並んで歩く、すれ違う
2023年11月20日(月) 天気:曇り
今日、何人と並んで歩き、すれ違っただろうか。
先日、銀だこのゆず明太を食べたいと思い(実際は、SNSでお笑い芸人ラランドとのコラボ商品を目にして気になっていたのだが、限定店舗のみの販売であることを知り、残念に思いながらも、たこ焼き欲がむしろ高まってしまった)、某ショッピングモール内を歩いていると、幼稚園児くらいの子が後ろから走ってきた。
僕を追い抜くだろうと思い、向かいから歩いてくるやや露出が多い女性2人組に声をかけたいのではないことを理解してもらえるよう、視線や動き方に配慮しながら、半身分だけ右へ寄った。
ところが、たまたま僕の歩幅がその男の子のちょうど2倍くらいあって、たまたま彼が僕の聴いていたSaucy Dogの『あぁ、もう。』(bpm=110くらい)を16ビートで刻むピッチで走るので、ふたりは並走する形になってしまった。
若干ペースを上げることもできるが、彼を突き放すのは寂しい気がして、映画館の壁面に並べられたポスターを眺めるふりをし、速度を落とした。
BLACK FRIDAYを宣伝しているかのような大量の買い物を乗せたカートが僕に追いつく頃、お母さんかお祖母ちゃんが言った。
「りっくん、ダメって言ってるでしょ!」
奇しくも、僕の名前はリクトだ。りっくんと呼ばれたりもする。
ごめんなさい。何がダメでしたか…。
*
夜中、部屋着にメガネ姿で町内のゴミ捨て場へ。きっとすれ違った人から見れば、僕の中にある”陰”の部分だけを残らず集めたみたいな暗さだろう。
明日の朝、8時までに起きる自信がないので仕方ない。
深夜0時過ぎ、村田沙耶香さんが「切った爪のかけら」と表現したような細長い月が雨上がりの夜の静けさを強調している。
「お疲れ様です。ありがとうございました!」
その時間にしてはハキハキとした女の子の挨拶が前の方から聞こえて、「じゃあ」と軽く手を振り自転車に乗る男子大学生が微笑んでいた。十数メートル進んだ彼は、微笑むというより安堵というか、幸せを噛み締めているように見えた。
ベースを担いでいたから軽音部だろうな。
女の子は同じ楽器かバンドを組んでいる後輩で、遅くまで一緒に練習して、履修単位やらゼミやらの相談にも乗って、好きな映画の話で思いがけず盛り上がったりして、いい感じの雰囲気なんだろうな。そろそろクリスマスも近いし、いいな。
張り切りすぎて高級なディナーを予約しないように気をつけたほうがいいぞ。でもいつものラーメン屋の帰りだと、「もっと雰囲気がほしかった」とか後々いわれる可能性もあるぞ。
あとはプロポーズが31日だと、そんなの気にしないとは言いながらも、年に7回になってしまった記念日を寂しく感じるかもしれないから考えた方がいいぞ。
好き勝手に、望んでいるかも分からない他人の幸せを願って(有効なアドバイスは何一つできないことも強調しなければならない)暗闇に消える僕の姿は、恋する彼にとっては単なる背景であって。
これを書く僕にとっては、彼らは背景というよりは映画のエキストラみたいな、必ずしもいないと成立しないという訳ではないが、存在が僅かながらもストーリーに影響を与えている、そんなところだ。
さて明日は、何人と並んで歩き、すれ違うだろうか。