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日本の医療機器の市場と企業を就活にリンクしてみよう!〜検査室・レントゲン〜(4)

さて、今回は、上記のタイトルにもあるように、放射線科関連の製品をメインとした検査に関する情報を共有しましょう。
以前の記事にもレントゲンのことを少し記しましたが、今回は、その主要医療機器を挙げていきたいと思います。
画像診断機器(X線装置、MRI等)
この放射線科モダリティーの市場は、約2000億円弱となります。
放射線科関連の大型装置は、「デバイス」等の用語は使わず、「モダリティー」という言葉をよく使います。
このモダリティーを販売、保守サービス、するのがモダリティーメーカー(企業)です。

以下主要メーカーを挙げてみますね。

・キャノンメディカルシステムズ株式会社(新卒あり)
・GEヘルスケア・ジャパン株式会社(新卒あり)
・シーメンス株式会社(新卒あり)
・富士フイルムヘルスケア株式会社(新卒あり)
・株式会社島津製作所(新卒あり)
・株式会社フィリップス・ジャパン(新卒あり)

巨大企業による巨大企業の買収:
ここ10年を見てみると、この市場にも大きな買収がいくつかありました。
キャノンメディカルシステムズ株式会社は、旧東芝メディカルシステムズを買収し、キャノンの本体が持っている医療機器事業と再編を行い今に至っています。(2016年12月に買収を完了:買収額役6655億円)
この買収劇は、業界の注目を集めました。
実はフジフィルムの名前も出ていたためです。
もし、フジフィルムが買収していたらどうなるか?これは、業界に激震が走ったでしょう。
フジフィルムはもともと画像診断のためのフィルムやイメージャー(画像をフィルムにやける装置)を提供していました。
その後いち早く、事業をIT化の波に乗せ、病院内の情報伝達部分であるRISのシェア獲得に成功していました。
ただ、放射線科向けの画像診断装置の開発はごく一部でしかされておらず、大型医療機器であるCTやMRI等の装置は事業分野に含まれていませんでした。
そして、東芝本体の不調による東芝メディカルシステムズの売却の話が出ました。

当時の東芝メディカルシステムズは、日本国内の大型画僧診断装置の市場では、海外勢であるGEヘルスケア、シーメンス、フィリップスと互角の勝負を展開し、かつ一部領域では、それらの企業を凌駕していました。
国内でもトップ3に必ず入る企業です。(図1)


これにフジフィルムが手を上げない理由はありません。
理由は、フジフィルムの手がけるRISネットワークのシェア+東芝メディカルシステムズのトップクラスの大型医療機器のシェア、しいてはお客様を一手に獲得できたなら、ほぼ大型医療機器の市場を握ることができたからです。(図②)


Hidden Pressure:(かくれた競合へのプレッシャー)
また、もし買収できていたなら、富士フィルムは他の医療機器市場でも事業を展開しており、競合へのプレッシャーもかけることができたのです。
それは、軟性内視鏡です。
通常、胃カメラとか大腸カメラで呼称されますが、その競合は「オリンパス」です。
軟性内視鏡の世界では、オリンパスは、この分野の発明企業で、先行優位の状況が、今でも継続されているのが現状です。
富士フィルムもこの分野で軟性内視鏡事業を保有していますが、やはり、オリンパスによる大きな市場シェアの前には、苦戦が強いられていたはずです。
さて、なぜプレッシャーをかけられるのかというと、オリンパスは内視鏡事業のほかには、これらの大型画像診断装置事業は持っていないということが挙げられます。
図をみていただくとわかるのですが、もし、フジフィルムが買収できた場合、

・自社が構築した放射線科のRISシステムの圧倒的市場シェアを活用する
・旧東芝メディカルシステムズの保有している現在のお客様、市場シェアの獲得と活用、病院内シェアを獲得できそれを活用する


これらの圧倒的シェアとその活用は、富士フィルムが持つ放射線科RIS事業を既存のビジネスの一つである軟性内視鏡市場にも広げられるチャンスがあったのです。
これは内視鏡市場が、まだ、放射線科で活用されているRISのような画像データの共有やネットワーク化に諸所の理由から、後れを取っていたからです。
しかもオリンパスはこのネットワーク、画像保存と活用には、あまり力を入れていない状況でした。
この点に富士フィルムが気づいていたとしたら、オリンパスの占有している市場シェア、病院内で獲得した院内シェア、ITネットワークの活用とさらなるIT製品の開発等によって。
オリンパスからのシェア奪取ができる可能性も大いにありました。

つまり、もし、この買収劇がキャノンではなく、富士フィルムであったなら、今の日本市場の様相は、日本のメジャーな市場規模を誇る大型画像診断装置市場、病院のネットワーク関連市場、内視鏡市場も巻き込んで、かなり異なった姿になっていたと推測できます。
富士フィルムは残念ながら東芝メディカルシステムズを買収することはできませんでしたが、そのフジフィルムは再びチャンスを得ることになります。
2021年3月末に画像診断装置製品群を製造する日立メディコと日立アロカメディカルを1790億円で買収することになります。

日立メディコは、比較的中規模の病院や小規模病院、地域のクリニックまで広範囲にわたるお客様を保持しており、これが国内大型医療機器メーカーの買収のラストチャンスと言われました。
最後にそのチャンスを生かし、先方の決断を引き出せたのです。
このように、様々な市場の変遷を経て、今の市場が構成されています。
患者様が実際にCT検査、MRI検査等で経験している装置等、実は、大きな市場をもっているのです。
これらの大型機器は少し長めの営業活動が必要ですが、その間に現場の方々と仲良くなったり、日本企業であれば、海外営業や海外赴任で市場開拓したりする機会がでてくると思います。
これらの経験は職歴としてもキラリと光るものになると思います。
外資系であれば、外資系の文化に触れることができますし、本社訪問、本社勤務、また、他の国々の外国人との交流もあると思います。

興味のある方はぜひ、就活の一つの選択肢にしてみてください。

放射線科のネットワーク関連 
このRIS・PACSにも大きな市場が存在しています。

医療機器・医療関連の市場調査でも有名な株式会社矢野経済研究所調べでは、2022年度の国内市場規模は573億円と算出しています。
2023年以降の今後の市場規模は横ばいと予測している研究所が多いようですね。

放射線科の中では、患者様の様々なデータを取り扱わなければなりません。
また、各診療科よりのオーダーに沿って、患者様の撮影を行いますが、その撮影データ、撮像データの結果を診療科に戻さなければなりません。
この作業はそこで働く人にとって非常に手間・時間がかかりますし、データの取違い(渡し間違い)等も起こしやすい手順でした。

現在は、放射線科の画像データ等を管理するストレージやネットワークがあり、このネットワークは電子カルテ関連:病院情報システム(HIS:Hospital Information System)と連携が可能です。

放射線科全体の情報システムはRIS(Radiology Information System)と呼ばれ、そのコア部分である画像保存及びネットワークシステムはPACS(Picture Archive Communication System)と呼ばれています。
それぞれのカテゴリで、別々の得意分野を持つ企業が市場に貢献しています。

以下主要メーカーを挙げてみます。

・富士フイルム医療ソリューションズ株式会社(新卒あり)
・キャノンメディカルシステムズ株式会社(新卒あり)
・コニカミノルタヘルスケア株式会社(新卒あり)
・PSP株式会社(新卒あり)
・株式会社イメージワン(現在新卒募集欄なし)

等となります。

上記に上げた企業以外でも企業の得意分野があり、それぞれの企業の強みを生かした事業展開を行っています。
情報学、IT、ネットワーク、ソフトウェア等の開発もありますし、病院の情報ネットワーク構築にも貢献できます。興味のある方がいれば、一度調べてみることをお勧めいたします。

国内の医用画像診断装置の市場について:
富士経済:ライフサイエンスレポート No.4「画像診断機器・装置の市場予測」
引用元:一般社団法人ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン
https://www.link-j.org/bulletinboard/post-8050.html

国内の医用画像関連システム市場について:
「国内の医用画像関連システム市場、2022年度は前年度比4.3%減」矢野経済研究所発表資料:医療機器ニュース、MONOist:ITmedia Inc.
https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2406/11/news044.html