レンタカー試乗記 : 014 トヨタ プリウス 1.8 G (ZVW30)
ミサイルと言われるのは人のせい?
それともクルマのせい?
ご覧いただきありがとうございます。
今回はコスモ石油が提供するカーシェアの"やさしいカーシェア"で30系(3代目)のプリウスを借りることができた。
前々から30系のプリウスには乗ってみたいと思っていたのだが中々うまくいかず、今回やっと乗りたい個体が見つかったので借りてみた次第である。
30プリウスのレンタカー/カーシェア自体は探せばまだいるレベルなのだが、後期のホワイトでSグレード以上の個体に乗ってみたかったのだ。
"プリウスミサイル"などと言われているが、実際乗ってみてどうなのか。
クルマとしてはどういうものなのか。本当にミサイルなのか。
乗ったこともないのに断定してはいけない。
ということで、実際に乗って検証していきたいと思う。
30系プリウスのグレードは上から順に「G」「S」「L」の主に3つ。
そして上位2グレードの「G」「S」に17インチアルミホイールなどを装備した「ツーリングセレクション」や、前期型だと「LEDエディション」、後期型だと特徴的な装飾が施された「マイコーデ」や、専用エアロ等で武装した「G's」など、さまざまなグレードが存在する。
今回乗車したのは上級グレードの「G」。細かいマイナーチェンジで値段が微妙に異なってくるのだが、だいたい260万円くらいのグレードだ。
外観、内装、デザイン
街中でも見ない日はないこの型のプリウスだが、よく見るとなかなか凝った形してるよなぁと思う。
前から見るとセダンみたいにも見えるのだが、後ろはけっこうスパッと切り落とされている。ただしワゴンみたいな形ではなく、ルーフは後ろになるにつれて段々と低くなっている。
ヘッドライトはHID。
HIDヘッドライトは上級グレード「G」および中級グレードの「S」で標準。ちなみに下位グレードの「L」はハロゲンヘッドライトが標準となり、HIDヘッドライトはオプションでも装着できない。
そしてハロゲンフォグランプも装着されていた。
こちらは上級グレード「G」に標準装備、中級グレードの「S」でオプションである。下位グレードの「L」には設定なし。
こう見るとLグレードの装備はかなり削られている印象。どちらかというと社用車向けだろうか。
後ろから見ると、サイドラインの後ろ上がり感がより分かると思う。
空力のためなんだろうけども、意外と不自然感はない。いや、写真だとちょっと不自然に見えるが実物を見るとなぜか不思議と馴染むというか。
トヨタの、こういう溶け込むようなデザインは本当に上手いと思う。
この頃のデザインが一番自然だったかな?現行型のプリウスはさすがに尖ってるというかデザインした感が丸出しで個人的にはあんまり好きじゃない。
ちなみに、たまに右側テールランプの下側が赤くなっている30プリウス後期を見かけるが、それはリアフォグ装着車である。全グレードにてオプション選択可能らしい。正当な用途で点灯させてるのを見たことないけど。
真横から。後ろがスパッと切り落とされているようなデザインは先代の20プリウス時代から共通である。
後ろ上がりなデザインに沿って窓も絞り込まれている。
そこそこカッコいいのだが、あわせてルーフも絞り込まれているので、後方視界はあまり良くない。
これについては"乗ってみての感想とか"でも述べる。
タイヤサイズは195/65R15。
ブリヂストンのネクストリーが装着されていた。
ホイールはアルミホイールに見えるが、実はこれはカバーだったりする。
引っぺがすと15インチのアルミホイールが出現する。ちなみにこのロジックは初代プリウスから続いている。空力が良くなるからなんだとか。
ツーリングセレクション(GとSグレードに設定)を選ぶと17インチのアルミホイール(カバーが付かない正真正銘のアルミホイール)になる。
個人的には間のサイズである16インチくらいがちょうど良いんじゃないかと思うのだがどうだろう。
内装。運転席近くまでセンターコンソールが伸びていて、さながら戦闘機のコックピットのようだ。
ステアリングは初代アクアと共通デザイン。
ハンドルは上級グレードの「G」のみ革巻き。それ以外のグレードはウレタンハンドルになる。あのザラザラした感触の独特な素材のハンドル、触った人も多いのではないかと思う。
ちなみに当然といえば当然だが、ミサイルの発射装置のスイッチなどは付いていない。特攻したい人は本物のミサイルを買ったほうが良い。
後席の足元空間は広々。頭上空間は微妙に狭い気もしたが、そこまで気にもならないレベル。4人乗車までは快適にこなせると思う。
足元を照らすライトまで付いていたのはビックリ。
シートはハーフレザーシート。触り心地がとても良かった。
ちなみに「G」グレードのみに設定される「レザーパッケージ」を選択するとフルレザーシートになる。いわゆる革シート。
荷室。後席を立てた状態でこの状態なのでけっこう広いような気はするが、タイヤハウスの張り出しがけっこう大きいのはちょっと気になったかも。
ちなみに後部座席は格納できるので、長尺物の積載も問題なさそうである。
ただし後部座席のリクライニングは不可能。
乗ってみての感想とか
今回は比較的短時間での試乗だったのでそこまで遠くへ連れ出せなかったのだが、高速道路を除く一般道や山道へ連れて行くことができた。高速道路でのインプレッションができなかったのは心残りだが、まぁそれは追い越し車線かっ飛ばしてるこの型のプリウスを見れば性能も分かるものでしょう。
にしても。いやー、文句ない。
追い越しかっ飛ばしたり(2回目)バカみたいに煽ったりしているのをよく見かけるが、まぁ、それくらい難なくこなせる動力性能ですよコレ。
ただしこれは血眼で走ればの話。
運転手および運転手の機嫌次第で180度性格が変わるクルマと言うか、いやまぁどのクルマもそうなのだがプリウスは特にそれが顕著だと思う。
僕はやりませんけどね。紳士なので。
…さて、とりあえず一般道での印象。
穏やかに走ると、まぁ静かなことで。
乗った感じはすごくしっとりとしていて、どこまでも丸い感じ。踏み込めばエンジンの音は車内に入ってくるが、ハーフスロットルくらいだったらほぼ気にならないくらい。たまに発電用途でエンジンが掛かることもあるが、気にならないレベルだったのでほんとすごい技術だと思う。
山道はほんとライトに走っただけだが、かなり走れた印象。
アクセルを踏み込めばエンジン音こそ入ってくるものの、予想以上に力強く走ってくれる。
あと、カーブでも思ったより安定して曲がれる。これはパワステのセッティングが若干重めなのも効いている気がする。少なくともグラっと来ることはなかった。
あと、魔法のパワーモードスイッチを押すと一気にエンジンの回転数が上がって加速感が凄くなる。全開加速だとそこまで変わらないようだが、途中加速においてはけっこうな効果を発揮するんじゃないかと思う。
ちなみに、バッテリーだけで走れるEVモードというものも存在する。
これはエンジンが掛からないようにして走れる(要は静かに走れる)モードであり、アクセル開度が規定値(おそらく半分以上?)、もしくは60km/hを超えると警告音が鳴って自動的に解除される。深夜の住宅地とかでは有用かもしれない。
にしてもなんというか、先代アクアの初期型のサイズを大きくしてエンジンの排気量を増やしたみたいな運転感覚な気がする。
…いやまぁ、それがプリウスというクルマなんだけど、先代アクアの中期型以降とはちょっと違う気がする。謎。
ちなみにそんな先代アクア初期型の試乗記はコチラ。
さて、今のところ誉めまくっているが、気になったのはやっぱり視界。
全体的に車体が丸っこいのもあるが、それに加えてダッシュボードがけっこう高めなので前方視界があまり良くない。大通りを流す分には良いのだが、狭い道で曲がるときとかはけっこう怖いかも。
あと、後方視界も微妙。もはやリアシートの画像だが。
やっぱり窓が後ろ上がりなので、その分視界も犠牲になっている気がする。
特に斜め左後ろはかなり掴めない。カメラが欲しいと思ってしまった。
ただし気になったのはそれくらい。視界以外はほんと"ザ・ツーリングマシン"といった感じだろうか。ガチ勢の方からすれば笑われるかもしれないが、自分は乗っていてそれくらい楽しかった。
ちなみにシートもかなり良い出来で、張り出しているサポートの部分がちょうど良くゆったり支えてくれて座り心地がとても良かった。
エコドライブモニター・コレクション
30プリウスには、メーター内の左側に色々な情報を表示できるモニターが付いている。(公式では"エコドライブモニター"と言うらしい)
このモニター、色々と表示が切り替えられて面白かったので、把握できた分だけ載せてみることにする。たぶん他にも知らない表示がありそうだ。
さすがに解像感とかはいろいろと時代を感じるところではあるが、ここまで車内で情報表示を完結できるのはさすがの技術と言うべきか…。
※すべて駐車場にて撮影しています
いいところ
まったく過不足ない性能なのに、燃費が良いこと。
たぶん純ガソリン車なら13~15km/Lくらい(もしくはそれ以下かもしれない)の走り方をしたのに、このプリウスは平気で20km/L以上を叩き出してくる。
アクアだと多少遅いかな…?と感じる場面でも、プリウスにはそれがない。
また、フル乗車時でも荷物が結構積める。燃費も良いし(n回目)、ファミリーカーとして使ってもそこまで不便には感じない気がする。
あと、パワーウィンドウが閉まるときの直前だけ動き方がゆっくりになる制御。言い方が難しいが、閉まる5cm手前くらいでゆっくりになるのだ。
高級感があって、素晴らしい。せっかちな人は嫌いそうな装備だが。
本文においてエンジンブレーキ等には触れなかったが、Bレンジでの減速感がちょうど良いのは想定外だった。さすがに急な坂だとフットブレーキ併用が無難だが、ちょっとした下り坂なら意外とBレンジでこなせそうな雰囲気があった。
わるいところ、微妙なところ
"乗ってみての感想とか"でも述べたが、車体の形状ゆえ車体感覚が掴みづらいこと。余裕を持って運転すればさほど影響はないが、イキった運転のプリウスを見るたびによくぶつけないなぁと感心してしまう。
ルームミラーも小さいので後方視界は本当に気を付けないと怖い気がした。
もし自分のクルマとして買うならワイドミラーは欲しいところ。
ちなみに後継の50系プリウスではボンネット前方が一部角ばっていて前方がそれなりに掴みやすくなっていたので、進化しているものなんだなと感じた。
あと気になったのは、ステアリングスイッチが暗かったこと。
光らないよりマシだが、もうちょっと明るくできなかったのだろうか。
個体差の可能性はありそうだが。
技術は進歩したが、乗る人間は進歩していない
さて、クルマは月日の経過とともに驚くほどの進化を遂げているわけだが、それに乗る私ら人間は進化しているのだろうか。
20年前の(それでも2004年なのだが)クルマのiQが100だとしたら、おそらく現代のクルマのiQは200くらい行っていると個人的には思っている。
では、20年前の人間のiQが100だとしたら、今の人間のiQは200になっているのだろうか?
残念ながら、なっていないだろう。
20年前も今も、iQ100前後の人間がクルマに乗っている事には変わりない。
いやむしろ、下がっている可能性すらある。
煽り運転という言葉が巷で流行り始めた(いや、流行ってはいけないのだが)のなんてここ数年だろうし、ヤバい挙動のクルマとかもここ数年で明らかに増えたような気がする。
いや、もしかしたらネット社会の発達によってそれらが明るみに出てきているだけなのかもしれないが…。
技術の未熟な人間が動力性能の良いクルマに乗れば、それすなわち制御が効かなくなったときにミサイルと化してしまう。
アクアの回でも述べたように、みんな売れているクルマを買いたがるのだ。
つまり、そんな層はプリウスにも行くのだろう。
結果として、このクルマを"ミサイル"にしているのは乗っている人間だ。
当たり前の話だが。
プリウスミサイルなどと呼ばれているのは、売れていて母数が多いからだろう。母数が多ければミサイルと化す可能性だって高くなる。
それこそオーパが売れていれば、フィットアリアが売れていれば、エリオが売れていれば、そして売れていてかつ事故率が高ければその車種はみんなミサイルと呼ばれるに違いない。
つまるところ、プリウスは完全なる被害者(被害車?)だろう。クルマの性能やポテンシャルは良いのに、一部の乗っている人間のせいでミサイル呼ばわりされてしまう。悲運そのものである。
でも、技術は段々と進化して。
人間は「クルマを運転する」役割なのではなく「クルマに『助けられて』運転する」時代になりつつあるのではないかと思う。
それこそ20年前なんて先進安全装備はまだ黎明期の時代だったし(自動ブレーキ搭載車もあるにはあったが、高額オプションの時代だったと思う)運転する人間は常に危険と隣り合わせのような、そんな雰囲気は絶対あったと思う。
でも、現代のクルマは、技術が未熟な人間が乗ってもそれなりに運転できるように作られている気がする。先行者が発進したら教えてくれたりするし、空から自車を見ているような映像をナビに投影したりしてくれるから駐車も安心だ。衝突回避ブレーキも備わっているから万が一の時でもたぶん大丈夫。さらに、2022年以降に新車で出るクルマはバックモニターの装着が義務化されるなど(既存モデルはまた違ったような気がするが)、よく言えば現代の世の中のクルマはみんな"ユーザーフレンドリー"なクルマになっているのだろう。
でも、それっていずれはクルマに支配されてしまうのではないか。
今でこそサポート段階の技術だが、やがてクルマの制御はコンピューターによって自動化されてしまい、交差点右左折時のハンドル操作も自動化されたり、見えづらい歩行者も自動で検知してアクセル操作を無効化したり、たまに追い越し車線をかっ飛ばしたくなってもクルマ側が自動で加速制限を掛けたり。
そんな未来は、いずれやってくると思う。
結果的に見て、それはある意味自分勝手な動きをするクルマがいなくなるという事だから個人的にはありがたいのだが。
でも、運転する楽しさは無くなってしまうだろう。
事故は減るだろうけど。
楽しむなら今のうち、という事なんだろうか。
つまり。プリウスでイキった運転をしている皆さん。
それも今のうちかもしれませんよ。なんてね。
久々の試乗記がこんなのでいいんだろうか…。
最後までご覧いただきありがとうございました!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?