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米津玄師「KICK BACK」 vs Official髭男dism「Subtitle」 の頂上決戦!
10月12日にリリースされた米津玄師の「KICK BACK」とOfficial髭男dism(以下ヒゲダン)の「Subtitle」が、ヒットチャートにおいて熾烈なデッドヒートを繰り広げている。J-POP界における頂上決戦の様相だ。
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奇しくも同日にリリースされ、どちらも主題歌タイアップであり、話題性においても似たような条件が揃っている。果たして令和におけるヒット曲とはなんなのか?を再考する好材料としてこの2曲を比較してみた。
楽曲をブーストする話題性
「チェンソーマン 」と常田大希とつんく♂とモーニング娘。
米津玄師の「KICK BACK」は少年ジャンプで既に大人気の漫画を原作とするテレビアニメ「チェンソーマン」のOP曲である。毎週O.A後にはほぼ全ての配信プラットホームで配信され全世界からアクセス可能だ。
これだけでも大ヒットは約束されたようなものだが、常田大希が共同プロデュース&アレンジで参加したことで「KingGnu」「millennium parade」のファンも上乗せされたに違いない。
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さらに、90年代を席巻したモーニング娘。のヒット曲「そうだ!We're ALIVE」をサンプリング。この経緯を綴ったつんく♂のnoteが拡散され、往年のアイドルファンの関心も喚起したのではないか?
世界的チェンソーマン人気 +常田大希(ヌー&ミレパ)+モーニング娘。&つんく♂と、これでもか!の布陣は盤石だ。
「Silent」とSnowMan目黒蓮
一方「Subtitle」を主題歌とするドラマ「Silent」は、フジテレビの完全オリジナル作品。世帯視聴率は平均7.3%だが、*コア視聴率は今シーズンのドラマでトップ、TVerの歴代視聴数記録を塗り替え、毎週のようにTwitterの世界トレンド1位を獲得。もはや社会現象化している。
全登場人物を精緻に描いたリアルな脚本、たっぷりと余白を残した上質な演出、俳優陣のピュアな演技などにより、切なくも温かな魅力に溢れた作品に仕上がっている。
主演の目黒蓮は毎年恒例のViVi「国宝級イケメンランキング」1位を獲得するほどの人気で、歌に演技にバラエティにと飛ぶ鳥を落とす勢いだ。
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絶妙なタイミングで主題歌が流れるドラマの効果に加え、この最強アイドル、さらに川口春奈など他の出演者のファンも「Subtitle」を聴くたびに物語に想いを馳せ、ヒットを後押ししているのかもしれない。
フィジカルの米津?ストリーミングのヒゲダン?
(アイドル以外で)日本一CDが売れてる米津玄師と、日本一ストリーミング再生されているヒゲダン。
圧倒的にストリーミングに強いヒゲダン
日本国内でのストリーミング数は、ヒゲダンが38.3億回で1位。1億以上再生曲が13曲もある。対する米津玄師は12.2億回とトップ10にも入らず、1億以上再生曲はわずか5曲と大きく水をあけられている。
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サブスク解禁後もアイドル並みに売れる米津のCD
「KICK BACK」のCDは3形態、ライブシリアル入りで11/23にリリースされ、初週30.1万枚と自身2番目の売上げでサブスク解禁以降1番のセールスを記録。
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サッカーW杯で「Silent」のO.Aがなく、CDポイントが加算された11/30付の総合チャートで5週ぶりの1位を奪還した。「Subtitle」は現時点でCDを発売していないが、前作「ミックスナッツ」の月間売上(6/23-30)は約3.1万枚と「KiCK BACK」の10分の1。米津のCDが桁違いに売れていることがわかる。
「Subtitle」は国内ストリーミング記録を連発
ストリーミング、及びDLは「KICK BACK」がロケットスタートを切ったものの、その後はヒゲダンが本領を発揮。
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チャートイン6週目にして、史上最速で累計ストリーミング再生数が1億回を突破。今も8週連続1位を独走中で9週連続も目前だ。(※「KICK BACK」は7週目で1億突破。LiSA「炎」と同列2位)
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順位だけ見ると拮抗しているように見えるが、実際の再生回数の差は大きい。(12/14現在で累計43,868,957回差/約 1.35倍)
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しかし、これはあくまでも日本国内の実績である。ストリーミングに強いヒゲダンではあるが、Spotifyにおける再生地はほぼ日本国内だ。米津も約9割が日本国内で、藤井風のように海外に強いとは言い難いがアジアでの再生数は多い。
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グローバルサブスク市場シェア約3割を占めるSpotifyの再生回数は、「Silent」31,801,219回に対し「KICK BACK」は86,986,213回(12/16現在)。アーティスト別ではヒゲダンの圧勝なのに、当該単曲では海外でより多く聴かれている「KICK BACK」が2.7倍もの大差をつけている。
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MVの再生数も海外比率が高い米津玄師の方が多く「KICK BACK」約4682万回に対し「Subtitle」は約3110万回だ。(12/17 現在)
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YouTube公式チャンネルにアップされている関連動画は「Subtitle」は4本で約4450万回(1動画平均約1113万回)に対し「KICK BACK」は8本で総再生回数1億1127万回(1動画平均約1391万回)にも及ぶ。
[Subtitle]
MV
MVティザー
MV behind the scenes
Audio
[KICK BACK]
MV
Radio(セルフライナーノーツ)
常田大希との対談
Dance practice
Package紹介
ライブパフォーマンス映像
チェンソーマン予告
チェンソーマン ノンクレジットOP
(MAPPA)
つまり、国内では「Subtitle」の後塵を拝しているが、グローバルで見たSpotify、YouTubeでは「KICK BACK」に軍配があがると言うわけだ。12月9日には台湾現地盤CDをリリース。海外人気に拍車をかけそうだ。
但し、シェア2位のApple Musicのデイリートップ100グローバル では常に「Subtitle」の方が上位。(12/16付「Subtitle」16位/「KICK BACK」47位)
本家Billbordチャートでも「KICK BACK」は10/29付けグローバルチャート(アメリカを除く)で4位にランクインしたが、「Subtitle」も11/26付の同チャートの10位に食い込み、じわじわとグローバルな広がりを見せ始めている。
過去にこのグローバルチャートでトップ10入りを果たした日本拠点のアーティストは6組のみ。
LiSA「炎」 2位
(アメリカも含む総合チャートGlobal200では8位)
米津玄師「KICK BACK」4位
Travis Japan「JUST DANCE!」5位
YOASOBI「夜に駆ける」6位
Ado「新時代」8位
Official髭男dism「Subtitle」10位
プロモーション連打の米津、テレビ重視のヒゲダン
米津はTikTokに「KICK BACK」関連動画を16本もアップ。「M八七」の時は4本、「POP SONG」ではたった1本の動画しかアップしなかったことと比較すると、MVで話題となったムキムキアームズのフィルターまでローンチする力の入れようは、明らかに若年層アプローチ戦略に打って出たことが窺える。
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さらに、CM、NYビルボード(おそらく掲出先はSpotify、及びApple Music枠?)、マッスル大会(筋トレ記録をTwitterに投稿させるCP、Billboard Japan Twitter指標アップのための施策と思われる)、少年ジャンプやラジオを通じたノベルティプレゼントやMVで使用したプロップスが当たる企画、CDショップでのパネル展、音楽メディアのみならずカルチャー誌、ファッション誌に積極的に登場するなど、あの手この手のプロモーション連打で話題性をキープしている。
「Subtitle」の方はヒゲダンがツアー中と言うこともあり、HPのお知らせページもほぼツアーについてのみ。あまり派手な展開は見受けられない。しかし、2週に渡ってFNS歌謡祭に出演し、「Subtitle」をテレビ初披露。Twitterトレンド8位など圧巻のパフォーマンスでお茶の間の話題をさらった。さらに年末には紅白歌合戦出場も控えている。
ネット主流と言われる時代でもテレビの影響力は大きい。人気ドラマのパワーと大型歌番組出演によりヒゲダンのメジャー化がますます加速するだろう。
今後の行方とヒット曲の法則
さて「Silent」は12/22に最終回を迎える。「チェンソーマン 」は何話までか明らかになっていないが、ED曲が12曲あり既に10話まで放送済みなので、多分あと2回で終了なのではないか?シーズン2がいつからで、その主題歌が引き続き「KICK BACK」なのかは不明だ。
いずれにしても近いうちに両番組ともに一区切りつくだろう。その後の主題歌の動向が気になるところだ。両者の前曲である「M八七」と「ミックスナッツ」を比較すると、「M八七」は最大瞬間風速(Billboard Japanの週間ポイントで今年最高の20,881pt)を記録している。
だが、「M八七」はわずか15週でトップ100圏外へ。一方「ミックスナッツ」はトップ10から落ちたのはたったの3回と今なお安定的なロングヒットとなっている。
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サブスク解禁後の米津の曲は「感電」以外、初動で爆発的に売れ、数ヶ月でチャート落ちしている。
それに比してヒゲダンは複数曲が常にトップ100にあり、どれも年単位でのロングヒットとなっている。最新チャート(12/14付け)でも実に6曲もトップ100にランクイン中だ。
果たして「ヒット曲」とはなんだろうか?
レコード売上枚数=ヒット曲の基準だった時代は終わり、様々な指標によりヒットの意味そのものが変化している。
ヒット曲とは、記録的なセールスを残しさっと消えていく流行歌か?長期間継続的に聴かれる曲か?あるいは音楽に関心のない層や海外にまで幅広く届く曲か?
チャートはあくまでもひとつの目安に過ぎないが、そこに順位がある限り、少しでも長く上を目指すのはポップミュージシャンならば自然なことではないだろうか?
普遍的な冬のラブソングとして長く愛されるであろう「Subtitle」。海外のアニメファンにまで到達し大きな広がりを見せる「KICK BACK」。いずれ劣らぬ超ハイレベルバトルの決着は当分つかないのかもしれない。
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