10月26日たまアリ米津玄師ライブTOUR「変身」記憶力限界レポート!<後編>
まずは、11曲目までをレポートした、こちらの<前編>をお読みいただき、「♡スキ」をポチってから後編へ🙏
ステージレイアウトもこちらに掲載してあります↓
ライブ中盤、率直で誠実な想いを語った長いMCの最後はこう締め括られた。
空間を埋め尽くす拍手喝采を、鋭利なギターサウンドが切り裂いていく。
12:ひまわり
ツアーファイナルで初めて「もういない親友のために」と明かした曲。この曲のBPMは93。テンポ的にはさほど速いわけではないのに、倍速くらいに感じるパフォーマンスだった。
明滅する黄色っぽい照明の中、ギターを掻き鳴らしながら、身体をくの字に曲げ、激しく頭を振る米津。怒りにでも変換しなければ崩れ落ちてしまいそうな悲しみを、天に届かんばかりに叫ぶ。
物凄いスピード感で動き回るライト。バンドメンバーの演奏にも熱が入る。
「♪日陰に咲いたひまわりが今も夏を」の後の「待っている↓」は、音源では下に下がるが、この日はラストのフレーズだけ「待ってい↑る↑」と、上に駆け上がっていくメロディにアレンジされていた。
13:アンビリーバーズ
イントロと同時に花道のエッジやセンタースクリーンに赤・白・青のライン状の光が凄まじい勢いで流れるように動く。まるでハイウエイを疾走する車のライトのようだ。
ギターをハンドマイクに持ち替えた米津が、腕を振り上げ「楽しんでいこうゼェ!!!!」と叫び、ぴょんぴょんとジャンプすると、会場が焼けるような熱気を帯びる。
エレクトリックなサウンドと光の競演。パワーアップした歌声には、確かな自信を持ってみんなを牽引していくような強度がある。サブステージへと進み、「♪君が僕を見つめてくれるなら」で観客をグルっと指さし、自身もノリノリで楽しそうだ。
メインステージに戻る途中、花道でパプリカ演出用の花を拾うが、客席に投げることもなくずっと手に持ったまま。何のために拾ったのか意味不明w
気づくとトリコロールのライトがオレンジ、グリーン、白に変化していた。
14:ゴーゴー幽霊船
「アンビリーバーズ」の長めのアウトロで再びギターを手にし、息つく間もなく「これでもか!」と畳み掛けるように「ゴーゴー幽霊船」のイントロが始まる。自然と会場から手拍子が湧き上がる。
「ワンッ!ツー!スリーッ!」
気合たっぷりの掛け声に熱狂するオーディエンス。
「♪あ〜んまり急にわ〜らうのでぇえ〜」、ライブ特有の語尾を震わせるような歌い方にも熱がこもっている。ギターを弾きながら歌う米津はスタンドマイクの前から動かないが、縦横無尽に駆け巡る白いムービングライトと観客の興奮で全体が踊り狂っているように見える。
声の出せるライブなら全員が叫んだであろう「全部忘れて、ワァ!ワァ!ワァ!ワァ!」の部分は、ファンの想いを代弁するように腹の底から声を出していた。
センタースクリーンに現れた大きなデジタル数字が間奏の1.2.3.4.5.6.7.8!に合わせてとカウントアップする。最後の8は「♪エイッ↑」と思い切り跳ねるように発音。
「♪三千年の恨み」に入る前の「♪サッ!サッ!サッ!」。肩を上下させながらのシャウトは、まだボカロっぽかった10年前と同じ曲とは思えないほど、フィジカルの強さを感じさせた。
15:爱丽丝
拍手を挟んで、爱丽丝。ファイナルではこの曲で常田大希が登場し、顔でギターを弾きまくったらしいが、この日のギターソロはシーケンス(音源同期)対応っぽかった。
テンポが早くテンションの高い曲が続いて少々疲れたのか、ピッチが少しフラット(♭)気味になっているように感じた。地声で歌うサビの高音も苦しそうだ。
華やかな極彩色の照明は2019年のツアー「脊椎がオパールになる頃」のライティングを彷彿とさせる。MVがない爱丽丝の酩酊観を視覚的に楽しむには、ダンサーたちの盛り上げとともに、このライティングの貢献度が大きい。
最後、「♪踊ろうぜもっとぉ〜↓」はヘベレケで倒れ込むような歌い方でこの曲のベロベロな世界観を表現していた。
16:ピースサイン
ここまでのアップチューン4曲がウォーミングアップに感じるほど、ピースサインの盛り上がりは凄まじいものがあった。冒頭「オーッオ、オーォオーッオ〜」を聴くや否や無数のピースサインを掲げるオーディエンス。米津も手を大きく挙げ会場を見渡す。
この2年半でマックスにまで溜め込まれたエネルギーが一気に爆発したように銀テが発射される。歯止めの効かなくなった歓喜がキラキラと輝きながら観客の頭上に降り注いでいく。それを掴み取ろうとさらに高く手を伸ばす人々。
このジャケットをイメージしたのか、くっきりとした赤、青、白の幅のあるフロア照明で、ステージが縁取られている。
これぞ、少年ジャンプの愛・勇気・友情だと言わんばかりに、スクリーンには漫画のコマ割りのようにバンドメンバーと米津が配置されている。
曲中、センタースクリーンには「ニンマリくん」とか「ピースくん」と呼ばれているキャラの線画がオーバーラップする。
コーラス部はベースの須藤優も歌い、楽しそうに演奏するサポートメンバーとの一体感も伝わってくる。それが会場中に伝播し、運命共同体のような仲間意識を生み出していた。
17:KICK BACK
ギターをハンドマイクに持ち替え、高揚した口調で勢いよく言い放つと、メインステージ前方に一列にセッティングされた松明台に一斉に炎が上がる。
真っ赤なライティングでステージが血飛沫を浴びたようになり、米津の周りをジャケットを脱ぎ捨てたダンサーが取り囲む。ベースが唸りをあげるイントロで、ダンサーたちと一緒に腕をだらりと下げ前屈姿勢でゾンビのように小刻みに身体を揺らす。
「♪ランドリー今日はガラ空きで〜」からの声は音源と同じように、チェーンソーのようなザラザラした質感に加工されている。「チェンソーマン」の主題歌にふさわしい、頭のネジがぶっ飛んだような荒々しい縦ノリ。
2コーラス目からは長い持ち手がついた小型ビデオカメラを取り出し、バンドメンバーやダンサーたちを撮りながら歌う。その映像がスクリーンで目まぐるしく暴走し三半規管がヤラれそうだ。
脚を開いてカメラをローアングルに構え、思い切り上体を斜めに傾けながら歌うと、トロミ素材のシャツが胸元から肩が露出するほど大きくズレる。
かと思えば、静かなスローパートでは、天使が昇天していくようなピュアな白い光が真っ直ぐに天井から降り注ぐ。だが、そこにはどこか嵐の前のような不気味さが漂っていた。案の定、、、
「♪あな〜たのぉ、そ〜の腕のぉなぁ”〜かぁ”あ”あ”〜!!!!!」
喉がブチ切れるような絶叫を合図に、知性が極限まで堕ちたような、米津のギラついた両眼が画面いっぱいに映し出される。レンズを自分に向け自撮りしているのだ。
狂気を孕んだヤベぇ笑みを浮かべ、頑なに隠してきた右目が露出するのも厭わず、カメラを顔の前で前後に激しく動かす。挙げ句の果てにレンズにキスするように舌を出し大画面を凌辱する。
最後の「♪努力・未来・A BEAUTIFUL STAR」の声は完全に常軌を逸していた。
狂乱のラストスパートは体感時間3秒くらいで終わり、あっという間に米津とダンサーが捌け、いつの間にかバンドメンバーのセリも下がっていた。
18:死神(アンコール)
灯りが落ち、誰もいなくなったステージに向かい、アンコールを待つ手拍子が続く。両サイドのスクリーンに「HENSHIN」のロゴが出ている。紫色の座布団がメインステージセンターにセットされる。
約5分40秒後、死神のイントロとともに裸足の米津が上手からゆっくりと歩いてくる。座布団に膝をハの字に開くようにして正座し両手をついてお辞儀。
センタースクリーンには蝋燭の火が細い煙を立てながら頼りなげに揺れる映像。寄席の舞台のように木目調の茶色いフロアライトがステージの周囲を囲む。仄暗い中で、細いスポットライトが米津を上から照らし、顔に不穏な影ができている。
「♪アジャラカモクレンテケレッツのバァッー」のあとパンパンと手を打つ仕草が会場のクラップと重なる。「♪どうせ俺らの仲間入り」の後の笑い声は「ひゃっひゃひゃ」よりもハッキリしていて「あっはっひゃはっ」に近かった。
曲終わりにバタっと前に倒れ込み、ステージは暗転。
19:ゆめうつつ(アンコール)
漂うようなイントロの最中、立ち上がった米津は暗闇に紛れ、膝から下を左右交互にピンっと蹴り出してはプルプルと震わせている。足が痺れていたのかもしれない。その後、両手を挙げ伸びをしているのが見えた。
歌い出しからソフトで優しい声が、淡いパープルのスモークとともにふんわりと会場を包んでいく。メインステージに近い花道から小さなシャボン玉が無数に放たれていく。夢のような現のような幻想的な空間。
「♪ためらわず歩いてくキミの元へ」の歌詞そのままに、裸足のままメインステージを左右の端まで歩きながら歌う。米津が近づいてくるとその近辺の観客が必死に手を振ってるのが見える。花道を渡りサブステージの先端へ。ファンの近くへ近くへと歩いていく。
花道から戻りメインステージに上がる直前、「♪疲れたら言ってよ、話をしよぉお・お・お・おぅ」は「お」をひとつづつ区切るように、弾むように歌っていた。
音源よりも短めのアウトロがブチっと途切れ暗転。
MC4
ちょっとおどけたテンションでメンバー紹介が始まるが、軽やかにミスる。
ギターの中島宏士にMCを丸投げし、後方に下がり段差に座りフットカバー型の黒い靴下をパタパタしながらのんびりと履いている。
元気いっぱいの笑顔で「ありがとう!ヤーヤーみんなぁ元気ぃ?!」と飛び出してくる中ちゃん。米津のライブに初めて来た人に挙手を求める。3〜4割くらいの手が挙がる。
と言いながら、ライブの感想を客に尋ねるばかりでなかなか自己紹介をしない。靴を履き終えた米津が戻ってきて「ニヤニヤすんなよっ!w」とツッコミを入れる。漫才か?
やっと「ヨネ、ちょっとセンターごめん、エヘッ」と米津の前に出て「僕が米津玄師の幼なじみ、スーパーギタリストの中ちゃんです!!よろしくぅ!!!!」とちょっと噛みながら両手を上げて自己紹介。
堀が合いの手のようにドラムを叩き、米津は半笑いでこう言った。
照れる中ちゃん。
そこからしばし、埼玉が久しぶりだの大した思い出がないだの米津とチンタラ喋る。幼なじみのチル飲みを覗き見しているような感じ。
ふと思い出したように米津が「埼玉出身ですよね?」と須藤に向かって振り返る。
須「地元です。ここで俺、成人式やったし」
中「へ?埼玉の人ってここで成人式やるんすか?」
米「うちらなんかしょぼくれた公民館なんだけど」
中「そうそうそう、すごくない?
アリーナで成人式って」
米「やっぱ都会っ子は違うね」
埼玉が都会かどうかは別にして、小学校4年生からの幼なじみがサポートメンバーにいることで生まれるこのグダグダな時間を、米津はとてもリラックスして楽しんでいるようだ。
米「中ちゃん?行かなくていいの?」
ワイヤレスマイクを持ってモジモジする中ちゃん。
米「ちょっと今から中ちゃんがそっちにいくんで、あたたかく迎えてください」
と、米津が観客にお願いすると「いいのぉ〜?ヨネー?やったー!」と飛び跳ねる中ちゃん。
米「いいよ、、、(笑)
行けっ!!中島ぁ〜!!!!」
米津の大声に後押しされ、踊りながら花道に向かう中ちゃん。堀と須藤がアップビートを刻み始める。
踊りなんだか、エクササイズなんだか、よくわからない動きでサブステージまでノリノリで進んでいく中ちゃん。しゃがみ込んで笑い転げる米津。
汗だくで戻ってきた中ちゃんを迎えると、客席に向かい「いやぁもう、ありがとうございましたぁ、ほんとにねぇ」と、お母さんのように頭を下げた米津は「みんな一体何を見たのかって顔してるけどさw」と更なる笑いを喚起する。
米津と中島。2人だけにしかわからない絆。それがチラ見えするMCタイムは米津玄師ライブの名物と言ってもいいだろう。
緊張の糸が完全に緩んだのか、ダンサーチームを噛みながら紹介する。辻本知彦が米津の隣で笑顔を見せる。
さっきまでの馬鹿笑いとは打って変わって、サラっとカッコよくMCを締めた。
20:馬と鹿
ダンサーたちが、MVでも披露した組体操のような体勢のダンスを再現。それを背にした米津の情感たっぷりの歌声は、伸びやかでドラマチックだ。
2コーラス目から、米津を先頭にダンサーたちが縦1列になって花道を歩いてくる。パッと見はファッションショーのラストみたいなイメージ。だが、途中ベルトコンベアが逆回転し、歩いても歩いても前に進まない。うなだれたように歩みを止めた米津だけがスーっと後ろに下がっていく。
ダンサーも人を押しのけ先を急いだり、立ち止まったりと様々な演技をしている。再び力強く歩みを進め、サブステージにたどり着いた米津。動く歩道を巧みに使った演出は、「馬と鹿」のストーリーをくっきりと浮かび上がらせるミュージカルのようだった。
花道とサブステージに目が釘付けになりスクリーンに何が映っていたか全く記憶にない。
21:M八七
サブステージに1人残った米津。スッと顔を上げ「♪遙か空の星が〜」と歌い出すと全体がブルーの照明に。それはステージだけでなく会場全体を照らしゆっくりと動いている。
ライブレポ前編で書いた「海の幽霊」でも全体が青かったが、「海の幽霊」が海の青なら、「M八七」の青は宇宙空間からみた地球だった。
眩いスポットライトの中、猫背の米津が凛と背筋を伸ばして歌う佇まいは、彼自身が描いたシンウルトラマンのように崇高でさえある。
センタースクリーンには「STRAY SHEEP」のシンボルを思わせるクリスタルが、ホログラムのように浮かんでいる。
それがゆっくりと回転しながら割れて粉々になる。小さな破片が輝きながら飛び散る。ステージ下手に置かれた小さなミラーボールに、スペシウム光線のような強い光が当たり、客席に無数の星が降り注ぐ。スクリーンから飛び出した破片が輝いているようだ。
サビの「♪キミが望むなら」で白い光が加わり「♪ただ1人であれ」ではステージから客席に向かって強く真っ直ぐな光の筋が伸びる。正面3階席〜4階席の辺りにウルトラマンのボディの柄のように、シルバーに赤を配したウェーブ状の映像が投影されていた。
飛び散っていた破片が再び集結し元のクリスタルを形成していく。いよいよ別れの時が近づいてきた。
円形セリへと向かう米津。ラストの「♪痛みを知るただ1人であれ」では人差し指を突き出し天を指差す。そして深々と一礼し、スモークとともに地下へと消えていった。センタースクリーンには満天の星が瞬いていた。
アウトロの間にセリが完全に下がり地階に到着した米津が、思いっきり素に戻るのが見えたw。
エンディング映像
左右のスクリーンにエレベーターに乗ったNIGI-chanが映っている。ポーンと言う到着音とともに扉が開き、再び車に乗り込む。カーラジオのスィッチを入れるとETAが流れてくる。
居眠りしている警備員の横をすり抜け、夜の街への車を走らせるNIGI-chan。雨模様なのか車窓から見える夜景が滲んでいる。センタースクリーンにはこのライブに関わった全ての人たちの名前が延々と流れている。
ライティングやLEDだけでも大勢のスタッフが関わっているのがわかる。ボイストレーナーの名もあった。本人曰く「どこに出しても恥ずかしくない米津玄師」の歌声は厳しいトレーニングの賜物だったのかもしれない。
クリエイティブディレクターは、POP SONGをフィーチャしたSONY PLAY STATIONのCMを手掛けた奥山雄太。そして、最後にProduced by 米津玄師の文字。
極上のエンターテイメントはこうして幕を閉じた。
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