時代や世代で、不良少年も草食男子も増えたり減ったりしない!
日本から不良少年が激減した?
そんなことを恥ずかしげもなくメディア上で書いている人がいたので、事実を書いておきましょう。たぶん、その御仁は、警察の発表した警察庁の「少年の補導および保護の概況」という資料などを斜め読みして、わかったつもりになってしまったんでしょう。仮にも研究員とかいう肩書ならば、データは単体で表層的に見るのではなく、複層的に見たうえで解釈してもらいたいものです。
警察庁の資料はこれです。
まず、少年の刑法犯の長期推移。
確かに下がってますね~。
続いて、少年触法犯の推移。触法というのは簡単に言えば補導された少年ということ。
こちらも減ってます。
いずれも戦後一番多かったのが1980年代の頭です。この頃何があったか覚えてますか?
これです。
1982年に出版され、300万部も売れました。その後ドラマや映画などになりまくった不良少女のお話です。俳優で、現在はいいパパ役を演じている宇梶剛士が、暴走族ブラックエンペラーの7代目総長をやっていた頃です。横浜銀蝿というバンドが1980年にデビューして大人気。ドラマ「スクール☆ウォーズ」の原作となったノンフィクション本が出版されたのも1981年です。漫画『ビー・バップ・ハイスクール』の連載開始は1983年。
そういうエピソードも聞くと、「ああ、なるほど。あの当時は不良が多かったんだねえ」と納得してしまうでしょう。
当時は、不良は不良らしいファッションだったし、わかりやすかった。
不良少年の数が多かったのはその通りですが、そもそもガキの数も多かった。第二次ベビーブーム以降の人口増でこの頃学校のクラス人数も滅茶苦茶多かった。絶対数が多けりゃいろいろあるさ。
でも、暴走族ってもうほとんど見ないよね。
そう思います?
同じ警察庁の資料のこんなのがあります。暴走族における少年の割合です。
ほぼ変わっていません。減ったのは成人の暴走族であって、少年の暴走族の数は10年以上前と同じなんです。意外じゃないですか?僕は意外でした。最近、ゴッドファーザーのクラクション聞いたことないし…。
それと、少年の刑法犯、触法犯の数と人口比が減っているのはその通りですが、では成人の刑法犯の人口比と比べてみましょう。
減ったとはいえ、それで成人の犯罪率とやっと同レベルになっただけです。というか、刑法犯に関して言えば、今でさえ成人の倍以上います。そもそも多すぎたともいえるわけで、少年の部分だけを取り出して減ったと喜べる話じゃないんです。
さらに、犯罪種別で見てください。
窃盗犯とかはここ10年減ってもいないし、粗暴犯や凶悪犯はむしろ増えています。万引きとか自転車泥棒とか小さい犯罪は減っているんですが、こうした大きいものはたいして変わっていないわけです。
殺人と自転車泥棒も全体の犯行数としては1件ですが、決して同じものじゃない。
要は、少年犯罪が時代とともに減っているわけじゃないってことですよ。わかりやすい見た目の不良がいなくなったからといって、本質的な意味もの不良がいなくなったわけじゃない。大体、ビーバップが流行れば不良じゃなくてもああいう格好はするし、ラッパーが流行ればラッパーじゃなくても恰好を真似るのと一緒。かわいいもんですよ。
北九州の成人式の彼らなんか、みんないい子じゃない(知らんけど)。
本当にやべえ奴は、悪目立ちしない普通の恰好をしているもんだ。
そもそもの人口が減っているから犯罪件数が減っているだけであって、犯罪をやる比率は変わっていないし、凶悪犯は増えているというのが事実です。
データを読むってのはこういうことを言います。
そして、実はもうひとつ傾向があって、知能犯が増えているんです。
いわゆる振り込め詐欺もここに該当しますが、今後仮想通貨の流通なんかと連動してこういった犯罪も増えていくでしょう。
よく考えてね。
バイクがなかった時代に暴走族はなかった。バイクが少年たちのオモチャになったから、暴走族という遊びが生まれたにすぎない。スマホやネットの普及により、これからはそこが少年犯罪のフィールドになるんです。
時代が変わって少年犯罪が減ったとか言わないように。恥ずかしいから。
もっと最悪なのは、「スマホを与えられたから、少年たちが不良じゃなくなった」とかの論説は稚拙すぎて呆れるから。スマホが新たな不良少年を生み出すのです。
それから逆もね。最近の少年少女は親との仲が良く、反抗しなくなったとかいう人するんだけど、それも大嘘。家庭内暴力数は過去最高に増えている。そして、昔だっさて親と仲のいい息子・娘はいた。
変わらないんだよ。時代とか世代なんかじゃ! 不良も減っていなければ、草食も増えていない。
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