこの2時間で念願の温泉に浸かるべく宿泊を選んだのである。

部屋選びは難しい


 ところで、法師温泉 長寿館は、建物自体も「本館」「別館」が文化財になっている。それ以外にも、各々に歴史のある「法隆殿」「薫山荘」がある。一見の私にとっては、部屋選びが難しかったので、今回は宿に電話をかけた。
禁煙かつ一番人気といわれている「別館」の十番の部屋に泊まった。
別館は全室 8+4畳で、窓の外からは川を挟んで本館が見える。
冬に泊るとこたつがあるのも嬉しい。

別館の廊下
別館 十番


 この宿に来て一番印象に残ったのは、玄関である。吹き抜けの天井と鮮やかに飾られた空間に期待が高めてくれる。

玄関

 日本人の私でもこれだけ感動するのだから、外国人に人気なのも納得がいく。また、玄関の横には囲炉裏があり、お茶を飲んで談話することができる。

囲炉裏のある談話室


こういった空間があると、この場所で一期一会のコミュニケーションが生まれるのも嬉しい。
なぜ、この宿を選んだのか…。
他にはどんな温泉に行くのか…。
新しい情報を得ることができることもある。
 

3つの温泉

 さて、肝心な温泉について。法師温泉 長寿館には3つのお風呂がある。
・法師の湯(文化財で本に登場するお風呂)
・玉城の湯
・長寿の湯
  「法師の湯」と「長寿の湯」は、pH 8.5のカルシウム-ナトリウム硫酸塩泉クレンジング効果のある美人の湯である。
この温泉の独特なところは、足元から温泉が湧いていること。
 「玉城の湯」は、系統は同じだが、溶存物質が1.000mg/kgなので単純泉になる。pH8.3のためクレンジング効果は期待できる。単純泉になるため、肌あたりは「法師の湯」と比べるとマイルドになる。

「法師の湯」 


 浴室全体が文化財となっているので、本の通り趣がある。浴槽が4つあり、窓側から脱衣所に向けて温かくなっていく。名物の足元湧出を体感できたのは窓側の浴槽で、湧出ポイントを探す必要がある。お湯の温度は全体に低めなので、長湯しやすい。
湧出ポイントで不規則に湧き出すポコポコを感じながら、脱衣所の上にある「日本秘湯を守る会」の大きな提灯を見ながらの入浴は、幸せなひと時であった。

「玉城の湯」

 ヒバづくりで露天風呂もあるので、文化財に重きを置かなかった場合、こちらのお風呂の方が雰囲気がいいと感じるかもしれない。特に、雪のない地域に住む私にとって、笠をかぶりながらの雪見露天風呂は幸せな時間だった。また、肌の弱い方にとっては刺激も少ないので比較的入りやすいだろう。

「長寿の湯」

 ある意味女性のために用意された温泉といっても過言ではない。ただ、地味で小さいけれど足元からの湧出はしっかり確認できる。他の2つより温度が高めなので、冬であればむしろこちらの方が心地よく、お湯を楽しめるかもしれない。私の中でこの温泉の泉質を1番感じられたのは、このお風呂だった。


夜も風情がある
法隆殿より玄関

 文化財に泊る体験は、宿全体に趣を感じられ、非日常を十分に味わうことができる。冬は風情があってよかったけれで、この宿は春夏秋冬それぞれに魅力があるに違いない。ただ、泉質マニア向けの温泉というよりは、雰囲気で評価できる宿だった。とはいえ、全体的なバランスはまずまずなので、また訪れたいと思った。


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