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藤井微風の意味がやっと腑に落ちた件

 2022年の書き初め、藤井風が慣れた筆運びで書いた言葉は、「藤井微風」だった。

風いうて(略)ええことも悪いこともあると思うんやけど(略)みんなに「気持ちよーい」って感じになって欲しいから。藤井微風そよかぜ

2022年HAPPY NEW YEAR 2022 - ねそべり紅白配信より

 微風というのは諸説あるものの、ビューフォート風力階級でいうところの「軽風」=風力2程度(風速1.6-3.3/ms)のことのようだ。これは顔にわずかに風を感じ木の葉が動く程度の風力である。

微風どころじゃない快進撃

 この2日前に出場した紅白歌合戦では、特別待遇の演出で比類なき才能を遺憾なく発揮。”藤井旋風”が全国のお茶の間に吹き荒れ、SNSフォロワー数やGoogle検索数を一気に押し上げた。

YouTube登録者数 1週間ごとの増減推移 SocialBladeより


Twitterフォロワー数 1週間ごとの増減推移 SocialBladeより
1週間ごとのGoogle検索数 Googleトレンドより

 さらに、3月に芸術選奨文部科学大臣新人賞SPACE SHOWER MUSIC AWARDSベストソロアーティスト賞などを受賞。その風の吹きやまぬうちに2ndアルバム 「LOVE ALL SERVE ALL」をリリースし、オリコンビルボードジャパン共に初登場1位を記録。

 そして、NTT docomoとの学生応援プロジェクト「KAZE FILMS docomo future project」をスタート。

パーソナリティを務めたオールナイトニッポンは、お馴染みの”ずっずマネジャー”だけでなく現場マネジャーまでラジオドラマに登場するという謎の展開。

 4月になるとLAで米人気ミュージシャンたちとスタジオで何やら制作していそうな画像を発信。何の匂わせなのかは未だ明らかになってない。

 音楽誌MUSICAにはアイドル写真集並みの画像とともに8万字に及ぶ初のロングインタビューが掲載された。

 まさかの地上波初冠番組は、売れっ子お笑い芸人相手のガチコント番組だった。テレビ朝日といえば、昨年までは報道番組で大マジメに藤井風特集を組んでいたのに、いきなりお笑いとは突風にもほどがある。

 この人のブランディングは一体どうなっているのか?偏西風の蛇行が昨今の異常気象の原因だそうだが、藤井風の蛇行もファンを相当驚かせている。

 5月からスタートした全国ツアー「Fujii Kaze alone at home Tour 2022」は、リクエストに応じての即興弾き語りや、生着替えまで披露する親近感たっぷりのパフォーマンスが話題に。

Fujii Kaze alone at home Tour 2022ポスター

 6月にはオリンピック記録映画にテーマ曲を提供。ネット上ではこれに憤慨する人たちが喧々諤々の物議を醸した。このことが理由かは不明だが、2部作両方を担当する予定が2作目からはそーっと降板。

 今後、10月には初の有観客スタジアムライブを、12月から来年にかけては全国アリーナツアーを控え、新曲をレコーディングしている気配も濃厚だ。

風いうて、ええことも悪いこともあるし…

 こんな楽しい強風に煽られっぱなしのファンは、凧のように天高くグングンと舞い上がるだろう。だが、風が強すぎればその糸が切れそうになることも増える。

 転売ヤーやアンチの増加、熾烈を極めるチケット争奪戦、度を超えた推し活の横行、お門違いのクレーム、ファン同士の無益な諍い…。

 それらのネガティブな情報は、実際に見聞きするよりもSNSから溢れ出ることが多い。#藤井風を伴う投稿だけでなく、本人のSNSコメント欄にもそれは押し寄せる。

 リプ欄は、熱狂的なファンが跳梁する祭りであると同時に、それを監視する義憤に駆られた人たちにとっての恰好の狩場となる。

 デビュー前年、自分のTwitterアカウントを巻き込んで揉めるファン同士に「喧嘩とかしてほしくないんで!」と仲裁リプまでしていた彼だが、いつしかコメント欄を閉じることが増えてきた。

 米津玄師、あいみょん、常田大希、井口理、山口一郎、SKY-HI、優里、Ayase、藤原聡、宇多田ヒカル、菅田将暉、野田洋次郎、Vaundy、Ado…
書き出したらキリがないほど、名だたるアーティストがリプ欄を全開にしているにもかかわらず、最近の藤井風はリプ欄を開くことの方が珍しい。

<全投稿に対するTwitterリプ欄 閉鎖率>
2020年 4.8%
2021年 40.2%
2022年 68.8%

*2022年は8/6現在

 さらに、コメント欄の開閉をコントロールできないリツイートを省き、通常投稿と引用ツイートのみに絞ると、2021年は47.9%、2022年は78.1%。つまり、今年コメント欄が開いたのは2割程度ということだ。

 これはインスタグラムも同様で、2020年には44%の投稿で開放していたコメント欄が、2021年以降は約22%と半減している。

 その分、稀に開くリプ欄にはコメントが殺到。その数は、フォロワーが藤井風の約4.7倍も多いのに、投稿数は4割ほど少なく、その浮上を多くのファンが待ち構えている米津玄師の1.3倍にもなる。

2022年8/6現在のTwitter
平均コメント数はRT、引用ツイを除く直近10投稿分

 実は、この記事を書くにあたり立てた仮説はこうだった。

「話題性の高い案件が目白押しで知名度がアップしても、SNSを通じたファンとの距離は逆に縮まっているのではないか」

 だが、実際はリプ欄開放率が下がっているだけでなく、投稿数そのものも減っていた。
(Twitter:RT、引ツイ、リプ含む/instagram:ストーリーズ含まず)

2022年は8/6までの投稿を日割り計算した1年の予測値

藤井微風の意味

 次々と吹いてくる風を受けながらふと気づいた。

 藤井風が動くとそこに風が立つ。その振り幅の分だけ風力は増す。だからこそ、あえて今年の抱負を「藤井微風」としたのではないだろうか?「微風」とはアクティビティのことではなく、自身の心の平穏を願った言葉なのかもしれない。

 そして、その心地いい微風の吹く世界は、彼だけでなくファンの心の平穏なしでは成立しない。藤井風という人は何よりも「争いごと」が嫌いなのだと思う。

 ファンがファンにごもっともな正論を振りかざすのも、興奮したガチ恋勢があちこちでやらかすのも、古参のマウントも、見たくないし見せたくもないのだろう。

 簡単に言えば、みんな自由に、楽しく、平和であってほしいのだ。

 例えば、消音再生事件でファンダムが騒然としてたタイミングで、
思いもよらず火に油を注ぐことになってしまったツイートもそうだし、

このインスタストーリーを消さずにハイライトにしたのも、ただただ平穏を願う気持ちの表れなのではないか?

ワシが前回のストーリーで言ったんは、ワシのインスタストーリーやライブビデオを自分のSNSにアップしたらいけんと思うとる人がいるようやけど、それが面白いんやったら別にかまわんゆうことじゃ。
ワシら自由でいたいし。
優しくね、愛はいつだって答えじゃから。

筆者による拙訳

 藤井風のどこに魅力を感じるかはファン1人1人の自由だ。とは言え、自分とは違う価値観や不快な言動を目にすれば当然苛立つこともあるだろう。そんな時はリアルな飲み会なり、鍵付きアカウントなり、メッセージボックスなりで思う存分に騒げばいいと思う。まさに「騒げ、よそで騒げ」だ。

”みんなに「気持ちよーい」って感じになって欲しいから”

 そのために藤井風は本人だけでなく、チーム一丸となってファンを笑わせ、癒し、必要な情報を必要な時に届けてくれている。

 よくよく調べてみると、本人のTwitterとInstagram、スタッフのTwitter、公式アプリすべてを合算すると、1日平均1.5回も何らかの情報発信をしている計算になる。

 これにInstagramストーリーズ、インスタライブ、YouTubeの動画、ショート、コミュニティを加えると、ファンとのコミュニケーションはかなり濃密だ。日々吹いてくる風を暴風に変えてしまうか、”気持ちよーい微風”にするかは、どこかで見ている見知らぬ他者へのちょっとした”優しさ”次第なのかもしれない。

シレっと自戒を込めて。

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