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この世は美術で溢れている ーカルダー展を見てー
コーヒーを飲み歩いていると、素敵なお店にたくさん出会う。
そして、素敵なお店というのは味が美味しいだけでなく、美しい空間を伴っていることが多い。
良いものに出会った時、いかにその良さに反応できるかは、実は味わう側の感受性も試されている…気がする。
そんな感受性を刺激してくれそうな展覧会を見つけ、鍛えるために麻布台ヒルズギャラリーまで足を運んだ。
今回の主役であるアレクサンダー・カルダー(1898〜1976)はアメリカの彫刻家で、機械工学を学びエンジニアを経験した後に芸術家へ転身するという経歴を持つ。
その経験を活かし、「モビール」という素材を糸や棒で吊るして、バランスを取って安定させる彫刻を芸術作品へ昇華させた。
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今でこそ装飾品として流行の兆しを見せるモビールだが、19世紀前半の時点で作品として成立させた彼の発想には驚かされるばかりだ。
モビール作品の目の前に立つと、作品たちは空気に揺られ実はゆっくりと動いていることに気づく。
しかしそれは、足を止めて作品と向き合わなければ素通りできてしまうくらいゆったりと、しかし確実に動いている。
その時間は、公園のベンチに座ってゆったりと過ごす、あの癒しの時間に似ていた。
その後も観察を続けるとモビールの揺らぎは、まさに木に見えてくる。
のそのそと、しかし絶妙なバランスを取りながら、そこに存在を保っている。
モビールを構成する素材は金属や板、ガラスなど我々が日常的に触れるものでできている。
カルダーは身の回りのもので、自然を生み出しているのだ。
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それはまるで、雲から今にも飛び出そうとする雨粒の生まれる瞬間のようだ。
もう一点、貴重な発見をさせてくれた。
作品たちが動いていることを一番最初に分からせてくれたのは、その作品が落とす「影」が揺らめいていることからだった。
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影の発生はなんら作品それ自体ではなく、この展覧会における照明の方の仕事によるものだ。
しかしその作品の理解を深めるのに、作品自体から一歩離れたところからの目線が快く手助けをしてくれるという経験に、この作品の奥深さを感じずにはいれなかった。
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普段何かに追われ忙しく生活をすると、周りのものは「いつものモノ」でそれ以上でもそれ以下でもなく感じて生活してしまうことは良くあることだと思う。
しかし、カルダー作品を見るようにふと立ち止まって見れば、いつものモノにも美しさを感じられるかもしれない。
モノと空間、そして人を繋げてくれるカルダーの世界。
ほんの30分もあれば回れてしまう規模感ながら、ゆったり向き合おうと思えばいくらでもいれてしまう。
そんな自由な散歩に、あなたも出かけてみてはいかがでしょうか。
カルダー:そよぐ、感じる、日本
会期:2024年 5月30日〜9月6日(金)
会場:麻布台ヒルズギャラリー
開館時間:
月/火/水/木/日
10:00-18:00(最終入館 17:30)
金/土/祝前日
10:00-19:00(最終入館 18:30)
アクセス:東京メトロ日比谷線「神谷町駅」5 番出口直結