「野良犬」感想note
猿博打×かるがも団地合同企画
三匹と三羽「野良犬」の話です。
【ざっくりとした紹介】
同世代の3人組ユニット「猿博打」と「かるがも団地」による合同企画。
猿博打の3人(板場充樹さん、村上弦さん、河村凌さん)が出演、
かるがも団地の藤田恭輔さんが脚本、宮野風紗音さんが制作、古戸森陽乃さんが宣伝美術(とピンチヒッター的に出演)を担当しています。
「野良犬」の舞台は茅ケ崎。
人当たりのいい真面目な会社員・陽村那央(板場さん)が、バイト先で出会った和泉優吾(河村さん)とその恋人・草加朱音(村上さん)と出会い、友情で結ばれ、そして劇的なようでありふれているような日々に飲み込まれていくお話です。
(この先ネタバレあり)
【那央の優しさ、優吾の優しさ、朱音の優しさ】
「野良犬」がどんな話だったかを一言でまとめるのはとても難しいんですけど、真っ先に思い至るのは那央の優しさは本当の優しさだったのか、ということです。
大学では他人に馴染めず孤独だった那央ですが、根本的にお人好しで押しに弱い一面もありました。
サークルの勧誘に何の疑いもなく着いて行くし、ヤバいと気づいてからも体を小さくして存在感を押し殺しながら消えるように立ち去る。
那央って基本的に人は良いんだと思います。たぶん頼み事はだいたい引き受けるし、ちょっと理不尽な目に遭っても「まぁここは自分が我慢すれば…」って丸く収めようとするタイプ。
人と話すのが苦手というわけでもなさそうだし、那央を嫌いになる人ってあまりいないんじゃないでしょうか。
ただ人の顔色を伺いすぎて何もできなくなってしまうし、自分自身もそれに疲れてしまうせいで自ら人に寄り付かなくなっていく。
そういうタイプに見えました。
ただ「それなら一人でいた方が気が楽」って開き直ってみたところで、人が嫌いなわけでもないから心のどこかで寂しさを感じているのかな、と。
そんな時に優吾のような破天荒で我が道を行くような人に出会ったら、そして「友達」だと言われてしまったら。
私だったら完全に心を許します。なんだかんだ大好きですもん優吾みたいな人。無茶苦茶言い出すけどなぜか憎めない。
一人で突っ走ってるように見えるけど、必ず振り返って一緒に楽しもうと手を差し伸べてくれる。
加えて価値観が一緒だったり笑いのツボが一緒だったりしたら、親友になるのもあっという間です。
きっと朱音も那央とほとんど同じ理由で優吾を好きになったんだと思います。2人はとても似ているから。
私自身は那央や朱音のようなタイプだから優吾の気持ちは本当に推測するしかできないんですけど、いつも元気で明るい人って一度挫けてしまうととても深いところまで落ち込んでしまうことが多い気がします。普段の反動なのでしょうか。
でも那央も朱音も、心から信頼している優吾のことを簡単に見捨てることができない。これはどんな人間でも同じですね。
傍にいる人が深く傷ついてしまった時、傍にいてあげることが大事だってよく言います。
でも実際のところ朱音と那央が傍にいたところで、優吾が元の職場に戻れるわけではない。
職場に乗り込むとか開店資金を融資するとか、よほど踏み込んだことでもしない限り根本的な解決にはならないわけです。現実的じゃないですよね。
そう思うとこういうときの「友情」って、それこそ野良犬にエサをあげるような一時の優しさしか与えられないのかもしれません。寂しいけど。
そのほんの少しの優しさが救いになることもあるけど、優吾の場合はそうじゃなかった。
素直に優しさを受け止められないどころか、差し伸べられた手を払いのけて傷つけてしまう始末。
優吾が悪いと言ってしまえばそれまでなんですけど、共感できるところが全くないわけでもなく……
とはいえ同情だけで人を救うのは難しく、よほど覚悟を持って受け入れないと共倒れになってしまいます。
これは朱音を家に招き入れた那央にも言えることで、彼女の心全てを受け入れる覚悟が足りないままに一緒になってしまったから結局上手くはいかなかった。
もしかしたら那央が朱音に恋をしてなかったら良かったのかなぁと考えてしまいます。恋ってどうしても自分本位になってしまうものだから。
そう思うと、一番優しかったのってやっぱり朱音かもしれません。那央を想って自分の気持ちを封じてフラれてあげた朱音は、この先めっちゃ素敵な女性になるに違いありません。
以前投稿した際はこの後で「ハッピーエンドかバッドエンドか論争」を一人で繰り広げていたのですが、読み返したら引くほど思想が強かったのでここで終わります。
「自分もハッピーエンドだと思ったよ」って人はそっと握手しに来てください。
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