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米国内科レジデンシーを修了して思うこと

歴史のある大きな内科プログラムにマッチしたはいいものの、初の日本人IMGということで特に最初は不安に感じることもありましたが、3年の内科研修を無事に終えることができました!私のように日本で初期研修及び後期研修を終えて指導医として働いていた人がアメリカの内科レジデンシーからやり直すパターンは稀なので、そういった目線で米国の内科研修を振り返ってみたいと思います。

Summary

IMGが多く占めるプログラムにも関わらずフェローシップマッチにかなり強いプログラムで、多くのAMG向け大学病院プログラムよりも毎年良い成績を残しています。そのreputationとは裏腹に、忙しいプログラムとしても有名ですが、私が日本でした初期研修と比較すると米国内科研修は全体としてeasy、指導医レベルの経験があると更にeasy、というところでしょうか。それでも、アメリカの研修システム上、忙しく、大変と感じる時はそれなりにありました

医療と雑用と教育と私生活のバランス

①医療

アメリカの方が疾患の多様性があり(例えば日本では見ることがない感染症)、治療オプションも多いですが(例えば心移植や新しいデバイスの使用)、総合的に見ると医療全体の質はやはり日本が上だと個人的に思います。医者はあくまでも医療チームの一部で、例えば看護師や他職種からのケア、病院全体の質など、多くの因子が患者さんの満足度や予後に影響します。医療に限った話ではありませんが、アメリカは明確に分業されているので多職種との連携が必須なのですが、その連携がかなりイマイチです。自分自身や家族が重い病気で治療を受ける必要がある場合、私は日本に帰国することを間違いなく選ぶと思います。
医師が医師として診療する点だけを見ると、疾患の多様性や新規治療に触れたい場合を除き、訴訟の多いアメリカにあえて来る必要はないと常に思っています。給料もアメリカの方が高いですが、生活費や医療費、子供の教育費はアメリカの方が遥かに高いことを忘れずに。

②雑用と医学教育

「雑用している感」は研修医も専攻医も感じます。が、それをどの程度感じさせるか、でレジデンシープログラムの質が決まっているようにも思います。純粋にnext generationを育てたいという上級医の気持ちは存在していると思いますが、医学教育は研修医達が持つ「雑用している感」を減らす良い手法で、悪い表現を用いると「自分たちはきちんと教育されている」という感覚を植え付けて、雑用している感を紛らわせることができます(ニュートラルな言い方をすると、診療、教育、雑用のバランスが良い)。以前の記事でも書いたように、アメリカは教育をする機会も受ける機会は良くも悪くも非常に多く、その分患者に割く時間は確実に減ります。「アメリカは医学教育が素晴らしい」と表現することもできる反面、医学教育しないと悪い評価をされるのでせざるを得ない雰囲気にあるのも間違いないです。教育が多くの時間を占める以上、トレーニング期間も延び、内科研修の3年目が必要になってきます。内科の初期研修は2年で十分とつくづく思います。
一方で、私自身は教育に携わるのが純粋に好きなので、教育の時間が担保されているシステムで指導医として働くことを楽しみにしています。長く話したり、お題を与えてスライドを準備させたりするような教育は嫌がられるので、簡潔に、楽しく教育ができるよう自分のteaching skillを磨いています。

③私生活

アメリカで生活をするリスクはもちろん色々ありますが、work-life balanceはアメリカの方が100%良いでしょう。私生活の時間をしっかりと取り、充実させたいがためにトレーニング期間が全体として長くなる傾向にあるのかもしれません。アメリカに来たにも関わらず、日本で働いていた時よりwork-life balanceが悪い場合は、恐らく何か不要なことをしているはずで、アメリカは仕事と私生活のメリハリを付けることができてすごく良いなと感じでします。以前も述べたことがありますが、このアメリカの良さは子供がいるとより一層感じるでしょう。

④その他

  • 日本人は英語を話せないと認識されていて、日本人へのインタビューオファーを積極的にしていない印象を受けました。英語の練習(特に発音)をがんばってしておいてよかったと感じています。

  • 研究の質はアメリカの方が確実に良いです。が、自分が実際にそういう質の良い研究に研修中及び研修後に携わることができるかどうかは全く別問題で、この点は強調しておきます。日本にいてもできるような研究をアメリカでしている臨床留学者がメインで、アメリカのチームに実際に溶け込んで質の高い研究をしている人は本当にごく僅かだという現状がよく分かりました。

  • アメリカの評価システムは結構厳しいですが、求められていることを卒なくこなし、人付き合いをうまくしていれば問題ありません。大学病院プログラムだと、更に努力すればAOABest Residentといった賞にも繋がります。こういった賞はフェローシップマッチやその後のキャリアで有利に働く可能性もあるので、私は貰うまでそのインパクトをあまり知らなかったものの、レジデンシー中は賞を狙って頑張っても良いかもしれません。

  • 内科チーフレジデントの記事でも触れましたが、アメリカはリーダーシップを身に付ける土台が整っていると思います。

  • いわゆるマイノリティに属する人が私の内科プログラムには何人もいて、プログラム内外に関わらずマイノリティの一致団結感はすごいと感じました。

  • 日本の匠の技を知っているだけにアメリカのPCIスキルは残念な感じです、たとえその差がハードエンドポイントに影響がなかったとしてもです。噂通りです。

Conclusion

日本人が日本人らしく普通に仕事をすると、アメリカでは「よく仕事をしている人」と認識されます(効率が良いと捉えられるかは別ですが)。仕事(診療)を淡々とこなすだけがレジデンシーではないのものの、日本での指導医レベルの経験があれば内科の勉強をほぼしなくていいので、レジデンシー自体は最低限の力で乗り切ることができ、その分他のことに注力できます(例えば研究)。が、診療と研究をやるだけでは「できるドクター」「良いドクター」とは認識されないのは間違いないので、アメリカでうまく生きていくためには多方面でバランス良くがんばる必要があることを実感した内科レジデンシーでした。フェローシップでも同様であるはずで、Cedarsでも初心を忘れず、引き続き謙虚に頑張っていきたいと思います。

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