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米津玄師の歌詞を因数分解して分かったこと <プロローグ>

彼はどんな言葉を多用し、どんな言葉を選ばなかったのか?

 米津玄師の歌がこれだけ多くの人の心に刺さり沁みるには、それなりの理由があるはずだ。メロディ、コード、リズム、SE 、声、歌唱法など様々な要素が複合しているのだろうが、今回はその歌詞に的を絞って考えてみたい。

 隅々にまで敷き詰められた美しい日本語は、本人が言うように地べたを這いつくばり、深淵に沈み込んで探し回ったものなのだろう。深掘りせずにはいられない複雑な歌詞は、多くの韻を踏み、暗喩を含み、時に哲学的で難解でもある。印象的なフレーズやテーマについて、数多の解釈がネット上に溢れるのも肯ける。当然だがそれらは正解も不正解もない曖昧なものだ。

では、実証でひとつの「解」を求めることはできないだろうか?

 そこで歌詞に使われている言葉をデータ化し、客観的に機械的に徹底的に分析してみようと思い立った。個人の見解や感情を排除し、歌詞を淡々と分解し分類する。

複雑な数式を因数分解するように。

 米津玄師名義のアルバム5枚の収録曲、シングルとそのカップリング曲は全部で88曲。奇しくもボカロ時代のハンドルネームのハチが2つ並んだ。(2020年12月現在)

<追記>
2021年7月26日の記事よりシングル「PaleBlue」「ゆめうつつ」「死神」の3曲を追加し全91曲で検証。

 エクセルに歌詞を単語ごとにひたすら打ち込む。同じ曲の中で重複する言葉や助詞(てにをは)や、「あの・この」等の指示語や「そして」などの接続詞はカウントしない。それでも8000語近い言葉が抽出された。それを「人称」「場所」などと言ったカテゴリーごと、あるいは意味ごとに分類していく。

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まるで宝物を少しずつ掘り当てていくような作業だ。

 正直、この気の遠くなるような作業から何が掘り出せるのかはわからない。ただ目の前に興味深いデータがあれば分析せずにはいられないのは、元マーケッターの性かも知れない。彼はどんな言葉を多く使い、どんな言葉を使わなかったのか?

純然たるファクトの羅列から何が見出せるのか?

 無機質な表計算ソフトの上で、美しいフレーズから切り離されバラバラになった言葉たちは、何とも寂しげで心許ない。ちょっと怒っているようにも見える。この言葉たちに心からの敬意を払いながら、慎重に丁寧に分析を進めていきたい。

このデータから見えてきたものをnoteに連載予定

 一般的な曲ごとの歌詞考察ではなく、実際に使用された、もしくは使われなかった「言葉」に焦点を絞り分析していこうと思う。

 例えば「米津玄師は”秋”と言う言葉を一度も使用していない」と言った事実から何が浮かび上がるのか?と言うようなことだ。

 データ分析に基づく考察は筆者の主観となるが、宝探しを一緒に楽しんでいただけたら嬉しいと思う。


「第1章:聖夜に寄せて 米津玄師が選んだ祈りの言葉」は明日クリスマスイブにアップ予定です。スキ・フォローしてお待ちいただけると嬉しいです。
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