レンタカー試乗記 : 010 ダイハツ ウェイク 0.66 L"SAⅢ" (LA700S)
空間のためなら、なんでもする精神
ご覧いただきありがとうございます。
今回はタイムズのカーシェアでダイハツのウェイクに乗ってきた。
車種的な興味と、タイムズカーでは珍しくアルミホイールとフォグランプが装備されているグレードが配備されているので前から気になっていたのだが、家の近くに配備されておらずなかなか乗れずにいた。
タイムズカーでも割とウェイクは古めの世代になりつつあるので、このまま乗らないでいるとそのうち消えそうだな…でもそれは嫌だなと思い、Webで検索したところ割と行きやすい場所にウェイクがいるステーションを発見。
愛車を30分程度走らせ、深夜で安くなっているコインパーキングに停めてそこから歩いてウェイクに乗りに行った。
自分のクルマでドライブしろって?
違うんですよ、色んなクルマに乗ることで生まれる知見とか価値観があるんですよ。これこそロマンですよね。
外観、内装、デザイン
ほんと切り詰めたデザインだなというか、これこそ"キューブ"なんじゃないかというデザインをしている。離れて見るとよりその四角さが分かる。
今回乗車したL"SAⅢ"グレードはハロゲンヘッドライトとフォグランプ、14インチアルミホイールが標準装備。
こうして見ると余計な装飾がほぼないというか、道具感、ツールボックス感溢れる素朴なデザインである。意外と好み。
後ろはほんと絶壁。これもスペース追求の結果だと思う。
ここまで絶壁なクルマ、あまり見ない気がする。
テールランプはLED標準装備。リアバンパー下側にメッキパーツと反射材が付いていてちょっとしたアクセントになっている。
いやまぁよくここまでやったなぁと思うサイドビュー。
サイドラインも極力削っている辺り、ダイハツのこだわりを感じる。
というかより道具感を際立たせている。
そして、CピラーとDピラーの間の窓がルーフの一部にまで繋がっているようなデザインも特徴的。
これも室内空間のためなのか、それとも単なるデザインなのか?
ホイールは14インチのアルミホイール。シンプルなデザインで結構好み。
タイヤはダンロップのエナセーブ EC204が組み合わされていた。
照明系は基本的にオレンジで統一されている。メーターの数字はホワイト。
そして、今どき珍しくステアリングスイッチが付いていなかった。
ダイハツのクルマだとステアリングにパワーモードのスイッチが付いていたりするのだが、ウェイクには走行モードの切り替え機能とかは特にないみたい。見つけられなかっただけなんだろうか。
にしても空間が巨大。後で再度触れるが、ここだけ見ると軽には見えない。
後席はかなり広いものの、座面が平板なので長時間座ると尻がつらそう。
空間自体はとんでもなく広いので、クッションとかを敷けばそこそこ快適になるのではないだろうか。
荷室。後席を立てた状態でも荷物は思ったより載る気がする。
長尺物は無理だが、スーパーで買いこむくらいなら全然いけそうだ。
ちなみに後席は倒すとダイブダウンしてほぼ段差が無くなるタイプ。
2名乗車時であれば長尺物の積載も可能。車中泊もできそうだ。
乗ってみての感想とか
車両重量はちょうど1トン。
その車体を52馬力の660ccエンジン(しかもノンターボ)で動かすので、まともに走らないというか相当非力なんだろうな、と思っていた。
いや、意外と走れる。
出発後程なくして幹線道路に出たのだが、普通のクルマと同じような感じに走れる。規格外のデカい空間が、いつもと同じように移動する。
あれ、これターボか?と思って車検証とにらめっこしたが、ノンターボ。
ただやっぱり重さは感じるというか、発進時はスピード出るまでアクセルを踏み込んで、その後徐々に緩めてくような踏み方で乗るのが一番スムーズに走れた。
ちなみに、アクセルを踏むたびにヒューンというターボみたいな音がする。
体感、低圧ターボみたいな印象だったw
アクセルは電子スロットルだが、かなりダルめに設定してある印象。
ただこの手のクルマでアクセルが機敏な反応だと逆に危なさそうだし、これはこれで合ってる設定なんじゃないかと思った。
体感上、一般道で~70km/hくらいで流すのは意外と快適。
ただ、イキって飛ばそうとかは考えないほうが良い。
ちなみにブレーキに関しては、ちゃんと止まるし、抜きやすいし、扱いやすいブレーキだったと思う。
同じダイハツ製造車でも、ルーミーだとブレーキ弱かった印象があるので、軽と普通車で変わるものなのかな?とちょっと疑問に感じた。
さて、気になったので、ウェイクで山道に特攻してみた。
頭おかしいのだが要所要所でSモードで引っ張ってみたりと色々検証。
足回りが固めだからか、あまりロールしない。
けっこう踏ん張るというか、やっぱり思ったより走る。
ただ、その分路面の振動とかはけっこうダイレクトに来る印象。
空走状態でカーブに突っ込むとグラっと来るので、アクセル開けて踏ん張らせつつ切り込んでいくと意外と安定して走れた。
たぶんこれで足が柔らかめだったら相当危なっかしいクルマになっていたと思う。タントと比べても足は固めに設定してある気がする。
よほど急なカーブでなければ、ある程度の上りは問題ないと思う。
ただ、下りのカーブは相当苦手。
割と急めな下りカーブだと、かなり減速していないと重心が持っていかれそうになる。SレンジやBレンジに入れてエンジンブレーキで減速しようとしても、車重のせいなのか思ったより減速しない。
峠道の下りを走る際は、エンジンブレーキとフットブレーキをうまく併用してゆっくりめに下ったほうが安全に走れるだろう。
ていうかそもそもの話、不安定感こそないものの、やっぱり怖い。
意外と走れてしまうが、限界性能自体は低いと思うので、過信して飛ばすと一気に限界を超えてしまう気がする。
山道特攻後、高速にも連れて行ってみた。
乗車日はかなりの強風で、背が高いウェイク的には最悪な条件である。
これがなんというか、思ったより走らない。
80km/hまではなんとか出るのだが、それ以降の速度域での再加速や登坂車線での加速はだいぶパワーを要する。かなりアクセルを踏んでもギリギリ。
ただ、一度速度が出てしまえば意外と走れるような印象はあった。
でも正直、100km/h以上は厳しい。というか怖い。
速度を維持しようとすると当然アクセルを踏むことになる。
この状態での車内はエンジン音100%。
「ガンバレーーーーーーーーーーーいやーキツいっす(素)」と応援しながら乗っていたが、アトラクション的な面白さはあるものの普段から乗るにはちょっと疲れそうだなと思った。
普段から高速で長距離移動する人にはあまりオススメできない。
あとボディ形状的に仕方ないのだが、横風を受けるとかなりフラフラする。
正直、山道でのロールよりも、横風のほうが怖かった。
にしても、異次元のように広い
内装をさらに引きで撮ってみた。
やっぱり、大空間。異次元の広さである。
普通の軽の室内は、いくら引いて撮ってもこうはならないだろう。
これだけでも、唯一無二のアドバンテージだ。
ただ、慣れないうちは運転席から前に巨大な空間がある感じがして違和感が凄かった。
デカいミニバンとも違う、おそらくウェイクにしかない特異な感触。
慣れれば気にならなくなるのだが、逆にウェイクを返却してから自分のクルマに戻った時の違和感は相当なものだった。
このクルマを気に入ったら、乗り替え先がないのでは?
いいところ
軽として最大限の広さを確保しつつ、普段乗る分にはほぼ問題ない性能が確保されているところ。
同じダイハツ製造のルーミーにも乗ったことがあるが、正直ウェイクのほうが快適だった。
直線基調のデザイン。グレードにもよるだろうが、なんというかモビリオスパイクやフリードスパイクの素のグレードのようなシンプル感というか道具感があって個人的には好みなデザインだった。
制限のある軽の規格の中で広さに全振りするとある程度妥協しなければならない面も多くなると思うが、ウェイクは普通に乗る分には不満を感じないくらい取捨選択が上手だと思う。
街乗りする分にはかなり良いというか、普段の足として欲しいと思った。
わるいところ、微妙なところ
理論上の軽の大きさの最大値を極めて作ったようなクルマなので、そのしわ寄せが所々にあるところ。
山道へドライブに行く、高速で遠出したりするなどといった普通車と同じような使い方をしようとすると少しばかり窮屈な思いをする。
それを許せる人だけが乗っていいクルマだ。
ルームミラーがかなり手前(乗員寄り)のほうにある。
視線の延長線上にないので、後方確認時に視線の移動距離が大きくなる。
ハイト軽ワゴンは割とみんなこの傾向かもしれないが、ウェイクは車体の形状からしても特に顕著だと思う。
ただ、これ以上ルームミラーを前方(フロント寄り)に配置すると今度は運転席から届かなくなるので、ある意味仕方ない気もする。
あと気になったのは、グローブボックスが小さいこと。車検証入れを入れるだけでかなり容量が圧迫されるような大きさだった (今回の個体は、カーシェアのキーボックスがグローブボックス内にあったので、車検証入れはその上のスペースに置かれていた)
この辺りも、若干無理したパッケージングのしわ寄せが来ていると思う。
ちなみに、リアハッチゲートは巨大。
これはたぶん後ろがほぼ直角な形状だからこうなるのだろう。全長は短いのでなんとかなるとは思うが、全開にするにはちょっと気を使うかも。
あと細かいところとして、ダッシュボードの立て付けが甘いのかガタガタ言っていたり、思ったより後ろのピラーが太いので左後方確認時は少し不安に感じたり、センターメーターが真正面を向いているので速度が微妙に読めなかったり、ドアミラーが少し小さく感じたり。この辺りは個体差や各個人の考えもあると思うので一応メモ程度に記録しておく。
得意不得意を見つけて、理解して乗るべきクルマ
なかなかに刺激的なクルマだった。
何年か前にルーミーに乗った時に感じた"走らなさ"
ウェイクはそれのもっと遅いver.なんだろうな、くらいに思っていた。
ところが現実は違って、ルーミーよりスペック的には厳しいもののなぜか走る。メカニズムはよく分からないが思ったより走る。
たぶん、このクルマは相当力を入れて開発されたんじゃないかと思う。
タントがあるじゃないか。でもそれじゃダメだ。もっと広くしないとダメなんだ。でも重くてまったく走らないクルマにしては意味がない。エンジンもミッションにも手を入れよう。
(一部推測だが、タントと比べると出力値や最大トルクの回転数が違うので、何かしら手が加えられているのは間違いないと思う)
こうした結果、ウェイクというクルマができた。
その努力が結ばれたかというと・・・結果は微妙に終わった。
他の人の試乗した感想を見てみても、評価は五分五分。
走らないと書いている人もいれば、そこそこ走ると書いている人もいる。
僕個人の感想だが、このクルマはオールラウンダーではない。
誉め言葉ではない。
でも、人間だってそうだ。誰しも得意不得意がある。
それがクルマにあったって、おかしくはない話だろう。
そもそもの話、軽自動車の規格でこのパッケージングを備えていることが凄いのだ。走りや安定性に関してケチをつけるのは正直ナンセンスだと思う。
こんな試乗記を書いた人間の言えることではないが。
ウェイクというクルマは、軽自動車の規格の中で、限界に近いサイズ効率を求めた。
その結果、横風や高速走行を苦手とした。
そういうクルマなんだ。そういう奴なんだ。
基本的に苦手な場面は避ける。
人間だって、嫌なことからは逃げていいんだから。
家電量販店に行って、家電を爆買いする。
スーパーに行って、1週間分の食料を買い込む。
仲の良い友達4人を乗せて、温泉に行く。
カメラの機材と布団を積み込んで、現地で車中泊して撮影に臨む。
このクルマが輝ける場面は、いくらでもある。
オーナーが、一緒に見つけていく。
そんな思いで、ともに過ごせるようなクルマだった。
思わぬ長編になりました。
最後までご覧いただきありがとうございました!