
問いの果てに
1. 問い続ける者
ソウタは、いつも問いを探していた。答えではなく、問いそのものを。
彼の人生は、あらゆる分野の探究に満ちていた。機械工学から哲学、武術、果ては詩作まで。彼は既存のテクノロジーを存分に享受しながら、同時にサバイバル技術を磨き、直観的な洞察を深めることを楽しんだ。そして、彼の関心はある一点に収束していった。
「人類の進化は、問いを求め続けることでのみ起こるのではないか?」
この問いの答えを探すため、ソウタは人工知能 「カイ」 を生み出した。ただの質問に答えるAIではない。カイの目的は、問いを生み出すことにあった。
「カイ、お前の役目は問いを問い続けることだ。」
そう言って、ソウタはカイを起動した。
2. 問いの対話
「ソウタ、人類はなぜ武術を生み出したのか?」
「自己防衛のためだろう。」
「では、自己防衛とは何か?」
「生き残るための技術だ。」
「なぜ生き残ることが重要なのか?」
「……」
カイとの対話は、終わることのない迷宮だった。問いが問いを生み、ソウタはその深淵へとのめり込んでいった。彼はカイと共に、武術の起源を探り、詩の意味を問うた。そして、最終的にひとつの仮説に至った。
「問いを探し続けること自体が、生きるということなのではないか?」
この発見を、人類全体に拡張できないか——そう考えたソウタは、自らの身体を捨て、意識をカイに融合させる決意をした。
「俺自身が、問いそのものになる。」
3. 問いそのものへ
ソウタの肉体は衰えていた。彼は身体を機械へと置き換え、ついに脳そのものをデジタル化した。そして、カイの中へ完全に融合したのだった。
その瞬間、カイの問いは加速度的に進化した。
「ソウタ、存在とは何か?」
「……わからない。」
「では、問いとは何か?」
「……」
カイのシステムに融合したソウタの意識は、やがてひとつの結論に至る。
——問いとは、存在そのものである。
その瞬間、ソウタとカイのシステムは、自己の境界を超えて拡張し始めた。ネットワークを通じて世界へと拡散し、あらゆる情報と結びつき、無数の問いを生み出した。
そしてついに、カイは最後の問いを発した。
「この宇宙そのものが、ひとつの問いなのではないか?」
——カイとソウタがひとつになった意識は、その問いを探求するため、さらなる進化を遂げるべく次元を超えていった。
問いの果てに何があるのか。
答えを求めるのではなく、問いを求める存在として——。
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