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藤井風スタジアムライブから学ぶ超一流のサービス

お客様が経験されるもの、
それは感覚を満たすここちよさ、
満ち足りた幸福感、
そして
お客様が言葉にされない願望やニーズをも先読みしておこたえするサービスの心です

「リッツ・カールトンが大切にする サービスを超える瞬間」より


これは5つ星ホテル「リッツカールトン」の全従業員が常に携帯している”クレド(企業理念・信条)”の1文である。
(*現在はマリオットグループ傘下のため改訂されている可能性もある)

同ホテルには、この”お客様が言葉にされない願望やニーズをも先読みしておこたえするサービスの心”による感動のエピソードに溢れている。

有名な例を1つ挙げると…

スタッフがビーチチェアを片付けていると1人の男性客が「今夜ここでプロポーズするので椅子を1つ残しておいてほしい」と頼んだ。

夜、そのカップルがビーチに行くと、お願いしておいた椅子だけでなく、真っ白なクロスをかけたテーブルにシャンパンと花が飾ってあり、さらにプロポーズの時にひざまずく男性の膝が砂で汚れないよう椅子の前にはタオルまで敷かれていた。

ビーチ係の一存でこんなことが実現できるのは、お客様に”感動”を提供するタイミングを逃さぬよう、スタッフには自ら判断する権限が与えられており、それにかかる経費も一定額(日本円で約30万円)まで認められているからだ。

”企業の「心」と「魂」が従業員を通してお客様に伝わって、初めてホテルはひとつのブランドへと昇華される”という同ホテルの理念とメソッドは、サービス業のバイブル的存在であるこの書籍に詳しく記されている。↓

前置きが長くなったが、こんなことを思い出したのには訳がある。

藤井風の「心」と「魂」を伝えるために

8月に開催された藤井風の日産スタジアムライブに関わる一連の動向は、まさにこの超一流ホテルが大切にしてきたのと同じ「心」と「魂」そのものだったからだ。

アーティスト本人から末端に至るまでの全関係者を通じて、すべてのお客様にこの「心」と「魂」が伝わったことにより、藤井風のライブは音楽を超えた感動をもたらしたのではないだろうか。

今さら言うまでもないが、藤井風は天才音楽家であり、不断の努力でパフォーマンスを磨き続けるエンターティナーでもある。

だが、彼が一生懸命に曲を作り歌い演奏し踊るのは、多くの人に承認されたいとか、愛されたいとか、大成功してスーパースターになりたいという野心ではない。

もっと小さくて柔らかくて温かな願いだけだ。

「誰かがちょっといい気分で人生を送れたりするために 音楽やっとるようなもんなんで」

報道ステーションインタビューより


インタビューで「夢は何か?」と聞かれた時の答えはもっとささやかだった。

やっぱり親…
親の喜ぶ顔が見たいだけかもしれないです

J-WAVE TOKIO HOT100インタビューより

彼の音楽を愛する人たちが皆、自分自身を愛し、自分の仕事に誇りを持ち、そして誰もが自分の大切な人を愛すること。この藤井風というアーティストの”クレド”が真夏のステージの隅々にまで宿っていたような気がする。

チーム藤井風がサービスを超えた瞬間

それを実現したのが藤井風本人はもちろん、演者であるバンドメンバー、コーラス、ダンサーたち。マネジメントや総合演出からアルバイトに至るまで1000人を超える膨大な人数のスタッフだ。
詳細はマネージャーのダイアリー参照

藤井風が思い描いた「Nature」というライブイメージをを具現化するために、わざわざLAの海までロケハンに出向いた演出家。そのイメージを観客からは見えない細部まで創り上げたステージデザイナーと施工チーム。

「サスティナブル」を意識しビンテージの生地探しやオーガニック素材を染めるところからこだわったフルオーダーメイドの衣装を用意したスタイリスト。

髪型もメイクも衣装や演出内容に合わせて変え、グッドルッキングな藤井風の魅力を最大限まで引き出したヘアメイク。

プロだから当たり前だと言えばそれまでだが、熱量や気合いが尋常じゃない。

ライブを見たオーディエンス全員が”ちょっといい気分”で明日からの人生を送ってほしいという藤井風イズムを感じてもらおうと、自分の知識と技術と時間と”ありったけの愛”を注ぎ込むことを誰ひとりとして惜しんでいない。

これって、まさに超一流ホテルが行なっている超一流のサービスと同じではないか!

リッツカールトンがゴージャスな空間や美味しい料理を提供する単なる宿泊施設ではなく”感動を提供する場”であるのと同じように、藤井風チームが力を合わせてお客様に提供したのは、対価に見合った期待通りのサービスを遥かに超えている。

思いもよらぬ驚き、ここまでしてくれるのかという感動の数々は、マーケティング思考のビジネス戦略や効率主義からは決して生まれてこないだろう。

チケット申込用シリアルのために何か買わせようとしないだけでも今どき珍しいのに、スタジアムに来れなかったファンのために初日のステージをYouTubeでライブ配信。なんて太っ腹なんだ!と喜んでクレカ用意したらまさかの無料で、残してくれたアーカイブには途中で広告が入らない…
(10/25で一時的に配信停止となる)

こんなビッグサービスだけでもありがたいのに、真心のこもったサービスは些細なところにまで、これでもか!と行き届いていた。

例えば暑い中、事前購入したグッズ受け取りのために長時間並ばなくていいよう、午前中受け取りの特典としてステッカーを用意。

そのデザインは藤井風本人によるイラストと手描き文字が印刷されており、1日目と2日目でデザインが違うというきめ細やかさ。こんなの誰が予想しただろうか?


サービスのそもそもの意味は「人のために力を尽くすこと」。この心意気と愛が藤井風の音楽に溶け込み、すべてのスタッフを通じて何十万人ものオーディエンスを魅了したのだろう。

いやはや、、、これはもう、、、

ちょっといい気分どころじゃねーぞ!!!

すべてのサービス業はリッツカールトンやスタバやディズニーだけでなく、チーム藤井風からサービスの極意を学んだ方がいい。


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