ソフトシンセキーボーディストの道 vol.3

前回はMainStageについて紹介しました。

今日は予告通り、音源選びについて紹介します。あんまりうんちくばかり語ってもしかたないので、今日は具体的におすすめソフトシンセ音源5つを選んで語っていきます。結局、どんな音が出るかが最大の関心と思いますので。


前置き

vol.1やvol.2はならべく客観的と公平性を保ったつもりで書いてみましたが、この章ぐらいからそろそろ偏見や嗜好が強い記事になってきます。これは自分が知ってる音源や世界しか書けないからです。あくまで僕の範囲での考えやおすすめしか書けません。この色に染まるもよし、反発するもよしです。

オススメ音源

第1位. XLN Audio - Addictive Keys Studio Grand(ピアノ音源)

キーボーディストたるもの、何につけてもまずピアノ音源を求められると思います。私もいろんなピアノ音源を使ったのですが、バンド用途において、最も汎用的な音色・価格で、今も使えてるのが、この音源でした。

※バンドであわせてるような、都合のよい動画はなかった…

この音源以上に重厚でリアルな音がするグランドピアノ音源はあるのですが、容量が大きすぎたり、処理が重かったり、鳴りが重厚すぎてバンドに合わなかったり、あまりフィットしなかったのです。そういう意味では非常にちょうど良い音源です。

執筆時点では定価は¥14,071ですが、セールで¥9,504でした。

ちなみにXLN Audioでは、他にCP-80・Rhodes Mk.1・アップライトなどの他の鍵盤音色も販売しており、グランドピアノも含めて3つまとめて選べるパッケージ品だと、定価は¥26,391で、セールで¥21,824でした。お買い得ですね。自分は結局4シリーズ全部揃えちゃいましたが、基本はグランドピアノ、まれにアップライト、という選び方です。CP-80は使う機会に恵まれず、Rhodesは別の音源(後日紹介したい)を使ってます。


第2位. Spectrasonics - Omnisphere(マルチ音源)

マルチ音源です。サンプラーも兼ねてるし、バーチャルアナログも兼ねてるので、波形をいじいじした音も出せます。

※Ominisphere 1の時代の動画だけど、だいたい方向性は一緒

基本はバーチャルアナログの方向性が強いので、リード、プラック(Pluck、弦を弾いたような歯切れのある音)、パッド、シンセベースなど、いわゆるシンセ系は完備してます。

生音系でいうと、ストリングス、ギター、エスニック、クワイアなどは揃っていて非常にリッチな音が出ます。ちなみにピアノ・ブラス・ドラムなどはなし。このあたりは別の音源で補う必要あり。

使う注意点としては、プリセットの数がめちゃくちゃ多いです。「一生かかっても使い切れないほどの音源」とメーカーが謳ってるとおり、波形もプリセットも多いし、音色もエフェクトもかなりいじれます。

その上で辛いのが、「現場で使えない音色も割とある」ということ。Omnisphereを買った直後はちょっと音色選びが大変です。最初は音色を探しながら、フェイバリット機能を使って、使いそうなプリセットにマークをつけたり、過剰な音色はエフェクトや変調を切って、シンプルな音にして保存しなおすなどの工夫は必要です。第2位でオススメしておきながらアレですが、ワークステーションシンセの世界から来た人には登竜門・洗礼にはなりそうです。

あと価格もネック。最新価格はなんと¥85,800…。これ実は昔は¥30,000~¥40,000ぐらいだったんですよ。セール時期(別の章で書きたい)で運良く買うか、セールが来ても値下げされなければ、さっさと買っちゃうのをおすすめします。

https://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/241608/

2024/8/1時点のサウンドハウスの価格表示

音色と価格の話で課題感はいろいろ書いてしまったものの、私とソフトシンセ友達との話では、XLN Audioのピアノ音源と、Omnisphereの組み合わせは鉄板すぎて最もつまらないと評判でした。そのぐらい無難かつ十分に使えます。

ちなみに音作りは内蔵されているプリセットや波形から作ってもよいのですが、有名なソフトシンセなので、メーカー以外の個人がプリセットコレクションを作っていたりします。以下のリンクはDream Theaterすぎるプリセット集です。価格は10ドル〜20ドル。安い。音作りに飽きたら、こういうのに頼ってもよいです。


第3位. IK Multimedia - Hammond B-3X(オルガン音源)

オルガンで有名なHammond社ですが、メーカーの共同開発にて、ハモンドオルガンを再現したものです。まさに実機さながらで、MainStageの付属のオルガンがなんじゃこりゃと思うほど、最高のロータリー、アンプの鳴りを出してくれる音源です。

なおオルガンのハード機材でいうとHammond XK・Nord Electro・Ventilatorなどがあり、こういった専用機器とは優劣や好みはありそうですが、ワークステーションシンセの内蔵音源ぐらいの相手であれば、B-3Xは圧倒的に軍配はあがるかなーと思います。

価格も¥16,990。お手頃です。素晴らしい。

第4位. Native Instruments - Kontakt(マルチ音源)

https://www.native-instruments.com/jp/products/komplete/samplers/kontakt-7/

Native Instruments - Kontakt

総合サンプラー音源です。Omnisphereは割とシンセよりの総合音源でしたが、こちらはバンド系(特にトランペットやサックスなどの管楽器)やオーケストラ系(バイオリンやヴィオラなどのソロ、フルート、ハープシーコード、マリンバ、グロッケン)などの生っぽいのが便利なところです。

また、Kontaktは業界標準みたいなところがありまして、他のサンプリング音源のデベロッパーが、自社でソフトウェアの開発はせずに、音色だけ作って、Kontaktをプレイヤーエンジンとして使ってもらうようにする売り方をしているものがあります。なので、後々に音源拡張の礎として非常に便利です。

注意点が3つもありまして、まず「Native Instrument社のKOMPLETEというバンドル商法に乗るか?」を紹介します。

このKONTAKT単体だと、定価¥46,200で、今はセール中で¥23,100です。単体でも安いです。

一方、Native Instruments社は「KOMPLETE」というバンドル売りをしており、STANDARDプランでも定価¥92,500で、セールでも¥61,600です。このKOMPLETE STANDARDに含まれてるものには、15のシンセプラグイン、36のサンプリング音源プラグイン(KONTAKTも含む)、9のドラムパーカッションプラグイン、19のエフェクトプラグインがあり、大変お得です。

本当にお得なんですが、一方、「本当に使うか…?」ってのもだいぶ含まれます。シンセ音源はほとんどOmnisphereで補えてしまうようなものですし、自動演奏系のいわゆるDTM作曲用途のも含まれていたり、ピアノ音源もなぜか3~4個ぐらいあったりです。SEに割り切ったような音源もありますが、使う頻度が低くてプラグインのそのものが覚えられないので、いざ必要になったときにそもそもこのプラグインにあたろうという発想が出てきません。一応、MASSIVE X(バーチャルアナログ音源)・Battery(ドラムやリズム目的のショット音源のサンプラー)・FM8(FM音源)などちゃんと使えるプラグインもありますが、割とそのぐらいです。

KOMPLETEはソフトシンセの始めの一歩としてはプラグインが大量に揃って楽しいので、予算に余裕があれば、おもちゃ感覚でぜひ、、、なのですが、まあ、なくても困らない感じもします。まあ1回買ってみて、騙されたと後悔するも良し、意外と便利じゃんで納得するも良し、、、どちらでも良い気がします。正直これは甲乙つけづらすぎて…。使ってる人も世にはいるようで、ご予算次第かなと思いました。

注意点の2つ目が「その音色、手弾きしたい…?」です。紹介の先頭にあげた木管金管や弦の音源ですが、正直、生の楽器に叶わないのはキーボーディストご承知のとおりです。このKONTAKTも、ワークステーション的な頑張りはしてるのですが、そのレベルにとどまりますので、大きな感動はないでしょう。

弾かざるを得ないときには心強い武器なのですが、逆をいえば、あんまり使いたくない音色でもあります。知り合いに生楽器で吹ける/弾ける人がいるなら依頼しちゃいたいですね。実際、僕がKONTAKTで手弾きするのは、だいたいハープシコード・マリンバ・グロッケンぐらいにとどまります。

幸い自分の最近のバンドメンバーはフルーティストとバイオリニストに恵まれてました。出会いにありがとう…。セッションとSNSと感謝は大事にしていこうな…。あと巡り合わせを生むための、そもそもの練習のスキルアップな……(自戒)。ご縁は自分が生むものだから……(遠い目)。このあたりはどこまで趣味/ストイックに取り組むかの人生トレードオフかもしれません。でもソフトシンセの道を選んだ以上、ストイック路線は避けられない気もします。

話が壮大になりすぎました。こういう生々しい話は居酒屋でやりましょうね。

急に技術的な話に戻して、注意点の最後が「専門音源に食われやすい」です。

今日は紹介しきれないのですが、Audio Modeling社がSWAMというシリーズで木管金管弦楽器の物理モデリング音源を出しています(後日紹介したい)。このSWAMシリーズは少し工夫はいるものの、音源として非常にレベルが高く、そこらのワークステーションでは叶わないレベルの良い感じの音が出ます。

このあたりを揃えると、注意点2であげたような音色はこちらでリプレースできます。専門音源に食われるのはマルチ音源の基本的な宿命なのですが、特にKONTAKTのデフォルトライブラリーは食われる面積が広いよ、というお話でした。

第5位. KORG - TRITON/TRITON Extreme for Mac/Win(マルチ音源)

KORGのハードシンセ、TRITON、TRITON Extremeのソフトシンセ再現版です。大元が1999~2004年発売されたハードシンセの復刻再現なので、若干、波形もプリセットも古い感が否めないのですが、昔の曲を再現するにはちょうど良かったりします。

なお、高級すぎるソフトシンセだと、リアルすぎて手弾きしづらくDTMにしか使えない問題(これも後日書く)というのがあります。しかし、この音源は、もともと手で弾くことも念頭におかれてる音源なので、ベロシティや音程ごとの音の違いがあまり少なく素直なので、感覚通りに弾けるのが良いところです。

自分の使い所としては、Omnisphereに収録されてないブラス音源や、Omnisphereだと個性が強すぎるベル音源などをこちらで補うことが多いです。基本的にちゃんと選抜されたプリセットなので、汎用的な音色が多いんですよね。とても使いやすいです。

定価は¥27,390で、今はセール中で¥16,390でした。程よいですね。

ちなみに、シンセ御三家のRolandとYAMAHAの状況も紹介しましょう。RolandだとRoland Cloudというソフト音源のシリーズが出ているのと、YAMAHAだとMONTAGE Mユーザー向けのMONTAGEのソフト音源が出ています。Rolandはマルチ音源的なものがなかった(たぶん、リサーチ不足かも)のと、YAMAHA MONTAGEは40万円クラスで値が張りすぎという問題があり、手が出しづらい印象です。自分はKORGの音が好きなので、KORGのKRONOSかNAUTILUSのソフト音源版が出ればいいのになぁ…と思ってるのですが、基本はハードで儲ける会社だと思うので、その日は遠そうですね…。

終わりに

今日は自分が使ってる音源上位5位を紹介しました。とりあえず最初に買って使えるし、その後も末永く使える物を選んだつもりです。

次回は「用途は選ぶが、強力音源の第6~10位」をやるか、「ソフトシンセ購入の全般的な考え方」をやるかは悩み中です。♡マークのスキ!ボタンやコメントなど、励みになるので、引き続きお待ちしています。

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