カフェと囲碁_ひだまり_名刺_top

碁盤テーブルに囲碁ラテ!囲碁カフェひだまりの考える、ローカルでグローバルな店づくりとは

「名刺やカードには、人となりや想いが詰まっているはず」その考えのもと、whooのご注文の中から気になった方のお仕事や考え方について、インタビューしてみることにしました。小さな紙の中にも宿る想いや美学は誰かのクリエイティビティを刺激してくれるかもしれません。今回は、東急池上線長原駅にあるお店、「カフェと囲碁 ひだまり」代表の野田さんです。

ひだまり_野田さん_プロフィール

野田 麻由 |カフェと囲碁 ひだまり代表。
事務職に就きながら海外で音楽活動することを志すものの、2016年母が他界、家業を継ぐ決断をする。2017年にカフェと囲碁 ひだまりをオープン。100年企業を目指し、こども食堂や外国人向けサービス、商店街のイベント企画運営にも携わりコミュニティ作りに励んでいる。

家業を継いでリニューアルオープン

―囲碁カフェを始めるきっかけは?
元々実家が碁会所だったのですが、そこを経営していた母が3年前に亡くなりました。その時点で年内には建物を出ないといけなかったんです。それまでは普通の会社員をやっていましたし、家業に対して興味を持ったことは実は一度もなく、どうしようかと考えていました。

―会社員を続ける道もありましたよね
母がすごく囲碁を好きだったので、そんなにのめりこむものなのかな、というのを見てみたかったんです。あと1965年から続いている家業だったのでそれを私の代でやめていいものか悩んで、結局継ぐことにしました。

碁会所の料金体系は「一日1000円」というのがスタンダードなので、それだと売上の伸びが少なく、限界があると感じていました。そこで、飲食+囲碁のお店にしようと決めました。

―どのようなお店を目指したのでしょうか?
囲碁をやらない女性が気軽に立ち寄れるお店を目指しました。私自身囲碁の経験がゼロの状態で継いだので、囲碁を覚えるために囲碁教室や碁会所を探したんです。でも「初心者歓迎」「女性歓迎」って書いてあるわりには、ウェルカムな雰囲気が場所がなく…。その視点で、本当に初心者でも女性でも立ち寄れるようなお店を作りました。

結果的に未経験の女性がいらっしゃる割合は他のお店に比べてダントツで多いです。ひだまりで囲碁を打てるようになった人は結構いますよ。

ひだまり_カレー

最近はカフェ利用の方も6割、囲碁利用の方が4割ほど。

最終的に決めるのは自分

―オープンまでに色々あったと思いますが、大変だったことは?
立ち上げは全部一人でやったので、大変すぎてはっきりと覚えていないのですが…。
全てを自分で決めなくてはいけない、というのが大きく違いました。会社員の時ってさほど決断力って必要なかったように思うんですよ。上司に聞いて判断して、ということが多かったので。誰かに意見を聞いてみることはできますが、最終的に決めるのは自分なので、その決断をしなれていなかったのが大変でしたね。

―物件を見つけるのも大変だったとか
なかなか物件が見つからず、次の物件が見つかるまでレンタルスペースを借りて週に3回くらい碁会をやっていました。その時にすごく良い物件に出会ったんです。契約書も書いて一度OKですと言われたのに、突然断られたんです。理由も教えてもらえず何でだろう、と。それが東急池上線沿いだったので、このエリアも視野に入れたら今の物件と出会ったんです。

ひだまり_店内

キッチンを作るなど、全体的にリノベーションを行った店内。

もともと、長原には住んでいたことも働いていたこともあったので、この建物の存在も知っていました。最初に入った瞬間に、ここにするんだろうなってイメージが湧いたんです。

囲碁カフェでしかできない遊び心を

―碁盤のテーブルはオリジナリティがありますね
お店をつくる前からこんなものはできないのかな、という発想はあったんです。作るのにはそれなりにお金がかかるのでむちゃくちゃ考えたんですけど、誰かに先をこされたら悔しいだろうな、という考えに背中を押されました。

碁盤テーブル

なんと大手ゼネコン会社が製作されたそうです。

―囲碁初心者ならではの発想だなと感じました
経験者からすると、碁盤の上で食事するなんて罰当たり的な感じにみられるかもしれないですね(笑)
囲碁カフェは全国で何軒かあるので他の店も見てみたのですが、遊び心を持った店が少ないという印象でした。囲碁カフェでしかできない遊びってたくさんあると思うのですが、誰もそのような発想にいたっていなかったんです。だからここでしかできないことをしようと考えました。

ひだまり_キッチン

カウンターは碁石風。

ひだまり_ライト

照明も白と黒。

ひだまり_漫画

囲碁の本や漫画もずらり。

―名刺の写真には囲碁のラテアートがありました
これは囲碁ラテというメニューです。お店を始めてから地域のつながりができたので、大田区の町工場で金型を作れるところを探しました。最初はこんなの作ったことないからわからないって言われましたが、ココアパウダーが落ちる線の細さを何回も作り直してもらって、ちょうど良い細さにできました。

カフェと囲碁_ひだまり_名刺

囲碁ラテの写真を使ったクラフト名刺。

こだわりを持って仕事をする人は信頼できる

―whooを知っていただいたきっかけは?
クラフトの名刺を作りたかったので色々と探していたらたどり着きました。えらいオシャレなデザインだな、と。名刺って広告みたいなものだと思っているので、こだわりのあるところで作りたいなと思っていて、それが感じられました。
量産型ではなく、何事にもこだわりを持って仕事をしてる人の方が信頼できるのかなと思いました。名刺を手にとって「おっ!」て思ってもらえるのともらえないのでは、大きく違うのではないでしょうか。

地域貢献のためのこども食堂

―こども食堂も開催されています。始めたきっかけは?
私の目標の中に「ひだまりがあるこの街に住んでてよかった」と思ってもらえるような店舗にする、というものがあって、お店をこのようなローカルな場所に作った時点で地域貢献は必要だと思っていたんです。

以前近所の子供が囲碁体験に来たのですが、朝10時から夜10時までお父さんとお母さんがいないと言っていたんです。その子は私立に通っていたので、地元に友達が少ないだろうなとも想像ができて。そのような子が月に1回でも何か楽しみにできることができないかと思っていました。どのような活動にするか考える中でこども食堂の存在を知り、始めることにしました。

―他にも変わったイベントをされていますね
最近やったのはファミコンを楽しむイベント「8bit Night」ですね。私もファミコン世代なので、この辺の人を集めてやりました。

ひだまり_DJ

実はトランスのDJでもある野田さん。音楽イベントもいずれやりたいそう。

囲碁はグローバルなコミュニケーションツール

―お店をやっていてよかったことは?
世界中に友達ができたことですね。2年間で400人くらい外国の方が来られたのですが、実はアジア圏の方は1割にも満たなくて、圧倒的に囲碁を知らない欧米の方が多いんです。

日本には家にオセロ盤があるような感覚で、アジアでは囲碁が普通なんです。もし囲碁を打ちたいならそれぞれの家に行くと。でも欧米の人たちはそんなカルチャーがないので、囲碁をやらない人がこの店に体験しに来るんです。

―覚えやすいのでしょうか?
将棋やチェスのように駒の役割を覚える必要がないので、ルールだけ覚えてしまえばわかりやすいですね。囲碁は身につけて帰れるお土産なんです。例えば着付けだと、着物を着て、写真を撮って帰るだけですよね。でも囲碁は一度身につけるとインターネット上で世界中の人たちと打てるので、私も仲良くなった外国の方は囲碁のwebサイトで打ったりするので、永続的なコミュニケーションが可能になるんです。

ひだまり_世界地図

世界中のお客様が来店されています。

ひだまり_ヨーロッパ地図

ヨーロッパだけ別枠の地図も用意。

地域の人々とともにまちづくりを

―今後やりたいことは?
私が個人的に力を入れているのがまちづくりです。昨年、街バルのイベントを開催したのですが、それ以降、街バルだけでなく、街ゼミ(※1)もやってみよう!と。そのような話を進めるなかで「街の人って商店街の人だけじゃないよね」となり、この地域に興味のある人を集めてワークショップをやったんです。「長原にあったらいいもの」をグループワークでブレストして付箋に書き出して、それを一枚の絵にしました。そんな風に街の人と関わりながら地域を作っていけたら面白いなと思っています。

あとは色々な日本の都市や、様々な国にこのようなお店ができたらいいですね。囲碁は子供からお年寄りまで楽しめる、コミュニケーションツールとしてすごくいいものだと思っているんです。お店をきっかけに人が繋がっていけたら、いい世の中になるのではないかと思っています。

(※1)街の人が先生になり、自分の技術を無料で提供するイベント

ひだまり_囲碁対局

この日は小学生の女の子が店員さんと対局していました。ちなみに野田さんの棋力は2級だそうです。

まとめ

一見するとオシャレなカフェ、でも所々にある囲碁の要素が、親しみやすくユニークな雰囲気を感じさせてくれました。地域のコミュニティに溶け込みつつ世界中からお客様が来店される、ローカルでグローバルな素敵なお店。囲碁を身につけたら世界が広がりそう!たくさんの想いが詰まったひだまりは、これからももっと地域で、世界で愛されるお店になってくれることと思います。

ひだまり_囲碁対局のマナー

Webでしか囲碁をやったことがない人は、意外と実際の対局マナーを知らないそう。壁紙で啓蒙活動も。

画像14

余談ですが、お店に置いてあった囲碁のフリーペーパー『GOTEKI』はぶっ飛んだ内容で面白かったです。表紙のクオリティ…!


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