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日本発! 為替テック「ジーフィット」に大注目! 為替に一喜一憂する日本企業を救う新サービス

ここ数ヶ月で急速に進んだ円安は、物価の上昇、金利の変動など、私たちの生活にも様々な影響を及ぼしました。当然のことながら、日本企業に与えた打撃も相当なもの。その現状を打開すべく、企業が海外取引をするうえで欠かせない「為替リスク」をコントロールするソリューションの開発を模索するスタートアップがあります。それが“フィンテックで世界を一つに”をミッションに掲げ、日本初の新たなFinTechの構築に挑む、ジーフィット株式会社。共同創業者で代表取締役 co-CEO & CSMO 阪根信一氏と代表取締役社長 co-CEO & CTO 浦島伸一郎氏にW inc.パートナー服部がお話を伺いました。

円安・円高で一喜一憂せざるをえない日本のために


――2022年12月現在、空前の円安ですよね

阪根:1年前までは、過去30年の歴史を見てもドル円というのは驚くほど安定した凪でした。2016年から2021年は1ドル100円から115円をいったりきたりで、程よい平均価格。ですから企業は、この5年間で為替に対して無防備になっていかもしれません。しかし、ここ1年間でドカンと円安の波が来た。この事業を計画している時は周りに話しても、なかなかピンと来てもらえませんでしたが、この1年は「素晴らしいとこに目をつけてましたね」と言われるようになりました(笑)。

――円安は企業にとっては大きなリスクだと思いますが、企業はどう対応しているのですか?

阪根:「為替予約」というシステムを使っています。例えば、総額1000億円分の仕入れが数か月先まで継続的にある計画ならば、その1000億円のうちの80億円を1ヶ月後に円からドルに「今のレートで両替する予約」をしておけるという仕組みです。これならば今の1ドル=140円のレートで予約ができ、レートを固定することで企業の収益を安定させることができます。これは一般的に、よく使われる為替リスクをコントロールする方法です。
こういった既存の仕組みによってある程度コントロールされてきましたが、いくつか問題があります。例えば、トヨタさん、ソニーさん、伊藤忠さんといった大企業であれば、銀行が専門チームを各社に張り付けています。企業と銀行間で常に協議をしながら、アナリストが今後の為替がどうなるかなどを読みつつ最適な為替リスクコントロール、いわゆる為替予約もしくはそれに近しい措置を取っています。これは非常に専門性の高い領域になりますので、全ての銀行が中小企業に向けて同じ対応をしているわけではありません。それゆえ、中小企業はなかなか為替予約のサービスを受けられないという問題があります。さらに零細企業などスモールビジネスになると、地方銀行さえもなかなか取引してくれなくて、信用金庫や信用組合になっていく。そうなると為替のノウハウが少なく、アドバイスもできないし商品もそんなラインナップがありません。規模の小さい企業になればなるほど、海外との取引にチャレンジできないという課題も出ています。

服部:私の最初のキャリアは、SMBCの法人企業の担当者で外国取引をされている企業も多く担当してきました。そこで為替の変動が業績に大きなインパクトを与え経営者が抱えるペインの深さというのは身を持って感じた経験があったのです。私は投資領域として「フィンテック」に注目していますが、外国為替はグローバルで数千兆円規模という圧倒的な規模があります。すでにWise、Ripple等に代表される巨大なスタートアップが先行しており、後発のスタートアップ、まして欧米ほど外国送金に馴染みが深くない日本企業が参入するのは更に難しいと考えていました。しかしジーフィットが着目した、為替のリスクヘッジという点はユニークであり、大きなチャンスが残されていると思ったのです。

ジーフィット社内の様子

スタートアップから大企業まで!「為替テック」で日本を救う!


――そこで生まれたのが「為替テック」なのでしょうか?

阪根:この為替ソリューションを含めて、我々が開発していくテクノロジーもしくはこの分野のことを“為替テック”と呼んでいます。先ほどの「為替予約のような伝統的なものにテクノロジーをかけて、今時のあるべき姿に持っていこう」というサービスです。具体的には“クラウド為替ソリューション”という仕組みになります。要は、データを活用した精度の高い為替予約です。オンラインで、各社の事業形態とか相場の適切な情報に基づく社内想定レートを活用したプライシング、販売仕入フォーキャストに基づく為替予約、AIの予測に基づく取引判断を提供します。
企業の経営において「プライシング(値付け)」が最も難しいとも言われ、高すぎたら売れないし低すぎたら赤字が出てしまうという問題があります。それらをすべて踏まえてフォーキャスト、販売予測を立てて、仕入れをしようとなりますが、その仕入れのための為替予約をするには、「どのタイミングでどれだけの期間どれだけの金額を予約するか」という問題が発生します。もうここには、課題と悩みが尽きません。

――それを解決するのが御社の仕組みですか?

阪根:はい。クラウド為替ソリューションというのは、「その悩みをオールインワンのソリューションで解決していきましょう」というサービスになります。まず一つ目が、業種業態と相場状況から業務フローを最適化するサポートするツールです。続いて、適切なプライシングをして、それぞれの会社が立てたフォーキャストの変化に敏速に対応します。フォーキャスト自体はクライアント(企業)が立てますが、そもそもフォーキャストは様々な要因で変わるもの。ですから、その変化に対して為替予約を多めに設定していたけれど、やりすぎたというのがあればパッと止める。そういうフレキシビリティは今の銀行の仕組みにはなかなかありません。
また、仮に会社のリスクを抑えるために価格を高めに設定している、つまりプライシング側でリスクヘッジができている場合であれば、為替予約は少なくしておきましょうという提案になります。一方で、為替のリスクを背負っても低い価格でいくのであれば、為替予約をしっかりやっていきましょうという提案になる。ここはシーソーのような関係で、企業の中でも財務と営業もしくは仕入れ側も全てシームレスに連携させて今、困っている様々な問題を解決できるような仕組みを目指しています。

――サービスはいつリリース予定ですか?

浦島:現在、『クラウド為替ソリューションfor IT企業』の開発を進めていて1月末に一旦α版テストモデルが出来上がって、3月末にβ版をリリースするという計画です。それと並行して今、中大企業向けの開発も進めていて、お客様のニーズに基づく、まずは初期的なPoC開発を進めています。お客様に向けて開発してカスタマイズしたものが出来上がったら、今後SaaSモデルに展開していくということも行っています。そちらに関しては、複数の今中堅から大企業の方をかなり積極的に営業活動していて、いくつかの候補が出てきています。もし、ご興味があればこちらまでご連絡ください! 

阪根:また、クラウド為替ソリューションの提供に先立ち、海外取引に携わるすべての人のための為替情報コミュニティ「TRADOM(トレーダム)」を先日リリースしました。デイトレーダーを対象とした、いわゆるタイムリーな為替動向については情報があふれています。しかしながら、企業の為替リスクにお困りの方々が必要な情報をまとめたWebサイトはありません。為替について体系的に学び、必要な情報にアクセスできる場所として立ち上げました。無料の会員登録で全コンテンツを読むことができますので、ぜひチェックしてください!

開発チームの様子

破産を乗り越えて1からのスタート

――共同代表ということですが、お二人の出会いを教えてください!

阪根:実は大阪の高槻中学、高槻高校の同級生でした。5〜6年前に同級生が集まる飲み会で、たまたま目の前に浦島が座っていて、「今、何しているの?」と聞くと、大きな企業の役員を辞めて、ベンチャーを始めたと言う。なんか面白そうだから、「少しだけ投資するよ」と少額でエンジェル投資をしました。浦島が2015年1月にジーフィットを設立してから、私がジョインする2020年の1月までに提供していたのは、「B to C向けのソリューション」。そして、浦島とディスカッションしていく中で、ビジネスモデルのピボットを提案しました。私は大学院を出てから経営経験があり、その中で海外取引の為替レートに振り回され、お困りごとがあるのはユーザー目線でよく理解していました。また中小企業だと銀行に相談しても、すごくいい提案が出てくるわけでもないということもよく理解していたのです。一方で、メガバンクが大企業に提供するサービスはレベルが違うので、ここにすごくチャンスがあると思い、「こんなことできる?あんなことできる?」と聞きました。そうしたら、一言「できるよ」と。それがこのビジネスモデルに至る最初のきっかけでした。

浦島:僕が前職で、貿易業向けの為替予約をFXで行うサービスにチャレンジをしていましたが、うまくいきませんでした。その中で、顧客が銀行のサービスに対してかなり不満を抱えていたので、ビジネスになるのでは?と考えていました。僕一人だとかなり技術に寄るのでできないと思っていたのですが、阪根がジョインすることによって、彼が持っているマーケティングやビジネスのスキーム、ノウハウ等と、僕の金融知識のリレーションを上手く組み合わせれば可能性があると感じました! 阪根と話をしていると、「もっと世の中の役に立てるようなビジネスを作る、大きくしていく」という未来を感じることができ、二つ返事でピボットを決めました。

――阪根さんはジーフィットにジョインする前に大きな経験もされているのですよね!

阪根:私は前職で『セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ』という会社を立ち上げて、最終的には100億円以上を調達したにもかかわらず、2019年4月に破産してしまいました。今回はそこからの再チャレンジです。日本の文化、日本の社会の中で一度、大失敗した人のチャレンジは簡単ではありません。そんな中でも、ありがたいことに私の再チャレンジを信じて応援してくれている方々がいるので、そういう方々に恩返しする意味でも必ずや成功します。

服部:阪根さんは前回の挑戦では100億円以上の資金調達を実施し大きな挑戦を果たしました。前回の起業の経験を経てより強くなった阪根さんの挑戦はとても魅力的だと思っていますし、改めてご支援することができてよかったなと感じでいます。

長時間の対談、ありがとうございました!

日本が抱える大きな「為替」リスクをコントロールする!


――最後ですが、お二人が考える、今後の展望は?

阪根:決して偽善者ではないのですが、私たちは真剣に社会貢献を強く願っているタイプの経営者です。そういう意味では、金融はまさにすべての人に関わるものですし、人口減少が著しい日本において日本企業が成長しようと思ったら海外に出ていくしかない。海外との取引を増やしていくしかない。海外に挑戦する際の最大の障害は「言語」で、2番目の障害は「為替」です。この大きな障害を少しでも取り除いて、リスクをコントロールする手法・サービスを確立できれば、日本企業がもっと海外に挑戦できる、そのためのサービスを提供していきたいのです。もちろん、為替は日本だけの問題ではなく、グローバルな課題ですから、ゆくゆくは日本以外の国々にも挑戦していきます。

浦島:日本の今後を考えた時に、中小企業や個人が海外で働いたりものやサービスを販売したり、海外で取引を行うということがどんどん活性化されると思っています。逆に言うと、それがないと今後、日本は難しいかもしれません。そういった情勢の中で、中小企業や強みを持った方がしっかりとビジネスを継続できる力をグローバルな舞台で発揮することができるようなことに、少しでもお役に立てればいいなと思っています。逆に海外から入ってくる人についても、逆向きの為替リスクがあるわけですよね。ですから、海外から日本に入ってくる人についても為替リスクをあまり考えずに安心して日本で働いてもらうような環境を作ることで、日本全体として安定的に成長できるところに寄与していきたいと思っています。

服部:ジーフィットはグローバル金融、データサイエンス、ガバナンス、資金調達力という点でも強いチームを構成しており、グローバルを目指せる有望なスタートアップ企業だと感じています。昨今は歴史的なペースで為替が変動し、自国通貨の価値が見直されるこのタイミングはジーフィットにとって偶然ではないと思っています。これからも、我々W inc.は、ジーフィットを応援していきます!

――これからのジーフィット株式会社がますます楽しみですね。ありがとうございました!

浦島伸一郎
ジーフット株式会社 代表取締役社長  co-CEO & CTO
co-CEOでありCTOとして技術を統括する浦島は、米国チャールズシュワブ証券(Tokyo)IT Manager、DLJ証券(現CSFB証券)AVP、eSpeed(現BGC証券)Head of IT, Asia Pacific、セントラル短資証券 IT マネージャー、セントラル短資FX 取締役を歴任。金商業者のITシステムを長きに渡り牽引。2015年1月、ジーフィット株式会社を創業。

阪根信一(Ph.D.)
ジーフット株式会代表取締役 co-CEO & CSMO  
co-CEOでありCSMOとして経営戦略とマーケティングの責任者である阪根は、I.S.T 代表取締役社長、スーパーレジン工業 代表取締役社長、セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ 代表取締役社長、セブン・ドリーマーズ・ランドロイド 代表取締役社長を歴任。航空宇宙分野からヘルスケア、AIロボットまで、幅広いテクノロジー分野を対象としたシリアルアントレプレナー。ライフワークとして社会貢献にも尽力、特定非営利活動法人icetee 理事長も務める。2021年2月、ジーフィット株式会社に経営参画。

服部 将大
W ventures パートナー
2008年、三井住友銀行入行。法人銀行業務を担当。2010年より、SMBCベンチャーキャピタルへ出向。リーマンショック直後の厳しい投資環境下から一貫してベンチャー投資に携わる。2018年、日米でVC投資を行う独立系VC のDNX Ventures(旧:Draper Nexus Ventures)へ参画。SaaS領域での投資業務をメインに従事。これまでのおもな投資先は、エブリー、Kyash、クックビズ、global bridge HOLDINGS、スマートニュース、チームスピリット、ユニファなど、累計45社。シードからレイターステージまで幅広く総額35億円超規模での投資案件を担当し、そのうち10社をIPO/M&Aへ導く。無類の銭湯・サウナ好きでもあり、週3日ペースで通い詰める。オススメはらくスパ神田とレインボー新小岩。サウナとテニスコートでの投資相談も承っている。

取材・構成 株式会社TEA.M


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