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ライフサイクルアセスメント(LCA)の起源と歴史

今回はライフサイクルアセスメントの起源と歴史についてこれまで自分が学んだことをまとめていきたいと思います。企業でライフサイクルアセスメントの評価業務に従事する身としては、目の前の評価依頼案件の対応で精一杯であり、その起源や歴史について学ぶことをおろそかにしてきたというのが本音です。私自身の勉強のためにも本記事は簡潔にライフサイクルアセスメントの起源と歴史の重要なポイントについてまとめてみました。

ライフサイクルアセスメントの起源・歴史で抑えるべき3つのポイント

ライフサイクルアセスメントの起源と歴史について抑えるべきポイントは、私は大きく以下の3つであると考えています。

1.ライフサイクルアセスメントの起源はコカ・コーラ

2.ライフサイクルアセスメントの世界レベルでの研究開始

3.ライフサイクルアセスメントの国際標準化

以下、説明していきたいと思います。

1.ライフサイクルアセスメントの起源はコカ・コーラ

 ライフサイクルアセスメントの始まりは、1969年にアメリカのコカ・コーラ社の委託によって現在のフランクリン研究所が実施した「飲料容器に関する環境影響評価に関する研究」だと言われています。この研究ではワンウェイ容器とリターナブルびんのライフサイクルを通じた環境への影響を比較評価しています。
 その一方で同時代の日本においては、下記グラフのとおり1960~1970年代の高度経済成長期に当たり、所得の増加とともにごみ量の急増が問題となっていました。また、高度経済成長と併せて日本国内では公害が問題となり、工場周辺の住民に甚大な被害をもたらしていました。経済が環境に与える影響を当時の人々が考えていなかったわけではないとは思います。しかしながら、結果的に公害問題が発生したことからも環境が軽視されていたことは否定できないと思います。このことを裏付ける証拠として、1967年制定の公害対策基本法の「生活環境の保全については、経済の健全な発展との調和がはかられるようにする」という条文が挙げられます。この条文からも読み取れるように、あくまで環境保全は経済発展ありきで考えられていたと思われます。本条文は「経済調和条項」と呼ばれ、後の1970年に削除されました。
 上記日本国内の状況を考えると、同じ時代にすでに環境負荷の見える化に取り組み、積極的に環境負荷改善に取り組もうという姿勢を見せていたコカ・コーラ社の先見の明に脱帽します。

日本のごみ排出量と国民可分所得の推移

2.ライフサイクルアセスメントの世界レベルでの研究開始

 1で述べたように、コカ・コーラ社の研究がきっかけとなり、その後ライフサイクルアセスメントの研究や評価事例が蓄積されていきました。コカ・コーラ社の評価事例は、後に資源環境プロファイル分析(Resource and Environmental Profile Analysis:REPA)として知られるようになります。
 1970~1975年には、アメリカ環境保護庁がコカ・コーラ社の評価事例をフォローアップし、およそ15のREPAを実施しました。その後1970年代半ばにオイルショックが発生したことにより、エネルギーに関連する研究がライフサイクルアセスメントにおいて重要視されるようになりました。また、1970年代前半には類似の評価手法として欧州においてエコバランスが開発されました。このように欧米においてライフサイクルアセスメントの評価及び研究が盛んとなっていきました。
 1990年には環境毒性学及び環境化学に関する国際学会(Society of Environmental Toxicoloty and Chemistry:SETAC)が最初のライフサイクルアセスメントのワークショップを開催しました。さらにその翌年の1991年にはSETACのヨーロッパ支部内に研究グループが設置され、世界レベルでの研究が行われるようになりました。これ以降ライフサイクルアセスメントの研究が加速し、様々な評価手法が世界中に誕生していきました。
 このように欧米を中心とし、世界レベルでの研究や議論の場が設けられたことにより今日のライフサイクルアセスメントの評価手法が構築されてきました。先人たちの「環境負荷をどうにかして定量化し、見える化しよう」とする努力の恩恵を我々が受けていることを忘れてはなりません。


3.ライフサイクルアセスメントの国際標準化

 続いてライフサイクルアセスメントの大きな転機となったのは、国際標準化機構によるライフサイクルアセスメントの標準化です。1992年のリオデジャネイロでの地球環境サミットの結果を受け、国際標準規格の作成自体は1993年に開始され、以下の4つの規格が発行されました。
・ISO14040:原則及び枠組み
・ISO14041:目的及び調査範囲の設定並びにインベントリ分析
・ISO14042:ライフサイクル影響評価
・ISO14043:ライフサイクル解釈
 現在の新規格ではISO14041~14043をISO14044として再編及び統合し、2006年にISO14040及び14044として発行されました。
 
 企業内でライフサイクルアセスメントの評価業務に従事していると、上記のISOに関してよく以下のような質問を受けます。
・評価する際に使用するソフトウェア及びデータベースの規定があるのか?
・評価に必要なデータソース及びデータ収集方法の規定があるのか?

 ISOの規定は大まかに下記のような内容が記載されているに過ぎません。
・ライフサイクルアセスメント評価はどのようなステップで進めていくか。
・第三者向けの報告書には何を記載するべきか。
・比較主張を行う際はクリティカルレビュー(第三者による報告書チェック)を受けなければならない 等

 ISOの規定はあるものの、評価の実務においては評価実務者が適切だと思われるソフトウェア、データベース、データソース及びデータ収集方法等を都度考えなければなりません。全てISOの規定で決まっていて、評価依頼すればすぐに結果が出てくると考えている社員がいるのは評価実務者としては辛いところです。


以上、簡単ではありますが、ライフサイクルアセスメントの起源と歴史についてまとめてみました。本記事をまとめている中で、自分自身勉強不足な部分があると痛感しました。今後も継続的な勉強に励んでいきたいと思います。


参考文献及び資料
1)「環境技術解説 ライフサイクルアセスメント(LCA)」(環境展望台)
2)環境省「日本の廃棄物処理の歴史と現状」
3)Greg Johnson, The ISO 14000 EMS Audit Handbook
4)Susan Svoboda, Note on Life Cycle Analysis
5)伊坪 徳宏, LCA概論


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