一冊との出会いと人生
好きな小説について好きなだけ語りたい、という願望はずっとあったのですが、機会もなければ時間もなく、今回、せっかく時間があったので思うがままに書いてみました。
ヴェルヌとの出会い
皆様、ジュール・ヴェルヌという小説家をご存知でしょうか?
SFの開祖とも呼ばれるフランス人小説家である彼は、「十五少年漂流記」や「海底二万マイル」などの執筆でも有名な、1800年代の科学SF小説家です。(ディズニーシーにあるアトラクション、海底二万マイルは彼の小説をディズニーが実写映画化したことで出来たものです)
私は元々、女の子にしては(という表現はすでに令和には不適切かもしれませんが)、宇宙や冒険などがテーマの壮大な話が大好きな子供でした。
私たちの世代では「若女将は小学生!」とか「絶叫学級」など、小説自体は流行っていたものの、その世界観は一つの街や身の回りで完結するものが多く、もっとぶっ飛んでいて広い世界や知らない世界の話を読みたかった私には、(それらも面白かったし読んでいたけれど)いつも物足りなさがありました。
これをいうと、「イヤイヤ、ファンタジーで言えば"黒魔女さんが通る"とか"ハリーポッター"とかも流行っていたじゃないか」というツッコミがあるかと思うのですが、私はファンタジーはファンタジーでも現実味のない話はあんまり好きではなく、科学技術の発展をベースにした、SF系のファンタジーが好きだったのです。
そんな折に、たまたま何かでヴェルヌの「十五少年漂流記」を読み、小学校中学年だった私は一瞬で虜になりました。
面白くてワクワクして、続きを読む手が止まらず、その日は初めて徹夜した記憶があります。とにかく、それほど面白かったのです。
次の日はその足で本屋へ行き、ヴェルヌの本を母親にあるだけ買ってもらい(確か「海底二万マイル」と「地底旅行」だったはず)、それ以上は本屋にはなかったので図書館で「月世界旅行」などを読みました。余談ですが、この時に初めて他地域の図書館から本をお取り寄せ、というものをしました。
彼の魅力と背景
彼の小説のどこがそんなに好きだったかというと、彼の話は一見ぶっ飛んだファンタジーでありながら、本当に起こりそうなリアリティがあり、且つ所々にある皮肉や風刺も面白くてたまらないところ。
昔から小説自体は好きだったのですが、母親や祖母が買ってくる小説は「おちゃめなふたご」とか「秘密の花園」、「小公女」など品が良い少女小説が多く、冒険や壮大な話に飢えていた、という背景も大きかったと思います。
私は自分の身の回りの出来事(友達と喧嘩したとか夜中にパーティーしたとか)で完結するような話じゃなくて、もっと広くて大きくて未知の世界が読みたいんだ、と常に思っていたわけです。
私はおじいちゃん子だったのですが、祖父はインディー・ジョーンズとかメン・イン・ブラック(MIB)みたいな海外の冒険物やSFファンタジーが大好きで、よく一緒に見ていたのでその影響もあると思います。
ヴェルヌの小説は月へ行ったり、地底世界を冒険したり、世界を潜水艦で回ったりするので、常に私を広い世界に連れて行ってくれて大好きでした。
彼の小説は基本的に19世紀の科学技術がベースに書かれていていて、私の好奇心とか広い世界に対する憧れは彼によって作られたといっても過言ではありません。
与えられた影響
私の人生や性格にヴェルヌが与えた影響は本当に大きいです。小学生の時にヴェルヌと出会っていなかったら、今とは全く違う性格になっていたと思います。私は彼によって海の向こうを想像したり、未知の世界に好奇心を抱いたりするようになって今があるのだと思います。
余談ですが、私は大学へ進むとき海洋生物学を学ぶか、今の学部に進むか、結構迷ったくらい海が好きなのですが(自分の本名も漢字で書くと海が入っています。すごくない??)、この海への好奇心も元を辿ればヴェルヌによって作られたものです。
本は本当に世界を変えます。私は海外旅行も好きだし、外国のニュース(BBCとか)を見るのも好きだし、日本生まれ日本育ちなのにIB Diploma を取るくらい、自分の知らない世界の話が大好きだけど、それもこれもヴェルヌによって知った未知への憧れがベースになってできたものです。
私に関しては小学生という人格が形成される時期にヴェルヌを読んだこともあるのかもしれませんが、、、
例えば、毎日ニュースや新聞を見なくても全然平気である(自分の知らない世界や知識があっても特に興味も好奇心も湧かない)、というような人にはもしかしたらヴェルヌの衝撃が私にとってどれほどのものだったか想像できないのかもしれません。しかし、私にとっては文字通り雷が落ちたような衝撃だったわけです。
私にとっては、未知の世界があってそこに行くことができる、挑戦することができる、という状態(と思える状態)は必要不可欠で、それを教えてくれたヴェルヌが私は好きなのです。
皮肉と風刺
彼の小説は面白いだけではなく、フランス人らしいエスプリも非常に効いていて面白いです。
私はディズニーでは不思議の国のアリス、他の冒険小説ではガリバー旅行記とかも大好きだったのですが、共通の特徴はどれも非常に文章も表現もキレッキレで皮肉風刺たっぷりなところ。
アリスでいったら、赤色がいいと駄々をこねて白いバラを赤く塗らせるハートの女王や、ガリバーで言えば自分たちの知識が正しいと信じ込んで一つの国を荒廃させたラピュタの学者たち。(なんとなく、「ああいうのを風刺しているんだろうな」と分かって笑える表現たち ←大好き)
ヴェルヌは十五少年漂流記ではフランスの教育制度をイギリスと比べて皮肉っていますが(フランスでは生徒たちはいつまでも子供だ、と結構しっかりディスっています)、植民地主義や人種差別も結構しっかりエスプリを効かせて各作品で批判しています。
私は自分の信念をしっかり持っている小説家(小説家に限らず全てのクリエイター)が好きなので、割とこういう作品たちを面白く読めました。
これから読む人のためにネタバレは避けますが、例えば「海底二万マイル」とかだと、ある人のイギリスへのディスりっぷりは結構なレベルです。(面白いよ)
おすすめ
まとめとして: ヴェルヌの作品は冒険SFものが多く、私は好奇心が刺激されてワクワクさせてくれて大好きですが、好みは人それぞれなので特に薦めるわけではありません。面白いと感じる人もいれば、つまらないと思う人もいると思います。
もし読みたい方がいれば、ヴェルヌの作品は色んなバージョンが出ているので好きなものから読んでいただければいいと思います。図書館にあるはずです。
特に十五少年漂流記なんかだと小学校低学年向けに易しくされたものがあると思うので(流石にそのバージョンだときつい表現や皮肉っぽい分はカットされていると思いますが)、普段本を読まない方はそちらから入っていただければいいかなと思います。
余談ですが、小学五年生の時に繰り返し読みすぎて二冊目を買ってもらうレベルにお気に入りだったのは海底二万マイルです。
とりあえず今年はフランスにあるジュール・ヴェルヌ博物館に行きたいと思います^ ^