米津玄師の新曲”PaleBlue”「ずっと」の考察
「米津玄師の歌詞を因数分解して分かったこと」<第23章>
*プロローグと第1章〜22章は下記マガジンでご覧ください。↓
新曲「PaleBlue」のサビはどこ?
「リコカツ」の初回で3分15秒ほどO.Aされた曲の構成はこうだ。これはほぼフルに近いと思う。(5/22にフル解禁され、2コーラス目があることが判明したため歌詞を追記)
イントロ:なし(ブレス音のみ)
Dメロ 「ずっと〜」
(転調)
Aメロ 「これでさよなら〜」
Bメロ 「それは水もやらず
枯れたエーデルワイス〜」
(転調)
Cメロ 「あなたが見据える未来に〜」
Dメロ 「ずっと〜」
Aメロ 「晴れた日の朝〜」
Bメロ 「それはひどく丈のずれた
オートクチュール〜」
(転調)
Cメロ 「どれだけ生まれ変わろうと〜」
Dメロ 「ずっと〜」
(転拍子)
Eメロ 「あなたの腕 胸の中強く〜」
D'メロ 「ずっと〜」
どこを切り取ってもキャッチーでサビレベルの強度がある。構成上はCメロがサビでDメロが後サビ、Eメロが大サビなのかもしれないが、いずれにせよ、この曲のキラーフレーズは繰り返される「ずっと」だと思う。
「これっきり、これっきり、もう、これっきりですか?」に近い昭和歌謡的なインパクトだ。
「ずっと」の本来の意味
辞書を引くと「ずっと」の意味は下記の順で並んでいる。
日常会話でよく使うのは、持続・継続を意味する「2」(いつも/永遠に/初めから/以前から/長い間)ではないだろうか。
米津は今まで16曲で「ずっと」と言う言葉を使用しているが、そのすべてが「2」の意味である。
<飛燕>
ずっと 風が吹いていた
ずっと 羽ばたいていた
<LOSER>
ずっと前から聞こえてた
<フローライト>
確かめていたんだよ僕らは
ずっと目には見えないものを
<再上映>
彼の台詞がずっと頭で響く
<あたしはゆうれい>
変わらずにずっとあなたが好きよ
<Undercover>
僕はずっと生きていくのか
<メトロノーム>
ずっと叶わない思いばかりを
募らせていては
<シンデレラグレイ>
12時を越えてずっと消えないものが
あるなんて
<アイネクライネ>
それからずっと探していたんだ
<ゴーゴー幽霊船>
ずっと病欠のセブンティーン
<ViVi>
悲しく飲み込んだ言葉
ずっと後についてきた
<トイパトリオット>
ずっと傷つけてきた
<恋と病熱>
ずっと微熱みたいに纏わりついて
<ポッピンアパシー>
ずっと目を塞いでいた
ずっと馬鹿馬鹿しいことばっかり
<懺悔の街>
ずっと前の落とし物を探しまわって
<迷える羊>
誰かを救うその日を
待っているよ ずっと
ただし、”トイパトリオット”の中に出てくるもう一つの「ずっと」は「1」の意味だ。つまり「遠く」=距離の程度を表しており「遥か遠くの」と言う意味になる。↓
トイパトリオット
ずっと遠くの斜陽から
君の姿を見つけたよ
これを踏まえて
"Pale Blue"の「ずっと」を検証した
Pale Blueの「ずっと」は時制とともに3つに変化していく。
第1ポイント
冒頭の「ずっと」に続くのは、過去形あるいは過去完了形の「恋をしていた」だ。別れの場面で「綺麗なさようならしましょう」「こんなつまらない映画はもうおしまい」とさらっとと水に流す大人の振る舞いをしようとしている。
しかし「エンドロールの途中」で気持ちが乱れ、「あなたが見据えた未来に私も居たい!」と叫ぶ。(5/22追記)さらに「エピローグの台詞が言えなくなった」。
何故か?
そのあとの「私 あなたに恋をした」が、第1のポイントだ。
別れの間際で、また「恋をした」、現在完了形である。花束と一緒に改めて恋に落ちたのだ。
<追記4/30>
「恋に落ちた瞬間」を描いたというPaleBlueのジャケットイラスト。これは出会いの瞬間ではなく、また「恋をした」瞬間ではないだろうか?
第2ポイント
2つ目はこの後に続く「ずっと恋をしていた」だ。冒頭のそれとは意味合いが違う。過去形が、”私はあなたのことが継続的に好きで、今もやっぱり好きなんだ”と言う現在完了進行形の再認識に変わっている。
そしてEメロで、「行かないで。ここにいて」と素直な気持ちをぶつけるのだ。優しく包み込むような曲調と歌声、「強く引き合う引力」「抱きしめあった」と言う歌詞から、相手もまた同じ気持ちだったことがうかがえる。
5/21放送分の別れのシーンでは、抱擁こそしていないが、最後の握手を交わす手元アップの長いシーンがそれを物語っていた。
最も重要な3つ目のポイント
最後は「ずっと」を5回繰り返した後、「恋をしている」と現在形に変化する。数回聴いた時点では、単純にこう思っていた。
(以前から)ずっと恋をしていた
(今も) ずっと恋をしている
しかし、それだけではないと気づいた。
この「ずっと」は、辞書の「1」の意味である”段違いに/遥かに”と言う”比較による大きな差”をも秘めているのではないか?
つまり、曲中の2人は、、、
”今、以前よりも遥かに恋をしている”のだ
前記事で「Pale Blue」は雨のことでは?と書いたが、やはり結婚式スピーチの定番「雨降って地固まる」が「PaleBlue」の、そして「リコカツ」の主題なのかもしれない。
主人公の元夫は最終回でもう一度、プロポーズするのではないだろうか?
エーデルワイスの花束を持って。(5/22 追記)
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