記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

「STAR WARS ジェダイ:サバイバー」感想。カルくんが苦しむところが見たい

ジェダイサバイバークリア。
良かったです。次回作も買います。それはそれとして不満点もけっこうあるので雑に感想まとめます。

ネタバレ含みます。


良かった点

カル・ケスティスの物語

カル・ケスティス物語三部作と捉えた場合、前中後編のうち一番難しい中編の仕事をちゃんとしてるのが良かった。カルの物語がちゃんと動いて、カル自身の葛藤がちゃんと前景化していったのが良かった。カルがようやくキャラクターとして動き出した感じ。

一作目のカルは、若いパダワンなこともあってひたすら状況に翻弄され続ける印象が強かった。その点、今作のカルは五年を経て成長し、仲間たちと分かれてでも「帝国と戦う」ことを決意している。その結果、大切な人と気持ちを交わしたり大切な人との別離を経験しているので、全体プロットの中での中編としてのステップはバッチリ踏み切っている。これは次回作のカルくんはシリーズ通して一番悩むことは確定であり、そういうお話だとしたらわたしは大変好みです(願望)。

ただ、後述するけど根本的にキャラクター描写が足りていないのも間違いない。そうした描写不足の意図せざる結果としてカルくんが異様に個性の薄い主人公になってるんだけど、それはそれで「オーダー66を生き延びてしまった幼きジェダイ」の人物像としてはけっこう悪くないとも思っている。カルくん、幼い頃は厳しい師匠に鍛えられて、思春期は隠れて生き延びるのに必死で、正常な個性の獲得に失敗しちゃったんだよきっと…

正常な個性の獲得に失敗してしまったカルくんが、成長して自分の意志を獲得した結果「帝国と戦うマシン」になっちゃった、っていう建付けもめちゃくちゃ良い(たぶんこの辺は開発側も自覚的にやっている)。カル自身、そんな自分に若干の疑問は覚えつつ、積み重なる仲間の死体を背にして戦闘マシン化が進行しているところも好き。

カルとダークサイド

終盤のカル覚醒もめちゃくちゃ良かった。カルの良くも悪くも中庸過ぎるキャラ性が、ここに来てようやく意味を持ち始めた。師匠(2号)のシア自体、暗黒面に触れちゃって悩み抜いた人だし、カルにだってその才能があることは一作目時点で随所に仄めかされていた。それがきっちり回収されて、カル自身の物語として接続されて来たのが良かった

終盤のシア大無双展開も良かった。カルと比べてシアの性能がエグいのも勿論なんだけど、シアのライトセイバーのモーションがやたらとパワータイプで「え、こんなパワーな戦い方するのシアさん!?」ってびっくりしたんだけど、そんなパワータイプの戦い方をナチュラルにカルくんが継承することで、カルとシアの物語が自然と接続される展開はウルトラ良かった。この辺の「語らないストーリーテリング」は大成功だと思う(それはそれとして、道中に脈絡なく挟まるシア回想からの能力獲得はマジで脈絡がないので良くないと思う)

不満点

キャラクターの描写不足

一方、キャラクター描写が根本的に足りてないのは明確な不満点です。ゲームオリジナルのキャラたちの魅力が薄い。例えばその一因として、キャラの弱点・欠点が省略されすぎているのはあると思う。例えばアナキンはクッソ強いけどその分傲慢で愛が重くてメンヘラ気質だしオビワンはクッソ強いけど頑固で詰めが甘い…みたいなのがちゃんと魅力になっているのはそれが物語の中で描写されているから。テキストで「この人にはこういう弱点があります」と言われてもそれは魅力にならない。弱点・欠点は描写として物語に組み込んで初めて魅力になる(自戒を込めて)。

キャラ描写に加えて、私はカルくんが好きだからこそ、シアとのラインの描写不足はめちゃくちゃ気になった。フォールンオーダーとジェダイサバイバーの間に未訳小説が挟まっているのだとしても、ゲーム本編でシアとカルの絆をもう少し描いてくれないとカルくんの孤独が深まらないし、シアと離れてしまった欠落にスッ…と入ってきた”都合の良いアニキ”であるボードが映えないでしょ!!

ちゃんと!!カルを!!苦しませて!!

ダガン・ゲラのライン

ダガン・ゲラ周りも不満点。ダガン・ゲラのラインが完全に浮いてしまっている。ダガン・ゲラとカルくんの間に、何の心情的な因縁もない。ただ事実ラインとして、タナローを巡る敵勢力なだけ。なのでダガン・ゲラとの対決に何の盛り上がりもない。ただ強いだけの敵になっている。ダガン・ゲラとカルくんの間の何もなさが、中盤までの盛り上がりの薄さにめちゃくちゃ効いてしまっている。カルが「ダガンのようになるのが怖い」って言ってたけど、ならないよ…

ダガン・ゲララインの遊離らへん、オープンワールド制の導入とハイリパブリック(コミック展開)との連動という二要素をねじ込もうとした弊害な気がしている。ドラマとしてうまく処理できなかった感を覚える。実際、ドラマとしては何の味もないけど事実ラインとしては破綻なく成立しているので、開発陣の苦労に思いを馳せつつ、それはそれとしてわたしはふまんです。(カルの台詞「ダガンのようになるのが怖い」あたりから逆算するに、本当はカルくんにとっての悪しき未来像の一つとして苦悩させる予定のキャラだったのではないだろうか。それがうまく入っていたら物語としてもめちゃくちゃおもしろくなってたんじゃないかとつい夢想してしまう)

全体的なキャラ周りの描写不足は、開発側の「長々とムービーを見せて説明するのは無粋でしょ」みたいな美学が悪い方向に作用してしまっているように感じる。ムービーとかじゃなくて良いから、ちょっとした会話でもう少しキャラは掘り下げることができたと思うしして欲しかった。特にシアにはもっと尺を割いて欲しかった…

次回作も買います

多少の描写不足は感じるとはいえ、カルくんの心の隙間にスッと入ってくる”都合の良いアニキ”なボードは見た目の造型含めてだいぶ良かったし、終盤の怒涛の展開も大変良かった。それに先述の通り、全体プロットの中編としての仕事はキッチリしていると思うので、次回作にはめちゃくちゃ期待できる。不満はあれど、買って後悔は一切ないし十二分に楽しかった。次回作も買います。感想おわり

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?