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ゆっくりと、今の気持ちに寄り添う プロフェッショナル・コーチ 田渋あづささん


患者やそのご家族、医療者の一人一人の可能性を引き出せる安心で暖かいチームづくりをされている田渋あづささんにお話を伺いました。

【プロフィール】
看護基礎教育における教員経験を経て独立し、現在はパーソナルコーチング、システム・コーチング、ファシリテーター、研修講師などをしています。
出身地:兵庫県
活動地域: 東京都・神奈川県を中心にしつつ、全国各地
現在の職業及び活動:
・パーソナル・コーチング 医療や福祉関係に携わっている方が中心。
・患者さんコーチング 糖尿病患者さんの治療意欲をサポート
・システム・コーチーング® 医療チームのチーム創りや多職種連携を目的にしています。
・こころのひと休み保健室 未病の皆さんの語りを伺っています。
・NPO法人育自の魔法理事 多様性を大事に、可能性をエンパワーするワークショップを展開。
経歴: 専門学校・短大・大学などで、15年間にわたり看護基礎教育に携わる。現在は、パーソナル・コーチング、システム・コーチングのスキルを使いながら、様々な活動を展開している。
座右の銘: 「今日という日は、残された人生の最初の1日」


◆ 一人一人に寄り添い最善・最良の生活をつくる

Q:田渋さん(以下、敬称略)はどのような夢やビジョンをお持ちですか?

田渋:最終的に描いているのは、医療者と患者さんとご家族が一緒のチームになることです。

医療現場で、患者さんやご家族の意思を伝えられる場が設けられていますが、実際は、患者が専門的な知識や技術がある医師の言葉を待っていたり、医療者優位というか医療者が引っ張っていく感じです。
ただ治療をするだけではなく、その人たちの生活をしっかり見た上で、医療として最善ではなく、その人の生活にとって最善・最良の治療なり療養生活に向けての関わりがつくれる世界になることが夢です。

Q:夢を具現化するためにどんな活動をされていますか?

田渋:1つは、医療者のあり方を変えたいと思い、医療者一人一人にパーソナルコーチングをしています。
また、パーソナルコーチングで意識が変化し、思い切ってこういうことしたいと思っても、組織としての形に当てはまらないと排除されてしまったり、生きにくかったり、なかなかその場では本当の気持ちを発揮するのは難しい。
そうではなくて、様々な考えがあっても認められるチームであり、また認めるだけではなくてその意見から更にどういう風にしていこうかとか、もっとクリエイティブに考えられる文化になっていくようなチームになって欲しいと思い、医療チームにシステムコーチングをやり始めました。

もう一つは、患者さんとかご家族の目線に立った時に、病院や施設では語ることができないモヤモヤ感がいっぱいあります。それを現役医療者ではないけれど、少しでもお話を伺うことでモヤモヤ感を沈められ気持ちが元気になったらいいなという思いで「心のひと休み保健室」という安心で温かな場所を提供しています。


◆働く側もサービスを受ける側も、その人らしさを大事に

Q:なぜシステムコーチをやろうと思ったのですか?

田渋:病院勤務していたのは5年、ここ15年位は、専門学校や大学などで看護師を育てる看護教育をしていました。医療の中心にいるのではなく、看護師であるけど看護師でないような立ち位置でちょっと違った目線で医療現場を見てるので、看護実習生と一緒に患者さんのところに行くと、看護師に話せないようなことも私たちに話してくださることもあります。第三者的に医療を眺めていたり、患者さんや患者家族と話す中で、今の医療に違和感を感じはじめました。

患者さんが窮屈感を感じていたり、治療に納得していない。
また、医療者自身も疲弊している。

「もっと自分たちの仕事に誇りをもって生き生きと自由にやったらいいのに」と思うけど、命を扱う現場なので、当然ながらリスク管理は厳重にやらなければいけない、約束事がいっぱいあったり何もかもが決まりから外れてはいけない、明文化されていないものであっても規範から外れてはいけない、この様な風潮の中で、なかなか思い通りにならない。

『もっと働く側もサービス受ける側も、その人らしさを大事にしたい』

と考え、パーソナルコーチングだけでなく同じような思いを持ったコーチと何かやりたいと思いました。
また、スタッフ一人一人のコーチングをしていて、チームに戻ったときに「なかなか埒が明かない」と聞き、であれば、「チームごと変えよう」と思い、更にシステムコーチングをやりたいと思ったのです。

◆現場の感覚を大切に可能性を信じる

**Q:様々なアプローチ方法がある中で、コーチングを選択した理由はなんですか? **

田渋:語弊があるかもしれませんが、看護教育は国家試験だけ受かろうと思えば、教科書に書いてあることを理解さえできればいい。しかし、そこを教えることに徐々に飽きていき、学生はどんどん知識を吸収しても、実際に患者さんの前に立った時に、自由に生き生きとその患者さんの望んでることに向けて看護できない姿を見て、どうしたらいいか悩みました。

最初は、学生の心理を学んだ方がいいのかなと思い、実は、大学院の人間情報学専攻の修士課程に入って学生の心理状態を調査研究したりしました。
でも、これもまた違うなと思い、もっと実践に活かせるものをと探していくうちに『コーチング』を見つけました。

それは、フレーズを覚えるのではなく体験しながら気づかせてもらう。
その人全ての可能性を信じ、その人のありのままを全て丸ごと一緒にホールドする。
『気づきを大切に、現場感を大事に、可能性を活かす』
こういう考え方に共感し「やるんだったらとことん勉強したい」と思いました。そして、医療の現場に合わせて少し手を加えて応用編にして使ってみようと思ったのです。

◆対話を通して気づくこと

Q:コーチングをやっていて一番大変だったことはなんですか?

田渋:コーチになってから、多少しんどい話を聞くのは慣れていましたが、「心のひと休み保健室」で本当に辛いお話を聞きました。
いつもは、自分の心は健全に保てるように、皮一枚のところで中に入れない感覚、浴びる言葉を自分の体を通して後ろに消させている感覚があったのですが、その日はそれができず、夕日を見ながら大きなため息をついて帰ったことがありました。
寝るときも思い出したり、翌朝も目覚めた瞬間にその人との会話がフッと思い出されて落ち着かなくなったり・・・こちら側の心のケアも必要だなと実感した体験でした。

Q:今まで活動してきて、一番嬉しかったことは何ですか?

田渋:アンケートなどで、「今まで話すことができなかったことを語ることができた。」といっぱい言ってもらえると、この場にきて良かったなと思います。
それと、「また、話したい」と言って、再度来てくださることが本当に嬉しいです。

◆人が成長していくきっかけになる

Q:AI時代に多くの仕事が奪われると言われていますが、どう思いますか?

田渋:対話をしながら何かを作っていくというAIが入ってもそこには拾いきれない隙間産業みたいなところがあると思います。

患者さんが言ったり、高齢者の方々が言ったりしたことを全部AIがキャッチして、それに必要な援助をロボットがしていくような時代が来ると思うけど、誰でもいいわけじゃない。

誰もいないよりはロボットの方がいいかもしれないけど、話を聞く際には、話しやすい人とか、受け取り方など、AIのプログラムには出来ないこともあります。
時には、その場をかき乱すくらいコーチ側が反応しても良い思います。

コーチも一人の人間です。
それが、相手にとって何かのきっかけになれば、それはそれでいいと思っています。

◆自分に正直に生きる

記者:読者のみなさまへ、メッセージをお願いします。

田渋:自分が何かやりたいとか、何か気になってることは、なんでもいいからまず始めてみる。
いきなり何かを立ち上げて形にしていこうではなく、誰かに話してみるとか、誰かに相談するでも、関連したことを知っている人の話を聞きに行くでもいいのです。

自分自身で動けたら、大きな繋がりができたり、そこから力やサポートを頂けたり、可能性が広がります。次は、他の人に協力したりサポートすれば世の中がハッピーになると思います。

実は、最近、ちょっと守りに入った時期がありました。
しかし、仙台で初めて出会った年配の女性が、その地域でフットワーク軽く、多くの対話を実践されていました。
それを見たときに、「守りに入る自分じゃいけない。」と気付きました。
幾つになってもやりたいことはやればいいし、学びたければ学べばいい。
そうやって自分に正直に生きていくことが、きっと自分にとっても周りにとっても何かを繋いでいく・・

自然と繋がって世界中が幸せになったらいいなと思います。


記者:田渋さん、今日は、貴重なお時間を本当にありがとうございました。

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【編集後記】
今回インタビューの記者を担当した西口と菱谷です。
看護教育という立場だからこそ見えてくる医療の現場。そこで、大切にしてきた患者さんや患者ご家族、医療者の心との対話を大切にされる田渋さん。
私も、田渋さんと一緒に医療チームをつくっていきたいと思いました。
これからのますますのご活躍、ご健闘をお祈りしています。


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この記事は、リライズ・ニュースマガジン“美しい時代を創る人達”にも掲載されています。

https://note.mu/19960301/m/m891c62a08b36

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