【ネタバレ注意】藤井風ライブレポート!1/15 at さいたまスーパーアリーナ:後編
まずはこちらの前編からお読みいただけると幸いです↓
と、前半のMCでも語っていた通り、さいたまスーパーアリーナのスタジアムモードはあまりにも巨大だ。バンドメンバー、ダンサーとともに、後半はこのスケール感を存分に生かした熱いステージとなった。
damn
暗転からグリーンとブルーのライトに彩られた円柱のステージセットが持ち上がりバンドメンバーが登場。小林修己はウッドベースを持っている。そう、後半一曲目は「damn」だ。
ベースの重低音がずっしりと響く音源より長めのイントロに自然と手拍子が湧き上がる。白いロングシャツとドーティー(インドのパンツ)っぽい白パンツの上に、朱赤の布を袈裟のように掛けた風がハンドマイクで歌い始めた。
会場中のあらゆる場所にセッティングされた無数のライトが、待ってました!とばかりにカラフルに明滅し縦横無尽に躍動する。満面の笑顔でジャンプするギターのTAIKING。総立ちになった観客の熱量が一気にブチ上がる。
4人のダンサーとともにMVと同じダンスを披露、ラストもMVと同じコロッケのような変顔がスクリーンに大映しになり場内が笑いに包まれた。
へでもねーよ
ドラムのビートをブリッジにそのままLASA editの「へでもねーよ」へ。凶暴なまでの重低音がズシンズシンと腹に響く。
ここで「さいたまスーパーアリーナァーーーー!!!!」と絶叫。
この曲では掌を上に向ける独特なマイクの持ち方がお馴染みだが、この日は長い指を上に向けて伸ばし、更に左手も同じ形で重ねており、まるで蝶のように見えた。
”あんたの軽〜いキック”からのサビに合わせてステージ周りに炎が噴き上がる。風と8人のダンサーがメラメラ燃える炎の先で揺れる姿がスクリーンに映る。そのままジャケ写に使えそうなほどのカッコよさ。
ラスサビ前の”確かなものにしがみついてたい”で強く拳を突き上げると、トーチの火が再び燃え上がりステージが真っ赤に染まる。それは風の奥底から噴出したマグマのようだ。
不敵な笑みを浮かべて腕を振り上げ、指ピストルの引き金を引くアクションに彼の「気骨」を見たような気がした。
やば。
イントロに幻想的なストリングスがプラスされた「やば。」ピンクからパープルのグラデーションを描くオーロラのようなレーザー光線が会場全体を満たす。
メロウな印象の音源よりも、エネルギッシュで生命力が溢れた歌声に圧倒される。この曲に隠れていた激しい血潮のリフレクションのようにライトがオレンジに変わっていく。
アウトロのピアノの音に合わせ、マイクを持つ手でコンコン、コンコンっとノックする。その扉の先にいるのは誰?
曲終わりの拍手も鳴り止まない中、唐突に「こ〜ども〜」と呼びかける。ざわつく場内に「え?なんて?かわいい、かわいい」と独り言のように呟く。次は「お年寄り〜」クスクスと笑いが起こる。ニコニコしながら「かわいい、かわいい」。声のトーンを下げ「若者〜、、、、ギャル」と、ここで初めて大きなレスポンスがくる。続く「中年〜」に応える声が一番大きく元気だった。
「そ〜んな大きな声出さんでも…なぁ」にまた場内爆笑。
優しさ
「ここからはHELP EVER HURT NEVERからの曲を」と言い、ひと息ついて水を飲む。
TAIKINGの心地よいギターカッティングに合わせて手拍子が起こるが、このコードが何の曲に繋がるのか見当もつかない。鼻歌のようなハミングに20小節目くらいから”温もりに触れたとき私は冷たくて”と歌が流れ込んできた。
チルいテンション、力みのない歌声、ゆったりとしたマーチのようなリズムに身体が揺れる。”置き去りにした愛情を〜”のパートはベースラインとボーカルが会話しているよう。
”花の咲く季節が戻って”の後、シンバルを合図に短いブレイク。”くーるー”はファルセット。そして、たっぷりとブレイクを取り、情感を込めた”はあ〜ぁあ〜〜”のアカペラにかぶせるようにドラムがフィルイン。ゴージャスなバンドサウンドに溶けるような”あぁ〜”のメロディが美しすぎる。
あんなにチルく始まったのにこの盛り上がりは一体何だ?最後の最後まで、風の奏でるフェイクは「そのメロディで新曲リリースしろ!」と言いたくなるほどオシャレだった。
さよならベイベ
ギターのエモいアルペジオをBGMに「ちょっくらみんなのところをチャリで爆走したいと思いまーす」みたいなことを言ってステージを降りる。リズム隊とキーボード、それに手拍子も加わる。
ヘッドセットマイクを装着し登場時と同じ自転車に乗って通路の左右だけでなく上の階の客にも笑顔を向けながら会場を周っていく。
途中から「さよならベイベ」を歌い始め、サビでは誰が促したわけでもないのに皆が一斉に手を挙げて左右に振る。1コーラス目が終わると楽しそうにハミングしながらさらに自転車を漕ぎ続ける。
一周して戻ってきた風に慌ただしくマイクを付け替えるスタッフ。普通なら見せない裏方スタッフの姿が大画面に映し出される。演者と客だけではない、大勢のスタッフの尽力によってこのライブが成り立っているのだ。
ステージではバンドメンバーの紹介が行われている。楽器ごとに何かパフォーマンスをやるわけでもなく、笑みを浮かべ軽く会釈する程度なのがクールだ。特にYaffleはボス的な貫禄を醸し出していた。
2コーラス目はTAIKINGと小林が風と一緒にノリノリでステージ狭しと走り回る。大サビでの泣き叫ぶようなギターのチョーキング、上原俊亮が刻むシャープなビートに会場全体が弾む。もう拍手だけでは我慢できなくなった客席のあちこちから歓声が上がったのは無理もない。
死ぬのがいいわ
静かにピアノに向かい、静寂の中、和音階で駆け上がっていくようなフレーズから温かなメロディーを紡ぎ出す。その刹那、激しく冷たい波のような衝動が鍵盤に叩きつけられた。真っ赤な血飛沫みたいなトリルから、一気にドス黒い奈落で地団駄を踏むような低音が轟く。
本当にこれ1台のピアノから出ている音なのか?もがき苦しみ、右往左往する心が、容赦なく剥き出しにされていく音ではないのか?
赤い照明に筋状の白い光が何本も蠢いている。ガンぎまりの双眸で空を見つめ歌う男は、さっきまでチャリに跨がり笑顔を振りまいていた藤井風ではない。
途中から焦らすようにゆっくりと立ち上がり、空虚な情熱を秘めた表情で歌いながら妖艶に身体をくねらす。
”I ain't nothin' but ya baby”の”baby”が”ベェエエエエィベェ〜”とすがりつくような歌唱にアレンジされており、打ちつける腰のうねりよりも悩ましい。間奏でギターの高音とハモりながらTAIKINGの前にしゃがみ込む。NHK紅白ではひざまづいていたが、この日はいわゆるヤンキー座り。
血管にも運命の赤い糸にも見える真っ赤なレーザー光線が客席に絡みついていく。迸る激情のフィニッシュで、ゴンッ!と鈍い音を立てて倒れ動かなくなった。
青春病
そのまま約20秒後、うつ伏せのまま青春病をアカペラで歌い出した。”青春はどどめ色”までの声は力なく擦れ、疲れ切ってボロボロという体だ。ところが”青春にさよならを”で突然息を吹き返したように、艶やかな声を張り上げる。
イントロとともに立ち上がるとライトが爽やかなブルーに変化。スタンドマイクで明るく元気に歌い踊る姿に、さっきの「死ぬのがいいわ」が幻だったんじゃないかとさえ思う。
MVと同じ”野ざらしダンス”を37000人が総立ちで踊る。このパート直前の、音源よりもずっとアグレッシブなドラムに煽られ、パンチを打つ拳に思わず力が入ってしまった。
曲終わりにビシっと「きをつけッ!」の姿勢で直立不動になるコミカルな動きがかわいい。
きらり
ムーディーな音楽とともにスクリーンに現れたのは、ティアドロップ型のサングラスとモードな衣装を纏った風。揺らめく赤いカーテンをバックにスローモーションで死ぬほどカッコつけたモデルポーズをとっている。
ガチなのかギャグなのかわからない謎のムービーは、新曲MVとかどこかのブランドアンバサダー就任とか?後日何らかのタネ明かしがあるのだろうか?
意味不明にスタイリッシュな映像に気をとられていると、赤い袈裟を外して真っ白な衣装となった風がイエローやグリーンのグラフィカルなライトに照らされていた。「きらり」がピアノとともにスルっと静かに始まったのだ。
”新しい日々は”からアップテンポに変わり、大きく手を振りながら楽しそうにステージを360°歩きながら歌う。2コーラス目から8人のダンサーが合流。キレのあるダンスで会場を盛り上げ、オーディエンスはそれに手拍子で応える。
気持ちのいい疾走感を残しラストは風のVサインで締めくくられた。
燃えよ
完全に着火し燃え盛っている客席とステージに油を注ぐような「燃えよ」。濃いオレンジのライティング。サビでは本物の炎が吹き上がり、これでもか!と赤いレーザー光線が交錯する。
歌いながらぴょんぴょんジャンプし、時々コントのような変な動きを交えてステージを走りまわっている。それなのに圧巻のロングトーンでも全く息が上がっていない。しっかりと自己管理された体力と歌唱力はさすがだ。
大サビからショルダーキーボードをガンガン弾きまくり、ギュインギュインチョーキングをかます。ギターとベースもゴリゴリに客を煽りまくる。こんなことされて大人しく座っていられようか?
まつり
風のドヤ顔で「燃えよ」が終わった直後、シンセサイザーが奏でるイントロを少し聴いただけでテンションMAXの観客が浮き足立つ。「まつり」が始まるのだ。
風を乗せた円形セリ舞台が上昇してゆく。巨大な盆踊り大会の櫓の下で、風がほんの数年前まで暮らしていた里庄町の3倍以上の人々が踊っている。その姿を彼はどんな気持ちで見ていたのだろう?
全方向の客に見えるようステージそのものが回転していく。Yaffleが叩くシンセドラムから和太鼓のような音が聞こえる。真冬なのに夏の終わりみたいな郷愁が漂う。このライブももうすぐ終わってしまうのだ。
grace
限りなく優しい祈りのような短いMCのあと、音源同期を走らせたコーラスから「grace」へ。晴れやかな表情に生き生きとした歌声。真っ白なライトが放射状に広がりすべてが白く洗い流されていく。
降り注ぐ恵みの雨のように幾筋もの細い光がステージを丸く取り囲む。そこで輝く藤井風。照った身体に心地いいお天気雨を浴びているみたいだ。
シンプルの極みのような白い世界にアウトロのパワフルなビートが響き、合掌したまま両手を突き上げるタケノコポーズがビシっと決まった。
何なんw
ステージが明るくなり8人のダンサーが1人ずつ紹介される。名前を呼ばれると同時に一瞬でキメるポーズがかっこいい。ダンサーが全員ステージを降りても温かい拍手が続いていた。
ポリポリと鼻をかき「なんか終わった感じがするんですけど、あと一曲だけあります。ケータイで写真や動画を撮ってもいいし今までで一番自由に楽しんでください」と笑いながら言う。
一斉にスマホを構えるオーディエンスに釘を刺すように「ただし、この1曲だけなんで終わったらすぐにしもうてください」と言って笑わせる。
「じゃぁ、はじめます。ワン、トゥー」
TAIKINGの横でリズムをとり軽くハミングしてから「何なん、草っ!」と高らかに曲紹介。ステージを何周も何周も回りながら視線はずっと客席に向けている。サビの”何なん!”では客にマイクを向けコール&レスポンスを促す。
”時には大胆に攻めたらいい”でTAIKINGに向かって倒れ込み、しばらく寝そべったまま歌う。小林とは肩を組み、Yaffleには跪き上目遣いでじーっと見つめて歌う。バンドメンバーに彼なりの感謝を表してたのかもしれない。
アウトロではステージをバタバタと走り回り、恒例のジャンピングピアノはどう贔屓目に見ても完全に間に合っていなかったw。それでもハチャメチャな上下グリッサンドさえグルーブにしてしまう実力はお見事としか言いようがない。
エンディング
「Thank you!Thank you!ありがとうございます!
最高のバンドメンバーに愛ある拍手をお願いしまーす」
盛大な拍手に見送られてバンドメンバーが去り、graceのインストゥルメンタルが流れる中、ステージに風1人が残った。
いつもの朴訥とした喋りに感極まったようなニュアンスが加わった最後のMC。名残惜しそうにあちこちに向かって手を振り頭を下げる。
ステージを降り、花道を引き返してゆく。出口で振り返ると大きく投げキッス。アンコールを求めるかのような手拍子は鳴り止まない。最後は「grace」のアウトロと拍手がぴったりシンクロし、巨大な生き物と化したさいたまスーパーアリーナが力強く鼓動していた。
こうして、17曲、どれひとつとして音源と同じではない最高のライブアレンジと最高の演奏、ダンス、そして最高の歌声に彩られた至福の1時間50分が体感時間15分で幕を閉じた。
読んでいただきありがとうございました。
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