【完全ネタバレ】藤井風ライブレポート!1/15 at さいたまスーパーアリーナ:前編
さいたまスーパーアリーナの最大キャパは37000人。藤井風「LOVE ALLアリーナツアー」はこの巨大な会場の最多動員数を記録したと言う。
センターステージを取り囲むように最上階までびっしりと埋まった観客は、小さな子供から杖をついたお年寄りまで年齢も性別もバラバラだが、全員が藤井風の登場をワクワクしながら待っていた。
厳粛さとユルさが混ざった開演
定時から5分ほど遅れて客電が落ち拍手が湧き上がる。「それでは、」のインストゥルメンタルが厳かに流れ始めた。約30秒後、拍手が一際大きくなる。
藤井風がアリーナ後方から姿を現したのだ。パジャマがそのまま長くなったようなダサいwローブを羽織り、フツーの自転車に乗って。
アリーナと200Lv(1階スタンド席)の間の通路を進む姿が一筋のスポットライトに浮かび、笑顔で自転車を漕ぐ様子がスクリーンに映る。ウエット仕上げのウェービーヘアに髭をたくわえている。そのまま会場を一周した風が姿を消すと、スクリーン上にツアータイトルが現れた。
続いて、真っ赤な太陽をバックに佇んでいた風が穏やかな表情で振り向く映像に切り替わる。そのピュアな瞳がアップになると同時に暗転。仄暗いステージ中央に位置する円形のセリがピアノと風を乗せて上昇してくる。長い沈黙、静まり返る会場、そして…
ピアノと風だけの最強世界
The Sun and The Moon
呟くように始まった未発売曲「The Sun and The Moon」。ジャジーなコード感にノスタルジックな甘いメロディ。いつの間にか着替えていた”半纏”みたいな衣装とのミスマッチが気にならないほど、歌と演奏に引き込まれる。
特に圧巻だったのは、終盤のピアノとは思えないまるでハープのように流麗な駆け上がりと高速トリル。ラスサビで大型スクリーンにステージ上の風の姿が映し出される。
深く伸びやかな歌声が滲みいるように消えていくラストまで何度も何度も鳥肌が立った。
Garden
四方に深々とお辞儀をした後、ハンドマイクを持ちアカペラで歌い出す。歌詞はこうだ。
そして「Garden」のイントロをハミングし、再びピアノと一緒に歌い始める。1フレーズごとに芽吹いていくかのような歌声が、3コーラス目の羽ばたくような”掴んだ手 解き放て 空の果て〜”からの澄みきったフェイクへと繋がっていく。心地よいミストを浴びて37000輪の花々が一斉に開花していくようだ。
大きな拍手の中、この日最初のMC。その第一声に場内は爆笑。
「大丈夫でしょうか?」
このMCの間、ひとときも止まることなくずーっと円形ステージを歩き回っている。その語り口は漫談のようだ。
ロンリーラプソディ
喋りながらピアノに戻り「皆さんと一緒に息がしたい曲」と言って弾き始めたイントロはややアップテンポにアレンジされた「ロンリーラプソディ」。
”皆同じ呼吸〜すぅーはぁー”のパートはぐっとテンポを落とし、ヨガインストラクターのように日本語と英語で深呼吸を促す。脳内がα波で満たされてゆく。
美しいスキャットで曲が終わるとそのままポロポロとピアノを弾きながら「次はみんなと一緒に歌いたいと思います。I want you to sing a song.」と言い、「めちゃくちゃダルそうにこの世の終わりのように歌ってください」と笑いを誘う。
もうええわ
サビを1フレーズずつお手本のように歌い、「じゃちょっと練習してみましょう。さんはいっ!」と掛け声を発する。全観客が上手に歌えるのを見届けると、風の弾くピアノのテンポが上がり打鍵が強くなる。
煌めくようなピアノと軽快な歌声に促され、サビの”もうええわ〜”を観客が歌い、”言われる前に先に言わして”と風が続く温かな呼応。
旅路
そのやわらかな空気をそっと揺らしながら次の曲に続くMCが始まる。
明るくどこか子供っぽい可愛らしい歌い方の「旅路」。グリーンのライトがふんわりと客席を照らし始める。
後半は両手を広げ力強く壮大に盛り上がっていく。豊かな声量で歌いあげた最後の最後、”すべてを”で最高潮に達しプツっと途切れた。5秒以上に及ぶ長いブレイク。そして”愛すだろう”とソフトランディング。
緩急のあるドラマチックなパフォーマンスは本当に「旅路」と言う名のロードムービー観たような余韻を残す。その声は清々しく、その顔はとても晴れやかだった。
共有を遙かに超えた一体感
大きな拍手とともに暗転。ここでふと気づく。
ここまで5曲、約30分間、演出らしい演出は何ひとつなかった。やわらかな白いライトがひっそりと灯るシンプルなステージ。1曲ごとに円形ステージが90度回転するだけでスクリーンは淡々と藤井風の顔や手元を映していた。
シーケンス(音源同期)もなく、聴こえてくるのは藤井風とピアノの音声のみ。それなのにフルオーケストラでも入ってたのか?と思うほどの厚みと無限に広がる奥行き。
ライブでの藤井風は”口からCD音源”どころじゃない。演出の段取りを完璧になぞるパフォーマンスではなく、今、この瞬間を即興で創り上げていくライブならではの醍醐味がある。それは人間という有機物が一瞬たりとも止まることなく変化し続けていることを証明するかのようだ。
あの日、私たちも藤井風も”生きた時間を構成する細胞の一部”となり、ともに得難い体験を創造したのかもしれない。
この感覚がさらに強化されることになった続きは<後編>で!
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