【江頭2:50】エガちゃんねる革命を読んで【エガちゃんねる】
僕は江頭さんが来るというだけで昔一回パチンコ屋に見に行ったことがある。
テレビのまんま全力で芸をする江頭さん。動きは激しく目もバキバキにキまっていて正直怖かった。
でもだ、狭い店内でスタッフや店の人と話す江頭さんは、めちゃくちゃ謙虚だった。
言葉遣いも丁寧、新人ぽいスタッフにも気遣いしかない。これはサムライだなと思った。
本書は、YouTubeで大人気のチャンネル「エガちゃんねる」の仕掛け人、ブリーフ団Dこと藤野義明さんというテレビマンが書いたエガちゃんねるの記録本だ。
これを読んでたちまち大人気チャンネルを作れるわけではないが、少なくとも当たるチャンネルのひとつの成功例として一読の価値がある。本は初めてというが、さすがテレビマンで読みやすい。
江頭さん、上沼恵美子さんなどテレビのレギュラーが終わってテレビで見なくなり、あいつは終わったと周りに言われる芸能人がYouTubeを初めても成功した例は数えるほどだ。
なんとなくはじめましたみたいなのは間違いなくヒットしていない。
江頭さんにしろ、上沼恵美子さんにしろまず本人のポテンシャルや実績が十分にあり、本人はこれからどうしようかなみたいに迷っているところに、仕事で一緒になったテレビマンなどがやってきてYouTubeをやりませんかと誘うパターン。結局これが一番強いんじゃないだろうか。
YouTubeもけっこう歴史あるコンテンツになってきたが、魅せる動画の編集方法や手法のほとんどは、テレビ業界で培われたものが多い。HIKAKINさんなども企画もさることながら、多分一番勉強しているのは編集技術じゃないだろうか。もちろんYouTubeだけで独自に育った文化もあるが。
著者の藤野さんというのは、内Pやぷっすまなどテレビ朝日のヒットバラエティの制作を手がけた会社ケイマックスの出身で、自身もこうした番組の制作に若くから携わってきた。
そして仕事で一緒になった江頭さんに惚れ込み、ぷっすまなどレギュラーの終了が相次ぎこれからどうするか迷う江頭さんを見て、こんな素晴らしい人がこのまま世の中から見なくなるのはおかしいという思いでYouTube をはじめたようだ。
芸に対する真摯な姿勢、スタッフなどに対する誠実な態度、東北の地震の際、トラックを借りて救援物資を現地に届けるような行動力、男気‥結局スタッフに支持されないとどの業界でも成功できない。結局動画というコンテンツを何十年も作ってきたテレビマンが本気でYouTube に乗り組んできたらほとんどの専業YouTuberは敵わないのではないだろうか。なんとなく儲かりそうだからとか、テレビの人気をそのまま引き継いではじめたYouTuberがほとんど死に体なのを見ればそれは一目瞭然だろう。
しかもこの藤野さんの恐ろしいところは、俺はテレビマンだからと決しておごらないのだ。YouTube如きなんぼのもんじゃいと舐めてかからない。テレビマンがそのまま前へ出て初めはよかったが、徐々に人気に翳りが出ているチャンネルに比べるとこのあたりがこの人の多分一番恐ろしいところだろう。なんと1年も前から準備し、試験動画をあげて、どういう動画が見られるのか冷静に分析し、かつ色々なyoutube動画をあえてあまり見過ぎず、じっくり必要な人材など準備を進め、企画を練った。これで成功しないわけがない。
大人気チャンネルに擦り寄ってくる怪しいやつら
藤野さん自身YouTubeがはじめてなのもあり、割と勢いのあるyoutubeチャンネルが直面する問題、すなわち広告の審査落ち、理不尽なコラボ(対決して負けたらチャンネル削除)の誘い、怪しげな詐欺会社からの著作権違反通報など赤裸々に書いている。中でも興味深かったのが、YouTubeの代理店をやりますといってくる会社の存在。googleとの調整をするから収益の何割かをよこせと言ってくるらしいのだ。もうめちゃくちゃである。
この本を読んでじゃあ自分も同じようにやったらできるかとなると難しい。自分自身が江頭さん並みに面白いとしてもだ。この本の一章を割いて藤野さんは自分の若い頃の修行時代について少し触れており、興味ない方は読み飛ばしてくださいとあるが、こここそ、この本の肝な気がする。まだテレビのコンプラが影も形もないか、ようやく認知され始めた頃のテレビマンの修行時代というのははっきり言って狂気の連続である。全員いい意味で狂っているのだ。藤野さんが書いているように、今はスマホもあり、こんな狂気じみた修行を若い人はできるのだろうかと思う。こういうあたおかな修行があってこそのエガちゃんねるの成功なのだと思う。