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福祉と「X」。多様なかけあわせが目指す未来とは?|半福半Xな暮らし・働きかたを考える 公開プレゼンテーション&トークセッション 2023 Summerレポート・前編

都市で、地方で、リモートワークで。
働きかたの選択肢が増えた昨今、自分らしい働きかたを模索する人が増えたように感じます。

 土地や人に根ざして働く医療・福祉業界はどうでしょうか。「病院や施設で、目の前の人に向き合い続ける仕事」「やりがいはあるけど、自分の時間がつくれない仕事」…というイメージを抱く人も多いかもしれません。

 医療や福祉は、私たちの暮らしの土台を支える大切な仕事。地域社会を支えるこれらの働きかたをアップデートしていくためにどんな視点が必要なのか。

伊豆大島ではじまった「Work in Local×Social」が、医療や福祉の働きかたを考えるヒントになるかもしれません。Work in Local×Socialは、「半福半X」を掲げ、福祉の仕事をしながら、自分が実現したい「X」を副業的に実践するライフスタイルを模索するプロジェクトです。

伊豆大島で福祉施設「大島恵の園」を運営する「社会福祉法人武蔵野会」と、福祉の関係人口を広げる取り組みを行う「SOCIAL WORKERS LAB」のコラボレーションで、2023年1月にスタートしました。

 プロジェクトの第1弾として行われたのが、「わたしの半福半Xを考える」3日間のプログラムです。DAY.1とDAY.2では、伊豆大島で、島の暮らしや福祉の現場にふれて、島で活動する人と語る1泊2日の現地ツアー&ワークショップを実施しました。

DAY.3の今回は「公開プレゼンテーション・フォーラム」と題して、ツアーの参加者が見つけた「わたしの半福半X」のプレゼン、ゲストによるトークセッションが行われました。

トークセッション・プレゼンで語られた、土地や人に根ざしながら働く価値とは? 当日のイベントの模様をレポートします。

【DAY.3】公開プレゼンテーション・フォーラム

DAY3.の会場となったのは、2020年8月にオープンしたコミュニティスペース「SHAKOBA」です。SHAKOBAがコンセプトに掲げるのは、「令和時代の新たな社交」。

大勢で楽しみたいときは、カラオケが完備されたステージ付きのホールで、ひとりで楽しみたいときには、カウンター付きのスタンドで。多目的に過ごせる空間があるSHAKOBAでは、自分らしさを大切にしながら、そこで出会った人々と交流することができます。

「SHAKOBA」のメインホール
入り口には、イベントのフライヤーが飾られた

今回は、「大島牛乳」を使ったカフェオレ、伊豆大島の谷口酒造が造る焼酎「御神火」、特産品の椿油であげたおかき「椿揚げ」などが会場に用意され、集まった参加者のみなさんは、大島名物を楽しみながらイベントの開始を待ちました。

人気メニュー・大島牛乳のカフェオレ

【オープニング】Work in Local×Social誕生の背景

定刻になり、いよいよイベントがスタート。はじめに、Work in Local×Socialをプロデュースする編集者の影山裕樹さんから、本企画の背景が共有されました。

大正大学表現学部の専任講師も務める影山さん

影山:Work in Local×Socialは、地域と福祉を掲げていますが、これからの時代は、この2つの関係性に注目が集まってくると思います。福祉施設はどの地域にもありますが、地域社会との関係づくりに多くの課題と可能性があるからです。

そもそも、先日の伊豆大島ツアーに行って改めて感じましたが、福祉と関わりがない人はこの世にはひとりもいないんですよね。例えば、自分の親を介護するといったように、意識していないだけで、いろんな場面で福祉にふれる機会があるはずです。

DAY.1に行われた伊豆大島ツアー

影山:地域と福祉の関わりを強めていくと、異なる価値観をもつ他者との接点が増えます。当然、そこに軋轢が生まれるのですが、他者に対する自分自身の不寛容さに気づくこともできる。

これからの時代、福祉と地域の交差する現場には、人々の寛容性を鍛え、相互変容を促す可能性が秘められているのではないかと思います。

第2部では、ツアーに参加したみなさんから、伊豆大島と恵の園に訪れて感じたこと、そして、自分の中の福祉とを結びつけて考えた「わたしの半福半X」を発表していただきます。地域と福祉に関わることで、どんな生きかたが浮かびあがってくるのかを聞いていただきたいと思います。

【トークセッション「ローカル×ソーシャル」】地域と福祉の交差点

オープニングが終わると、「ローカル×ソーシャル」をテーマに、2人のゲストによるプレゼン、影山さんも交えた3人でのトークセッションが行われました。

1人目のゲストは、伊豆大島のデザインオフィス「トウオンデザイン」から、千葉努さんです。千葉さんは、デザインはもちろん、コミュニティや場づくりをテーマにしたイベント企画やメディア運営も行っています。

トウオンデザイン・千葉努さん

千葉:大島は、今でも火山活動が続く活火山の島です。至るところに噴火の痕跡が残り、自然の営みを学べることから「日本ジオパーク」にも認定されています。

頭に桶をのせる様子が特徴的な「あんこさん」は、島の生活で貴重な水を、女性でも運び続けられるように生み出された「水汲み」のスタイルなんです。

移住後、大島の各地で取材を行うなかで、厳しくも豊かな自然と向き合い、暮らしてきた先人たちの営み、そして大島ならではの文化や風習を知りました。グローバル化やテクノロジーの進化が進む現代で、大島らしさを未来へどうつないでいけるのかを考え始めています。

写真の中央にうつっているのが「あんこさん」

千葉:今や大島は、40年先の日本の未来を体現する課題先進地といわれています。若い世代が就きたい仕事が少ない、教育や福祉サービスが平均的な水準に達していない、価値観に画一的になっている…。これらに共通するのは、「機会の少なさ」ですね。

他にも、少子高齢化や後継者不足といった複数の課題を抱えるなかで、課題解決の鍵を握るのは「生態的観点」だと思います。

経済やお金の指標だけでなく、島ならではの「自然資本」、独特な環境のなかで育まれてきた「文化資本」、人と人とが紡いできた「社会関係資本」をかけあわせて、豊かな社会を築くアクションを考えていきたいです。

今回のテーマになっている半福半Xも、福祉とさまざまな関係資本をかけあわせて、地域に新たな価値をもたらす取り組みだと思います。プレゼンターのみなさんの発表を楽しみにしています。

続いて2人目は、福島県いわき市「ヘキレキ舎」から、小松理虔さんです。小松さんは、ローカルアクティビストとして、食や観光、医療福祉、文化芸術など、幅広い分野の企画・情報発信を行なっています。

今回、オンラインでの参加になった小松さん

小松:取材を通じて、これまでいろんな福祉の現場をみてきましたが、改めて福祉は誰かを支える仕事だと思いました。

障害のある人や暮らしに困難を抱える人は、言語以外で自分の気持ちを伝えようとする方も多いです。そういう時に、きっとこの人は何か大切な表現をしているのではないかと想像したり、興味深いものと捉える力が求められていると感じました。

一方、地域も、課題解決を通じて誰かを支える仕事だと思います。深刻な課題を抱えている地域に対して、なんでこんなにダメなんだろうと思うのでなく、ここに興味深いものがあるんじゃないかと、洞察する力が必要です。

地域や他者に向き合っていると、自分の器が問われているような気がするんです。自分は狭い視点でしか見れていなかったなとか、異なる考え方を持っている人とどう向き合おうか、とか。

ふくしと地域の相互運動について、語ってもらった

小松:やっぱり、地域と福祉の現場は本質的には変わらないんじゃないかと思います。でも、まちづくりや地方創生の場面で福祉が語られたり、社会福祉法人が地域の団体と一緒に活動する機会って少ないですよね。

これからは、地域と福祉の相互運動がますます求められる時代になります。人間は、他者とともに生きる社会的な生き物ですし、それぞれの価値観や考え方は、風土や食べ物、周囲の自然環境からも大きな影響を受けています。

福祉の業界で働く人たちは、個人の尊厳を守ったうえで、その人の背後にある地域にも目を向けること。まちづくりのプレーヤーは、まちに暮らす一人ひとりをみていくことが大切になってきますね。

千葉さんと小松さんのプレゼンでは、人と関係資本、地域と福祉が互いに関わり合う「相互作用」が、大きなテーマとして共有されました。

相互作用を促すために大切なのは、背景を知り、自分の捉えかたをアップデートさせていくこと。自分の捉えかたを広げることは、イベントの冒頭、影山さんが話されていた「自分自身の寛容性を広げる」という観点にもつながります。

次に行われたのは、チェックイン。参加者は4人ずつのグループに分かれ、イベントに参加した理由や楽しみにしていることについて自由に話し合いました。

一人ひとりの話に真剣に耳を傾ける

進路に悩みを抱えている学生からは、半福半Xの働き方に興味があるという意見が、社会福祉士として働く社会人からは、職場以外で障害者にあったときに、仲良くなれるかは難しいといった意見が挙がりました。

自己紹介が一周した後も、グループでの対話は続きます。イベント序盤にも関わらず、地域や福祉という共通の話題を通じて打ち解けあう姿が見られました。

どのグループも、参加者同士で打ち解け合う様子がみられた

チェックインが終わり、お待ちかねの公開プレゼンテーションがはじまりました! いったい、どんなプレゼンテーションが行われたのでしょうか。【公開プレゼン「わたしの半福半X」】からは、イベントレポート後編でお伝えします。

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