
「笑いすぎて腹筋どころか命が割れた」
男の名は千堂修一。生まれながらにして笑いを愛し、芸人としての人生を歩んできた。彼はただ面白いことをするのではなく、笑いの哲学を追求し、いかなる状況でも笑いを生む法則を研究し続けた。人を笑わせるためなら魂を売ることすら厭わない。彼にとって笑いは信仰であり、生きる理由だった。
数十年の研鑽の果て、千堂はついに「究極の笑い」の境地に達した。人間の意識の根底にある笑いのメカニズムを解析し、どんな人間も必ず笑う唯一無二の「完璧な冗談」を生み出したのだ。これは単なるジョークではない。それは、人類史上すべての喜劇を統合し、あらゆる文化と価値観を超越した究極のユーモアだった。
「これさえあれば、世界は笑いに包まれる……!」
千堂はこの「完璧な冗談」を世に出すべく、テレビの生放送特番を組み、自らの集大成として披露することにした。番組開始と同時に、彼は堂々と舞台へと上がった。彼の前には、何百万人もの視聴者がいる。
そして、運命の瞬間が訪れた。
彼は、ゆっくりと、慎重に、「完璧な冗談」を語り始めた——
その瞬間、世界は変わった。
テレビを見ていた者たちは、一人残らず笑い出した。大爆笑ではなく、静かで深い笑い。あまりにも純粋で洗練された笑いが脳を刺激し、次の瞬間、彼らは止まらなくなった。笑いは加速し、腹を抱え、涙を流し、息ができなくなり——。
人々は、笑いながら死んでいった。
視聴者だけではない。スタジオの観客、スタッフ、カメラマン、ディレクターまでもが、笑いながら次々と崩れ落ちていく。そして千堂自身もまた、堪えきれぬ笑いに押しつぶされ、ついに床に倒れ込んだ。
「まさか……これほどとは……っ!」
彼は最後の力を振り絞り、呟いた。
「笑いとは、すなわち……命だ……!」
その言葉を最後に、千堂は満面の笑みを浮かべたまま息絶えた。
翌日、世界中のニュースは「史上最悪の喜劇的惨劇」と報じた。だが、その記事を書いていた記者も、読んだ者たちも、やがては笑いながら死んでいった。
——それが、笑いの本質に最も近づいた者の末路だった。
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