上海電力問題についての私的メモみたいなもの
長いことほったらかしにしていたnoteですがツイッターやその他で上海電力の問題がけっこう頻繁に取り沙汰され、なんとなく調べ始めたらけっこうおもしろくなり、
とうとうあのひろゆきさんもこの件について批判的ながら言及しました。
以下ひろゆきさんのツイート抜粋↓
"マジで何が問題なのか具体的に知りたいので教えてください。
それとも何が問題なのか、わからないで書いてますか?"
(上海電力に関して問題視している百田尚樹さんのツイートを引用して)
多分この後、Twitter上でバトルになると肝心の問題がうやむやになり、それはちょっとおかしいと思うので、ひろゆきさんに限らないが、
ここでちょっと事情を知らない方向けになるべく経緯と問題とされる点を自分なりにまとめて、この問題のざっくりした触りだけでも伝われば幸いです。
なお中国が日本のエネルギー産業に食い込んで云々というのはそれはそれで面白いと思うが、一旦置いておきます。
簡単な経緯編
①2012年頃、大阪市南港の咲洲という人工島に市が持つ5万m2余の使ってない土地があった。
②市はこの土地を含む臨港部に新エネルギーや環境関連の産業を集めたいと考えた。
そこで上記土地で太陽光発電をやるのを条件に土地を安く貸しますから誰か事業やりませんかと入札をかけた。
③この入札に伸和工業と日光エナジー開発という二つの会社がメンバーの合弁会社"だけ"が手を上げ落札した。
落札額は月550,001円だった。(後述)
大阪市はこの時、記者発表資料を出した。
↓月刊Hanadaのホームページの記事参照
(https://hanada-plus.jp/articles/1012?page=2)
④契約後、一年余、現場の工事は始まらなかった。
⑤しばらくすると日光エナジーという会社が合弁会社から抜け上海電力という中国の会社の日本法人が参画し工事が始まった。
現場に太陽光パネルが設置され現在稼働中。
⑥山口敬之さんという方が色々調べ始め、月刊Hanadaという雑誌のネット記事になる。
大阪市議会の自民党議員前田和彦さんが調査を始める。
当時の市長だった橋下徹さん、維新幹部や維新系議員は問題ないとSNSなどで反論。市議会は役所の事務を調べる百条委員会というのをやるか検討し始めた。
問題編
入札①…大阪市はこの案件を条件付き一般競争入札という方式で入札にかけた。
これは誰でもOKではなく、市が求める条件をクリアした人なら入札に参加していいよというやり方だ。
条件とは太陽光発電事業をちゃんと建設できるか、管理運営できるか、税金をちゃんと納めているか、市が要求する技術者がいるか、反社じゃないかなど。
つまり入札して例え応札が1者しかいなくてもすぐ入札した人に決まりじゃなく、この後、事後審査ということで本当に業者に仕事をやれる能力があるか、公共事業をやるに相応しいか書類などを出させて審査する二段構えになっている。
もちろん書類が揃ってないなど審査上おかしければ落とされる場合もある。
この時、合弁会社のメンバーの一社、日光エナジーという会社から税金の滞納がない事を証明する書類の提出がなかったが審査を通した。
(前田市議の市役所への聞き取りより)
入札②…通常こうした入札は公告期間といって、案件を業者に広く周知し、(今は大体ネットによるが市役所の前の掲示板に張り出したりもする)事業を受けることができるか充分検討できる期間を業者に与える。
これが今回は前田市議が入手した当時の入札スケジュールでは18日間しかなかった。
太陽光パネルを設置する人員、コスト、賃料の手当などの手配、計算などを考えると多分かなり短い。
入札③…山口敬之さんが取材したところ、そもそもこの入札が出ていたこと自体知らなかったと答えた会社が複数あった。広く周知というのをやってないとこれはほぼ出来レースということになり、競争性が働いていない。
入札④…太陽光発電事業をやる場合、ネックになるのが土地関係。
(用地買収がうまくいなかったり隣接地の所有者がややこしかったりなど)
この土地は、周りに住宅などがなく、かつ市有地で市はwelcome状態、賃貸料も周辺地価に比べたらタダみたいに安い。(㎡あたりの賃貸料は130円余りだが路線価格から算出すると㎡4000円くらいが妥当?)
太陽光パネルさえ作れば後は簡単な管理さえしとけば売電するだけでよく、業者的にはかなりおいしい現場、普通なら応募殺到のはずだがなぜか応札が1社しかなかった。
入札④…落札価格が550,001円という不自然な価格だった。
(これは市が入札時、最低これだけは賃貸料払ってねと事前に提示した月550,000円という価格に1円だけ上乗せしたもの)。
通常他に競争相手がいないとわかっていないとこういう価格では普通入れない。(例えば1,000,000円で入札されたら負ける)
もし、この業者の調整に役所が関与しているとかなりまずい。
契約①…契約では半年以内には工事を開始せよとなっていたが実際は1年半後に始まった。役所の契約はこのへんシビアで普通は早くやれとせかしたりするし、それでも改まらないと契約目的を履行しないとして契約を解除されてしまうが、なぜかお咎めもなくそのままだった。
契約②…現場の管理をちゃんとしてない。これは近々の状態で、木や草が生えまくって森になりつつある向こうに太陽光パネルがある状態。
隣りは海浜緑地という公園だが、境界の塀が傾いている。また敷地の端っこは原野になりつつあり太陽光パネルに蔦が巻き付いたりして危ない。この土地は市から借りているので、最後は元に戻して返さないといけない。また契約中も善良管理義務と言って常識的な範囲できちんと管理しないといけない。
問題のまとめ編
入札に関して…15年くらい前に役所が絡んだ談合事件が全国であり、
(和歌山でもあった)通称、入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律という法律ができた。談合というと役人が賄賂を受け取りみたいなイメージがあるかもしれないが、そういうの抜きでもある役人が特定の会社に今度こういう入札ありますとあらかじめ教えたり、入札自体を周知せずこっそりやったり、本来やる資格がない業者にお目こぼしをして仕事をやらせたりすると、この法律に引っかかってくるリスクがある。今回の案件は限りなくグレー。
橋下徹氏、維新の関与について…山口敬之さんの取材によればこの咲洲メガソーラーは、元々計画されておらず橋下さんが市長になってから急遽計画された。(前の市長の時の計画と橋本時代の計画案が残されており突然咲州がクローズアップする。)
橋下さんは市の入札はめちゃくちゃ件数があるからこんなの一つ一つ関与できないと反論、松井一郎さんはこれは副市長案件だったと説明している。 さて役所は何か大きな事業をすると上述した記者発表資料というものを役所に詰める記者に提供する。
記者はそれを読んで、役所の市長が週何回かやるぶらさがり会見で質問する。
市長が知らないことを聞かれたらまずいので担当部署は市長に今度こういう事業をやりますと概要程度は説明する。
この時橋下さんが出張してたか病気で休んでない限りは説明を受けてるはずだと思う。
ところで橋下徹氏、維新の反論は2段構えになっており、この入札と契約自体が問題がないというものと、当時の橋下市長は関わっていなかったというのがポイントである。
僕がみる限り入札や契約後の動きはかなりアウトな内容なので、百条委員会が開催されればこの案件を上海電力が最終的に参画できるように具体的な命令を橋本氏がしていたのか、部下が勝手にやったのかが争点になるだろう。
僕のわかりにくい記事よりも山口敬之さんの記事がより詳細に説明されています。
(https://hanada-plus.jp/keyword/1963)