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無邪気と混濁

賢く愚かな私たちは、
大概自分の都合のいいように物事を解釈できるから、
あの子が泣いてる理由もあの子が笑ってる理由も、
自分の世界の中の、
簡単入手可能素材だけで単純完結させる。
解釈なんて自由だけど。
ただ私はあなたのことだけは、
ほんの少しも違わずに解釈していたい。
ウサギのヒゲほども違わずに。
都合のいいように喜んだり都合のいいように涙したりしたくない。
あなたを私のエゴの世界に巻き込んだりしない。

あなたの肩を濡らす雨の色とか、
眼差しの先の揺れる憧憬とか、
唇が取りこぼした言葉の温度とか、
指先が紡ぐ音の辿り着く幕間とか。

湿度、関節、寝癖の具合。
だから私はあなたをすっかりわかったふりをしながら誤解していたい。
ウサギが鼻をピクピクさせるみたいに無邪気に。
可愛いよね、ウサギって。

背骨が軋む。






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