ノックスのLUSSO(ルッソ) ミニマルなシステム手帳バインダーを使いこむ
ポケットが一切ない、ミニマルな一枚革のシステム手帳バインダー、ノックスのLUSSO(ルッソ)。
このバインダーの存在に気付いたときはすでに終売。メーカーにも在庫無し。文具店や百貨店をめぐり、なんとかひとつだけ確保できた。2016年のこと。
欠点も多く、決して使いやすいとはいえない。でも、オンリーワンの存在感があって、手放せない。
美しく無骨なルッソのフォルムを楽しむ
化粧箱には、ノックスのトレードマーク、バクが歩く。
LUSSO(ルッソ)とは、イタリア語で「さりげない贅沢」という意味らしい。
「イタリア植物鞣し本革組合」認定の名門タンナーで作られたショルダーレザーを一枚仕立てで作ったバインダー。
タンニンなめしなので、エイジングが楽しめるだろう。
革一枚を切り出し、リングを縫い付けただけの構造。ポケットも、ベルトも、ペン差しもない。
クラウゼリングがガンメタルで重厚な雰囲気だ。
実は完全な一枚革ではない。リング周辺は革を2枚つかっている。一枚革にバインダー金具を固定すると、背表紙側に金具が出てしまう。それを隠すため、このような構造になっているのだろう。
2枚の革が重なる部分は、革を薄くすくことで、厚ぼったくなることを防いでいる。ただシンプルなだけでなく、見えないところに手間をかけ、美しい一枚革のようなフォルムを創り出しているわけだ。
縫い目は、背表紙のこの部分だけ。
100%タンニンなめしのイタリアンレザーがいい
同梱のイタリア植物鞣し本革組合が発行する品質保証表示札。レザーの品質は高い、のかな。
こういったバインダーは、他にちょっと思いあたらない。
2年使い続けてこんなエイジングになった
ルッソを使い始めて2年経った。
メンテらしいメンテはしていない。
ツヤを出したくないので、オイルやクリームは一度も塗っていない。
手が濡れていても、必要なら手に取る。
一枚革にリングを縫い付けただけの構造なので、開きは悪い。2年経っても手を離すとこうなる。
少しの使いにくさも、どうということはない。
毎朝、この手帳を開き、書き記した夢、というか長期目標を読み上げる。
縫製はタフで、ほつれはない。
荒々しい、実用本位の道具として、エイジングを重ねたい。
筆記具は、フリクションボールスリムとポイントノックを合わせている。
エイジング6年目
入手してから6年たった。このバインダだけを使い続けてるわけじゃないけど、それなりに使用感が出てきた。
今改めて、このバインダはカッコいいな、と見直している。エイジングというか、使い込んでヤレた雰囲気にしたい。このバインダだけを使い続けてみようかな。
限られた単価でどこに価値を置くのか
ここからは、メーカーの立場の推測。システム手帳という製品は、革や縫製やパーツ割りなど、どこにコストをかけるかによって製品の個性が出る。
最高級のコードバンを、日本の職人が手間ひまかけて作れば、当然いい製品ができあがる。値段も高くなるけど。
多数のユーザーの手に届けたい製品を作るなら、革も縫製もコストダウンしなければならない。
製品の質もそれなりのものとなる。店頭で、1万円台と2万円台のバインダーを比較してみれば、安いほうは値段なりのものだということがわかるだろう。
このルッソというバインダーは、限られたコストを「革」にすべてふった、尖った製品だ。材料費は高いはずだ。しかしシンプルな構造で、製造コストをおさえているのだろう。
システム手帳があまり売れるわけでもない今の時代、こんなに尖った製品を発売した、ノックスの攻めた姿勢には拍手を送りたい。
しかし尖りすぎて市場の理解を得られなかったのか、すぐに製造中止となってしまった。予備をひとつ欲しいんだけど、もうどこにも見当たらない。