社是はどこから生まれるのか?
「マルちゃん」の名前を聞いて、即席めんを思い浮かべる人は多いでしょう。いまや売上4000億円を超える大企業となった東洋水産ですが、その裏には、創業者・森和夫氏の奮闘の物語があります。それを克明に描いた小
説「燃ゆるとき」の一部を紹介したいと思います。
東洋水産は、もともとは森氏が築地魚市場で始めた零細企業でした。その後、即席めんを製造、「マルちゃん」ブランドで販売すると大ヒット商品となります。しかし、以前より製造していたハム・ソーセージに関しては、商社からの委託製造という形を取り、「マルちゃん」ブランドで販売することは許されませんでした。
そこで森氏は、商社に何度も足を運び直接交渉を行います。次第に担当者も動かされ、ついに、東洋水産が「マルちゃん」ブランドでハム・ソーセージを販売することを認められました。
これが転機となって、東洋水産の加工食品はすべて「マルちゃん」ブランドでの販売となり、業績も急上昇しました。森氏は、「誠意」と「やる気」があれば、どんな困難も乗り越えられると信じ、それが東洋水産の社是となり、今日まで受け継がれています。
経営においては、成功体験をよく振り返ることが大切で、そこに会社の価値観や文化を形成する原動力が眠っている場合が多いと思われます。東洋水産の例は、その典型的な事例かもしれません。