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米津玄師 タイアップ作品への公式コメント一覧

米津玄師の曲は2024年2月までに述べ31もの映像作品やイベントなどに採用されている。すでに発表済みのNHK朝ドラで32作品目だ。

但し「Lemon」「感電」のように本来はドラマ主題歌として書かれた曲がのちに当該ドラマとは関係のないCMに使用されたこともあり、楽曲数としては30曲ということになる。

うち7曲は既存曲書き下ろしは23曲だが、5曲は本人名義ではなく他アーティストへの楽曲提供。

*NANIMONOは作詞と歌唱のみ
Lemonと感電はのちにCMにも流用された

米津は、他アーティスト名義であっても書き下ろし楽曲にはほぼすべてに
公式コメントを発表している。本記事では、どの作品にどのようなコメントをしたか?また、コメント内容の特徴やエピソードなどをまとめてみた。

記念すべき初タイアップは東京メトロCMソング

東京メトロは2013年から、女優の堀北真希を起用し「Color your days.」と銘打った企業キャンペーンを開始。初年のCMソングは松任谷由実が「Hey!girl 近くても」を書き下ろした。

翌年、2代目として大御所ユーミンの後を任されたのが、当時まだ無名に近かった米津玄師。東京メトロの先見の明はなかなかのものだと思う。

アイネクライネ

(2014/04/23リリース)

CM:東京メトロ「Color your days.」キャンペーン

堀北真希出演CMの1シーン

初タイアップ仕事に寄せたコメントは、クライアントへの敬意をきちんに伝えようとする平易な言葉が生真面目に並んでいる。真摯さとおずおずと様子を伺っているような緊張感が初々しい。

米津玄師コメント

この曲は、辛い事があっても、ちゃんと前を向いて生きていこうとする曲です。強くあるためには自分の弱さを見つめなきゃいけないと個人的に思います。毎日変わらないでいる事、前を向き続ける事は、本当に難しい事だと思いますが、それを続けているのが、東京メトロだと思い制作しました。

Billboard Japan他より


立て続けにCMに起用された3曲

翌2015年〜2016年には、ニコン、ミズノ、ホンダと大企業のCMに次々と起用されたものの、どれも書き下ろしではないため本人からの公式コメントはなかった。

Flowerwall

(2015/01/14リリース)

CM:Nikon 「D5500」

小栗旬出演CMの1シーン

ちなみに同曲が収録されたアルバム「Bremen」のCMナレーションは小栗旬が務めている。

特にコメントはなかったもののこんなクライアントサービスツイートを残している。広告担当者のガッツボーズが目に浮かぶ。


アンビリーバーズ

(2015/09/02リリース)

CM:MIZUNO「WAVE ENIGMA5」

書き下ろし曲ではないが初めてCMに曲名がクレジットされた。

MIZUNOスニーカーCMの1シーン


LOSER

(2016/09/28リリース)

CM:HONDA「JADE」

CMソングに起用されたのは楽曲リリースから約2年後。

HONDA JADE CMの1シーン


絵と音楽のダブルタイアップ!

六本木ヒルズで2016年7〜 9月まで開催された「ルーヴル美術館特別展〜ルーヴルNo.9 ~漫画、9番目の芸術~」は、「建築」「彫刻」「絵画」「音楽」「文学(詩)」「演劇」「映画」「メディア芸術」に続く9番目の芸術として漫画を展示した特別展である。

幼い頃から漫画家になりたかった米津との親和性は極めて高く、この展覧会のために音楽のみならずイラストも書(描)き下ろした。

ナンバーナイン

(2016/09/28リリース)

ルーヴル美術館特別展
『ルーヴルNo.9 ~漫画、9番目の芸術~』テーマ曲

ルーヴル美術館特別展「ルーヴルNo.9~漫画、9番目の芸術~」ポスター
特別展示された米津玄師のイラストをモチーフとしたグッズ
同イラストのCDジャケット

米津玄師コメント

こどもの頃から将来の夢は漫画家だった僕にとって、こういう形で偉大な漫画家さんたちと関われることを光栄に思います。彼らの緻密に作り上げられた作品に恥じることのないようにありたいと思っています。

「展覧会について」米津玄師 公式サイトより

【ルーヴル No.9】という今回の企画において、僕の絵が偉大な漫画家達と同じ空間に展示されるという事で、とても恐れ多かったのですが、自分なりにやれるだけの事はやろうと思い、この絵を描きました。

「自身のイラストについて」BillboardJapanより

絵に関しては”恐れ多い”、”光栄”、”恥じることのないように”などと謙虚だが、音楽に関しては溢れ出る野心を隠そうともしない堂々としたコメントを残している。↓

「ルーヴルNo.9」の中にラインナップされてるマンガ家の中にも、自分がものすごく影響を受けた人はたくさんいたし。それに対して音楽を付けるっていうのは、俺以外ありえないんじゃないかって思うくらいで。ジャストフィットする話だなというのは最初に思いました。

ナタリーより


他人の曲に歌詞を書いた唯一の曲

直木賞受賞作「何者」の映画化にあたり、音楽を担当していた中田ヤスタカが米津をゲストボーカルに迎えた主題歌「NANIMONO」。

NANIMONO*

(2016/10/05リリース)
*中田ヤスタカ名義

実写映画「何者」主題歌

映画「何者」ポスター

コメントでは他人の曲の作詞をする心情と主人公への共感を率直に語っている。

米津玄師コメント

製作途中の映像を見せてもらい、登場人物の中で圧倒的に共感したのが拓人でした。他の人が作った曲に言葉を乗せるのは初めての経験だったので不安もありましたが、映画を見終わったとき、彼の心情ならきっと歌詞にできるだろうと安心したのを憶えています。就活の経験がなくとも多くの人に共感される映画だと思います。

Billboard Japan他より


アニメ主題歌で怒涛の快進撃!

2017年のタイアップはアニメ主題歌の3連発。テレビ2作品、映画1作品だ。

「3月のライオン」と「僕のヒーローアカデミア」は原作漫画の愛読者であり、主題歌を担当できる喜びをそのまま”嬉しい”という言葉で表しているのが印象的だ。

orion

(2017/02/15リリース)

NHKアニメ「3月のライオン」ED曲

OP曲はYUKIの「さよならバイスタンダー」。

米津玄師コメント

3月のライオンを初めて読んだのが数年前、その時の第一印象は「この景色なんか見たことあるな」でした。僕は当時、舞台のひとつである月島に住んでいました。家の近所が漫画になっててとても驚いたのを憶えています。

零くんと自分の共通する部分はどこだろうか、川本家の暖かさ、眩しさを表現するにはどうしたらいいだろうか。ぐるぐる考えながら音楽を作りました。些細ではあるけれど、このお話の一部分を担えることをとても嬉しく思っています。

「3月のライオン」公式サイトより


Rockin'on.comより


ピースサイン

(2017/06/21リリース)

NTV系アニメ「僕のヒーローアカデミア 」OP曲

僕のヒーローアカデミア 予告編の1シーン

米津玄師コメント

『僕のヒーローアカデミア』の新しいオープニングテーマを歌えることをとても嬉しく思っています。ありがとうございます。憧れに向かってひた走る出久たちのまなざしを受けて感じること、学ぶべきことがたくさんありました。子供のころの自分はどうだったろう? 「ピースサイン」を作り始めてからはそういうことをよく考えます。

米津玄師公式サイトより


打上花火

(2017/8/16 リリース)
*DAOKO名義
(米津玄師ver.は2017/11/1 リリースのアルバム「Bootleg」に収録)

アニメ映画「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」主題歌

映画「「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」」ポスター

「打上花火」は米津とのデュエット曲ではあるが名義はDAOKOであり、米津玄師として初の楽曲提供となった。

(*ハチ時代にLiSAに「エスケープゲーム」という曲を提供している)LiSAの時にも”とてもいい曲”とツイートしていたが、「打上花火」も”とてもいいもの”とコメントしている。

米津玄師コメント

岩井俊二さんの原作が好きでした。夏のひとときの切なさを表現できればと思い作り始めました。DAOKOさんの歌声も相まって、とてもいいものになったと思います。これから映画がどういうものになっていくのかがとても楽しみです。

RealSound他より

上記のようにタイアップ曲の公式コメントにおいて”いい曲/いいもの”と自賛しているのは嵐の「カイト」含め提供楽曲だけなのだが、それは歌ってくれるアーティストへの感謝と気遣いなのかもしれない。

久しぶりのハチ名義曲で大炎上

砂の惑星feat.初音ミク

(2017/8/31 リリース)
*ハチ名義
(米津玄師ver.は2017/11/1 リリースのアルバム「Bootleg」に収録)

マジカルミライ 2017テーマソング

ボカロ界隈をdisった?と誤解されそうな歌詞、羅列されたボカロ曲名の使用や挑発的とも思えるコメントが物議を醸し、ネット上で大論争となった問題曲。

米津玄師コメント

ボーカロイドを取り巻く環境も僕が遊んでたころとは随分様変わりしたと思います。テーマ曲のお話を頂いたのをきっかけに、今ハチとしてミクと曲を作るのであればどういう形にするのが一番最適だろうか?と考えた結果、ああいう形になりました。

自分が見てきたボーカロイドの原風景、あのころ砂場で僕らが作り上げたお城を思い出しながら、懐かしい気持ちと新しい気持ちのちょうどいいところを探していけばそこに「砂の惑星」がありました。

マジカルミライ2017公式サイトより

燃え上がる賛否両論の炎の中に自ら飛び込みTwitterで質問や意見に丁寧に答えていた姿勢からは、自身の”故郷”への深い愛と憂いが感じられた。


安心と信頼のテーマ曲職人が爆誕!

Lemon

(2018/3/14 リリース)

TBS系ドラマ「アンナチュラル」主題歌
CM:ソフトバンク

TBSより

初のテレビドラマ主題歌であり、米津玄師の名を一気に全国区まで拡大した出世作だが、意外にも公式なコメントは残されていなかった。MA後にも曲を修正していたというエピソードもあり、コメントどころではなかったのかもしれない。

唯一、見つかったのが下記Twitterでのコメント。

米津玄師コメント

本日夜10時よりTBSにて放送されるTVドラマ「アンナチュラル」にて主題歌を担当させていただきました。「Lemon」というタイトルの新曲です。僕は一足先に見せてもらいましたが、とても素敵なドラマです放送が楽しみだー。どうか宜しくお願いします。

米津玄師 公式Twitterより

また、LemonのMVを使用し、名前の読みにくさをイジったソフトバンクのCMには本人もかなりウケたようでTwitterでもこのCMに言及している。

ソフトバンクCM
米津玄師 公式Twitterより


ここからの米津の快進撃はお茶の間の隅々まで多くの人が知ることだろう。Lemonの感動も冷めやらぬ8月には東京五輪を見据えたNHKの一大プロジェクトが動き出す。

パプリカ

(2018/8/15 リリース)
*Foorin名義
(米津玄師ver.は2019/8-9月にNHK「みんなのうた」で放送され2020/8/5リリースのアルバム「StraySheep」に収録)

NHK 2020応援ソング「東京2020公式プログラム」

NHKより

この歌って踊れる現代の童謡「パプリカ」で米津人気は遂に子供にまで到達。約5年に及んだfoorinの活動期間のみならず、幼い頃にこの曲に触れた子供たちが親となる未来にまで長く愛され親しまれていくことだろう。

米津玄師コメント

子どものころを思い返すことがここ最近の音楽活動に於いて、重要なテーマになっていたところに、ダイレクトに子どもへ向けた音楽を作ることになりました。

子どもたちが素直に楽しめるものを作るためには、子どもの目線で生活を省みつつ、まず子どもを舐めないところから始めるべきだと思いました。この曲を聴いた子どもたちが、小さな世界を元気に生きていく為の糧になりますように。

NHK for schoolより


Flamingo

(2018/10/31 リリース)

CM:SONY「イヤホンWF-SP900」

SONY 広告ビジュアル

立て続けのコラボやタイアップなど、”対面に自分以外のものが常にあった反動”でできたというノンタイアップ曲「Flamingo」。

だが、これだけインパクトある曲が放っておかれるわけはなく同年12月からO.Aされた本人が出演するSONYのCMソングに起用された。

TEENAGE RIOT

(2018/10/31 リリース)

CM:マンダム「GATSBY」

柳楽優弥×新田真剣佑が出演したシリーズ広告のCMソング。
書き下ろしではないためコメントはなし。

広告ビジュアル


まちがいさがし

(2019/5/14 リリース)
*菅田将暉 名義
(米津玄師ver.は2020/8/5 リリースのアルバム「StraySheep」に収録)

フジテレビ系 ドラマ「パーフェクトワールド」主題歌

カンテレより

元々はタイアップ曲ではなく、米津が菅田将暉に提供した曲だが、松坂桃李主演のドラマ主題歌をオファーをされていた菅田が「この曲を主題歌として起用したい」と提案した。どこまでもこの2人は相思相愛である。

米津玄師コメント(ドラマではなく曲のみ)

灰色と青で出会えて以来、会えばその都度「なんかやりたいね」という話を続けてきて、出来上がったのがこの曲でした。彼の歌を聴くたび、バーンと喉から勢いよく飛び出してくるその声に毎度震えます。いろんな人に早く聴いてほしいですね。僕と同じように思うはずです。

米津玄師 公式サイトより


海の幽霊

(2019/6/3 リリース)

アニメ映画「海獣の子供」主題歌

映画ポスター

18歳の時に原作漫画に出会い、その頃からこの作品の主題歌について思いを巡らせていた米津が、10年の時を経て映画化のニュースをキャッチするや「どうしても主題歌をやらせてほしい!」と熱烈アプローチ。

コメントからはこの作品への畏怖にも似た憧景が溢れている。

米津玄師コメント

原作を初めて読んだのは10代の頃だと思うのですが、そのすごさに圧倒されたことを憶えています。今読み返してもあの時の衝撃は全く古びず、更に新しい発見をもたらしてくれます。

もし映像化されるのであれば歌を作らせてほしいなあなんていうふうに思ってたことが、今日になって実現するというのはなんとも感慨深いです。
原作が持ってるものに負けないよう、それでいてうまく寄り添えるようなものが、果たして自分に作れるのかと、ここ数ヶ月は問答の日々でした。今は映画館で流れる日を楽しみにしています。

米津玄師 公式サイトより

長年の夢が叶った喜びとそれ故のプレッシャーを乗り越えて完成した「海の幽霊」は、MV1000万回再生をわずか4日で達成。この記録は「感電」と並んで米津史上最速である。

馬と鹿

(2019/9/11 リリース)

TBS系ドラマ「ノーサイドゲーム」主題歌

TBS 公式サイトより

もはや飛ぶ鳥を落とす勢いの米津。”米津玄師が主題歌を担当する”ことが宣伝や話題性に直結する広告塔としての期待も露わに、主題歌のオファーが殺到していたに違いない。

テレビドラマ主題歌2作目は事前発表なく劇中でいきなり解禁されるというサプライズ展開で話題喚起。コメントは第1話終了直後に米津のTwitterで発信された。

米津玄師コメント

TBS日曜劇場「ノーサイドゲーム」の主題歌を担当させて頂きました。「馬と鹿」という曲です。大泉洋さん演じる君嶋が、逆境の中をひとつひとつ進んでいく様をどうにか音楽にできないかと探っていった末にこの曲ができました。素敵なドラマとご一緒できて嬉しいです。どうかよろしくお願いします。

米津玄師 公式Twitterより

「アンナチュラル」と同じく”素敵なドラマ”と記されている。そしてTBSのこの2作品以降、ドラマ主題歌には”よろしくお願いします”とコメントし始める。

カイト

(2020/7/29 リリース)
*嵐 名義

NHK 東京2020オリンピック・パラリンピックテーマ曲

NHKみんなのうた サイトより

東京五輪というイベントへの応援というよりも人気絶頂期に活動を休止する「嵐」への想いを込めたコメントになっている。コロナ禍での開催反対論ですっかり味噌がついた五輪に、コロナ以前の2019年時点で全く言及しなかった米津は予知能力でもあるのか?

米津玄師コメント

僕が子供の頃から変わらず活動してきた嵐の休止前ラストイヤー、その一幕に関われることをとても光栄に感じています。
カイトは長く残る曲になってほしいと願いながら制作しました。どうか広く行き届きますように。

米津玄師 公式サイトより

この『カイト』という曲を作るにあたって、いろんなことを考えましたが、その内の大きな一つが、今の自分は誰かに生かされたということでした。(中略)
日々、漫然と生きていると忘れがちになってしまいますが、決して忘れてはいけないことだと、自分も戒めるような気持ちで作りました。

とてもいい曲になったと思います。この曲を作るきっかけを与えてくださったたくさんの方々、並びに嵐の皆さんに、感謝の気持ちを述べたいと思います。本当にありがとうございます。

2019年 紅白歌合戦での初披露時のコメント


感電

(2020/8/5 リリースのアルバム「StraySheep」に収録)

TBS系ドラマ「MIU404」主題歌
Apple Music CM

「アンナチュラル」と同じ制作陣に盟友でもある菅田将暉や星野源が出演するドラマとあって、ファミリー的なチームワークの良さを感じさせる温かいコメントを寄せている。

TBSサイトより

米津玄師コメント

アンナチュラルの制作チームとまたご一緒させて頂けることがとても嬉しいです。ドラマのコンセプトと脚本を読ませていただき、受け取ったものがいくつもありました。自分が今暮らしている境遇と、ドラマの彼らが巻き込まれて行く物語に共通する部分をそのまま音楽にしました。
どんなふうにドラマと一緒になるのか楽しみです。どうかよろしくお願いします。

ORICONミュージック他より


迷える羊

(2020/8/5 リリースのアルバム「StraySheep」に収録)

CM:大塚製薬「カロリーメイト 」

米津玄師 公式サイトより

CM用書き下ろしの2曲目は大ヒットアルバム「STRAY SHEEP」の表題曲「迷える羊」。未来を壮大なスケール感で描いたSF的な映像に、不穏さと希望が交錯したサウンドが見事にマッチしていた。

そして、米津のコメントはそのままカロリーメイトの広告コピーにも使えそうなほど詩的な説得力がある。

米津玄師コメント

遠く離れた未来のことをよく想像する。
僕たちに対して「あの頃の人々は不便な暮らしをしていた」とか、もしくは「ナチュラルな感覚の元に美しく生きていた」とか、とにかく好き勝手言ってくれるような未来。
自分の存在なんて跡形も残っていない場所で生きる人と話がしてみたい。そこはどうだと問いかけてみたい。

米津玄師 公式サイトより

STRAY SHEEP以降の進化

ある種の贖罪の意味を孕んでいた「STRAY SHEEP」を経て、米津はまた新たな変化を示した。”遠くへ外へと向かうのではない内なる安らぎ”とか”ユーモア”を大切にしたいという気分だ。

ゆめうつつ

(2021/6/16 リリース)

NTV系 news zero テーマ曲

公式コメントは発表していないが、番組内のインタビューでこの曲に対してこう話していた。以下はその一部の書き起こしである。

米津玄師コメント

今回の曲に関していうと「夢と現実の間を反復する」っていう曲にしたいなと思っていて。
(中略)
夜のニュースを見てそのあと眠りにつくじゃないですか。どういう風に眠りにつくかは人によって違うと思いますけど、少なくとも自分は「安らかな空間」というものが生きていく上で必要不可欠だった人間なので、自分と同じような人間もいくらかいるだろうと。共感してもらえたらありがたいかなと思います。

news zero より


pale blue

(2021/6/16 リリース)

TBS系ドラマ「リコカツ」主題歌

TBSより

ユーモアモードはこのラブコメドラマ「リコカツ」主題歌の「pale blue」あたりから始まった。ドラマチックな甘々ラブソングだが、本人曰く”うわぁロマンチックだなぁー”とばかりにゲラゲラ笑いながらのレコーディングだったらしい。

揺れ動く恋模様を大袈裟に歌いながらも、ふざけんのか?と思うような過剰なドラマのドタバタっぷりにもしっかり寄り沿っている。

だが、コメントはサラっとあっさり特筆すべき内容はなかった

米津玄師コメント

主題歌を担当させて頂きました。「Pale Blue」という曲です。
離婚から始まる恋というコンセプトの中で、久しぶりにラブソングを作りました。どういうふうに響いていくのか、今からドラマの放送が楽しみです。よろしくお願いします。

Fashion News他より


カナリヤ

(2020/8/5 リリースのアルバム「StraySheep」に収録)

NHKドキュメンタリー「ふたりのディスタンス」主題歌

*初回放送は2021/8/16

番組ロゴ

番組ロゴはスタジオジブリの鈴木敏夫Pが手掛けており、リリースから1年も経って「カナリヤ」が主題歌に採用された。今思えば米津とジブリの蜜月はすでにプンプン匂っていたというわけだ。


POP SONG

(2022/2/7 リリース)

CM:SONY「プレイステーション」

米津玄師 Twitterより

「死神」MVでの和服姿にも驚いたが、プレステ広告キャンペーンでの女装はユーモア米津の頂点と言ってもいいほどのインパクトだった。「POP SONG」やプレステに関する多くのインタビュー記事はあるものの、タイアップについての公式コメントは見つからなかった。

以下はインタビュー記事からの抜粋である。

米津玄師コメント

小学生の頃からPlayStationでずっと遊んでいたし、自分の人生の一部にあるものだから、このオファーは願ってもない話というか、面白くやれそうだなという印象でした。(中略)PlayStationは名前の通り、遊ぶものじゃないですか。だから曲の中でもいっぱい遊んでやろうという気持ちがあった。

ナタリーより


実るほど頭を垂れる稲穂かな?

押しも押されもせぬJ-POP界のトップスターとなった米津だが、このあたりから「何かの間違いでは?」「青天の霹靂」「まさかこんな機会があるとは」「なぜ自分が?」などと謙虚にも程がある発言をするようになった。「俺以外ありえないんじゃないか」と言っていた頃とえらい違いだ。

次々とヒットを飛ばし、評価が爆上がりし、大いに自信を深めていたであろう米津にとっても、背筋が伸びるようなビッグオファーが増えたこともその一因かもしれない。

M八七

(2022/5/18リリース)

実写映画「シン・ウルトラマン」主題歌

映画.comより

米津玄師コメント

主題歌のお話を頂いた瞬間は「何かの間違いでは」と思いました。
シン・ゴジラを劇場で何度も見ていた頃や、シン・ウルトラマンが制作発表された頃、まさか自分が関わることになるとは夢にも思っておらず、青天の霹靂の一言に尽きます。
超然としたウルトラマンの姿を眺めながら曲を作りました。

米津玄師 公式サイトより


KICK BACK

(2022/11/23リリース)

テレビ東京系アニメ「チェンソーマン 」OP曲

テレビ東京 公式サイトより

「Lemon」が日本中に米津の名を広めた曲だとすれば、この「KICK BACK」は、アニメ「チェンソーマン」とともに世界に米津の存在を知らしめた曲となった。

コメントからは、激しくもポップな楽曲に似合わず、コツコツと丁寧に作り上げた過程が窺える。

米津玄師コメント

チェンソーマンアニメ化にあたり「KICK BACK」という曲を作らせていただきました。とにかく原作が好きだったので光栄です。
この作品がそもそも持ってる力がものすごいので、似つかわしい音を探していく作業は非常に難しいものがありましたが、粛々と一つ一つ積み上げた結果この曲が出来上がりました。
お耳に合えば幸いです。どうかよろしくお願いします。

米津玄師 公式サイトより


LADY

(2023/3/21リリース)

CM:日本コカ・コーラ 「ジョージア」

米津玄師 公式サイトより

曲やCMだけでなく両目を出した髪型にも多くの注目が集まった「LADY」。

極めて短いコメントには「コーヒーブレイク」との共通点がきっちり表現されており、作詞だけでなくコピーライターとしてもかなり優秀なのでは?と思った。

米津玄師コメント

平坦な生活からほんの少しだけフケられたらいいなという気持ちを音楽にしました。よろしくお願いします。

米津玄師 公式サイトより


月を見ていた

(2023/6/26リリース)

ゲーム「ファイナルファンタジーXVI」主題歌

ファイナルファンタジー公式サイトより

自分とタイアップ先との真ん中にピンを打つと常々語っていた米津が、「この作品の為だけに」と言い切った楽曲。この米津の熱い想いにスクエニの吉田Pもこみ上げるものをグッと抑える場面が対談でも見受けられた。

米津玄師コメント

ファイナルファンタジーからは言い表せないほど大きな影響を受けました。まさかこんな機会があるとは思っても見ずこの作品の為だけに曲を作りました。よろしくお願いします。

米津玄師 公式サイトより

実際、米津作品としては物足りないチャート成績だったが、ゲーム内でこの曲に触れた人の感動は計り知れないことだろう。

地球儀

(2023/7/17リリース)

アニメ映画「君たちはどう生きるか」主題歌

スタジオジブリ 公式サイトより

さて、米津玄師が光栄の最上級と言っていたタイアップ案件は、少年期から大きな影響を受けたスタジオジブリの、それも憧れ尊敬し慕い続けた宮﨑駿監督の超大作アニメ映画の主題歌だった。

実に4年もの歳月をかけて完成した「地球儀」には並々ならぬ”熱意”が込められている。その証左として、かつてないほどの長文コメントを自身のTwitterで発表。これはもうプレスリリースやメディア用ではなく、偉大なる宮﨑駿監督へのありったけの愛と敬意詰め込んだ一葉の書簡だ。

米津玄師コメント

米津玄師 公式Twitterより


さよーなら、またいつか

(リリース日未定)

NHKドラマ「虎に翼」主題歌

番組ロゴ

最後に、4月から放送されるNHK朝の連続テレビ小説「虎に翼」の主題歌は情報解禁され、コメントでも「意気込み作りました」と完了形になっているにもかかわらず「まだできてない」という本人からのSNS投稿もあり、その後どうなったか気になるところだ。

米津玄師コメント

まさか夜中でばかり生きている自分が朝ドラの曲を作ることになるとは思いもしませんでした。寅子ともこの生きざまに思いをはせ、男性である自分がどのようにこのお話に介入すべきか精査しつつ「毎朝聴けるものを」と意気込み作りました。よろしくお願いします。

NHK 公式サイトより

とは言え、蓋を開ければまた人々を魅了する歌が流れてくるに違いないが。

以上、すべてのタイアップ曲の公式コメントを調べ上げて時系列でまとめてみた。永久保存版にして時々覗きにきていただけたら幸いです!

最後まで読んでいただきありがとうございます。
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