見出し画像

米国大学入試の各要素はどのくらい合否に効くか?

インターBBA (@vipertonguemom)さんがCollegeVineの提供するシミュレーターで米国の大学入試に影響する要素をまとめています。この手のサイトはいくつかあるものの、結構詳細な情報を入力する必要がありますし、出てくる合格確率は参考程度のものなので実際に使おうとすると割と面倒です。誰かが傾向を分析しておいてくれると助かると思っていました。せっかくまとめが出たので、ここで取り上げて自分の観測範囲の実感と合うかどうかをまとめておきたいと思います。

(1) 性別:大学により男女のどちらが有利になるのか異なるというのは想定通り。 各大学の男女別人気には差があり50/50に近づける努力をしている私立大学では合格確率が変わるためです。女子に人気があるのはBrownなど、男子に人気があるのはMITやCaltechなどです。以前、X(旧twitter)に投稿しましたが難関私立11校(アイビー、スタンフォード、MIT、Caltech)の応募者と合格者における女性の割合は以下の通りです(Source: 2022-23 Common Data Set)。

(2) 人種: 最高裁判決で人種差別が禁止されたことから影響ない前提になっています。ただし、判決にもある通りエッセイなどの多様性アピールを評価することは認められており、影響はあると考えるのが自然です。

(3) 国籍: 基本的には米国の高校を出ていれば差はありません。

(4) 親の学歴 :ないことになっていますが有名なUS News の大学ランキングで社会的モビリティーが重視されているなどこうした項目は大学に対する社会的要請となっており、実際にはエッセイなどでアピールできるポイントがあれば差があると考えるのが自然です。両親が高卒以下であれば有利になる可能性があるということです。

(5) 奨学金希望: 経済事情が合否に影響するかどうか(Need Blindかどうか)は州内生/州外生/海外生別にリスト化されています。データが2021年とやや古いですが College Transitions のデータを貼っておきます。財政に余裕のある私大ほど need blindにする傾向があります。州立大へ州外からの出願では差がある学校が割と多いです。

(6) 専攻:複数の学部(School)に分かれて選考している総合大学では当然関係があります。Carnegie Mellon 大など学部別にある程度、統計を出している大学もあります。特にCSは人気がある上に教育リソースが不足しているので難易度が高くなります。一括で学生を募集している私大では難易度にそこまで明確な差はないと思われますが、医療系志望などは出願者が多くエッセイなどで独自色を出すことが難しいという点を踏まえると難易度には差があると考えるのが自然でしょう。

(7) GPA:おそらく最も信頼性の高い合否の指標であり、試算結果もそうなっています。 一流大は4.0がほぼ必須で、高校を通してAを逃がした科目が3つくらいあれば一流大を諦めるのが最近の高校生のトレンドです。一方で学校毎に計算方法がまちまちの Weighted GPAにあまり意味があるとは思えません。ただし同一高校からの出願者比較には使われるかも知れません。

(8-13) 高校:基本的には受験者をいくつかの母集団に分けて審査していると思われます。国内生と国外生は基準が異なり、国ごとにある程度緩やかな人数の目安のようなものはあると考えられます。国内生の中でも州別や地区別(都市および周辺部と田舎)に緩やかな目安のようなものはあるでしょう。ただし、有名私立大入学者数には学校によって大きな差があるため、学校ごとに明確な人数枠があるという訳ではないようです。

(14) SAT: 多くのトップ校では一定以上の点数に最高評価を与えていると思われます。その閾値はおそらく1530 (98.5パーセンタイル)から1570 (99.5パーセンタイル)くらいであると想定されます。1570と1600では全然難易度が違いますが、AOはテストの点数が嫌いなようです。

(15) AP/IB/DE - 高校や州によって設置科目や可能な取得科目数が違うので何とも言えません。受験生の高校でどの程度の科目がオファーされているかとの兼ね合いで選考する大学AOが多いです。印象としては優良学区のトップ私立出願組はかなり全力に近い勢いでやっており、観測範囲ではAP8科目以下と言う人は少ない印象です。聞いたことのある最高は19科目です。そもそもAPの中の高難度科目(Calc BC、Physics C、Chem、English Langなど)を取らなければ意味がない気もします。米国の大学では最高評価(AP=5,IB=7)を取ることはそこまで重要ではない様子。ただし英国は別でスコアはかなり効いてくる模様です。

(16) 課外活動:数よりも高校生活で何をやってきたかの一貫性が求められます。もっとも、米国の慣習に則って割と簡単に出られる全米レベルの大会に出ておいたり、何か説得力のある作品を用意しておくことにはそれなりに価値があると考えられます。


いかがでしたでしょうか。多数のデータポイントを元にしていることもありシミュレーターは概ね実感と合う傾向を示しているように見えます。ただし、元記事にもあるように「米国大学受験は合格可能性が読めない”くじ”」のようなものであり、こうした情報はあくまでも参考程度と考えた方が良さそうです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?