「ズレズレなるままに」 どちらも経験した元“中の人”として思う日本シリーズ出禁問題
日本シリーズはDeNAベイスターズが優勝し、今季のプロ野球日程が終了しました。
まぁCSの問題など議論もあるでしょうが、その昔の担当として現役時代を知る三浦監督はじめコーチの方々もいるので感慨深いものもあります。
さてこのシリーズ、フジテレビのパス取り上げ問題が話題になりました。
自分ごとですが、サンケイスポーツを辞めた後、2019年4月途中から2021年4月まで日本野球機構(NPB)に勤務していました。記者としてNPB事務局の担当をしていた時代、あること(自分が書いた記事じゃないけど)で出禁になったことがあります。一方、事務局職員になってから、ある媒体に出禁を通告したほかパス返還を求めたこともあります。
多分、どっちも経験した人はいないのではないかと思います。
今度の出禁に関する経緯も色々な方面から耳に入っています。ただ、はじめに言い訳をしておくと、元職として「守秘義務」もあるし迷惑かかることもあるから奥歯に物が挟まったような内容は多々ありますので、「だったら書くなよ」というのは勘弁してください。というわけで、色々なメディアが「賛否両論」を伝えていた内容を見て、論調について感じたことです。
「NPBは大人げない」「理由を公式に説明しろ」というのと、「やっぱりフジテレビはおかしい」…。まぁ意見は様々あって然るべきなんだけど、NPB案件になると一般の人はもとより「識者」なる人まで、「日本野球機構の建付けを理解してないんだよなぁ」って思うのです。
これ、権威や巨大組織相手に「モノを言って溜飲を下げる」感じなのかなとも思います。
おそらく世間の大多数は「NPB」というと、コミッショナーと事務局のことをイメージしているのだと推察します。確かに日本シリーズの運営や日頃の業務は事務局がやっていますが、実権があるのかというと、ちょっと違います。
オーナー会議が「最高意思決定機関」というのは知られているところですが、例えばコミッショナーにしても「裁定役」というのが実情です。球界のあれこれを決めるのは、事実上「実行委員会」という球団社長や代表者らによる機関。事務局はそこで決まったことを粛々と遂行するに過ぎません。
あるとき、某球団の若造職員に「NPBはこっちの言う通りにやりゃいいんだよ」と言われ、「このクソガキ、貴様が偉いわけじゃねぇんだよ💢」と殺意を抱きながらも押し殺したことがあります。NPB事務局を「オレたちの拠出金で給料もらってるくせに」と下に見ているわけです。
要は12球団の見解や総意を事務局なりコミッショナーが“代理”として、世間に伝えているといえば分かるでしょうか。
こうした組織構成は球界の憲法といわれる「野球協約」を読めば分かります。野球ファンからは不人気な読売新聞のナベツネさんは、かつて「俺は野球のことは分からんが野球協約は読み込んでいる」というようなことを豪語しました。彼の賛否は置いておくとして、さすがだと思ったものです。今は知りませんが、野球記者にも協約を熟知している人はあまりいませんでした。
こうした問題が起こるとNPB(事務局)やコミッショナーに「何やってんだよ!」という論調が出てきます。
でも「そんなことじゃダメだから、協約改訂してコミッショナー権限をMLB並みに強化しろ!」という記事には出会いません。
実権が12球団にあるという「ぼやっ〜」とした感じだからモヤモヤするし、責任者が明確なら「はっきり説明せよ」と言う主張にも説得力が出ると思うのですが…。
今回のことは、オオタニさん絡みだったことも騒ぎを大きくしたのかもしれません。実際、日本シリーズのパス剥奪は過去にもあるのに、あまり伝えられていないようです。その役目を仰せつかりましたが、記者上がりとしては通告して取り上げる“業務”はイヤだったなぁ〜。
意地悪なことに、一夜明けた4日朝のフジテレビの情報番組を見てみました。もちろんライツ局の分配映像があるので、一般視聴者にはあまり関係なかったかもしれません。なにせ、先に終わっていたドジャースの試合とパレードの方が圧倒的に尺が長かったから。