ソフトシンセキーボーディストの道 vol.4

前回はオススメ音源トップ5について紹介しました。

今回のご紹介

今回は、前回の予告にあった強力な専門音源シリーズを扱ってみます。なので、ちょっと用途は限られるものの、ワークステーションには太刀打ちできない魅力的な音源を紹介してみます。

これらはリアルでエモーショナルな表現力を兼ね揃えた音源です。全部を揃える必要はありませんが、自分のプレイスタイルにあわえて買い揃えていくと、きっとソフトシンセの魅力がわかってくるのではないでしょうか。

専門音源

Spectrasonics - Keyscape(鍵盤楽器の音源)

前回もランクインしたSpectrasonics社が出してる鍵盤楽器の専門音源です。この音源はピアノ以外にもエレピやクラビネット、チェレスタなども備えてるのですが、中でもエレピの音源がぶっ飛ぶほどよいです。

映像で弾いている"Rhodes LA Custom"というプリセットがめちゃくちゃ表現力が良く、これだけで買う価値があるだろうなと思うソフトウェアです。

本当は第1〜5位にいれたいぐらいだったのですが、他音源の汎用性や値段の安さなどを考えてしまった結果、相対的にランク圏外に落ちてしまいました。でも、エレピという利用頻度の高さを考えると、やっぱりオススメしたいプラグインです。

ちなみに他のエレピ音源だと、Rhodes社が直接出してるRhodes V8や、XLN AudioのRhodes Mk.1音源などもあり、こちらのほうが$100~200ぐらいで安価ですので、予算の都合があれば、こちらも検討ください。

Keyscape、個人的にはエレピ以外は使う場面がありません…。ピアノはちょっと他の専門音源に比べると弱かったり、チェレスタなどはKONTAKTでも良かったり、微妙に不遇。そういう値段対パフォーマンスの意味でも圏外に収まりました。


Audio Modeling - SWAM Violin(物理モデリングのバイオリン音源)

物理モデリングという手法でヴァイオリンの音源を再現します。物理モデリングとは何かというと、楽器自体の発音する仕組みをコンピュータ上で計算して再現することで、サンプル音源(つまり実際に楽器を鳴らして録音したデータ)を全く使わずに、それらしい音を出すことができます。

その特性上、ディスク容量が非常に小さい上に、様々な楽器のパラメータを調整することができる音源です。

もともと物理モデリングという方式は注目されていたものの、2010年以前はモデル自体や計算量の限界かよくわかりませんが、そこまでリアルな音が出る音源がなかったのが実情でした。しかし、このAudio Modeling社が出したSWAMシリーズ(ヴァイオリン以外にもチェロとかフルートとかサックスもある)が、今までのサンプリング音源に比べると、非常にリアルな音が出るようになりました。

いや、これすごくないですかね…!

ちなみに、これを普通のキーボードでそのまま弾くだけだと、実はイマイチな音しか出ません。なぜかというと、バイオリンらしい音というのはビブラート・エクスプレッション(もっと細かく分解すると"弓圧"とか)などの様々なパラメータをコントロールして成り立つためです。

そのため、SWAM Violinを使うときには、特殊な機構を持つコントローラーと組み合わせることで、より高い表現力を出すことができます。

下はExpressive E社のToucheを使ったヴィオラ音源の例です

筆者もよくバイオリン音源を手弾きする関係で、この機材の一長一短は語れるところがあるので、それは別の回にやります…。

詰まるところ、良いバイオリンの音を出すには、良いソフトと特殊な機材の両方の掛け算が必要という話でした。

ちなみに、私はあまり研究してないけど、SWAMは管楽器(サックス・フルート)もかなり良いです。バイオリンの弓を押し当てるという機構の複雑さより、息を吹き込むという機構のほうが再現しやすいのではなかろうかと想像してます。


Pianoteq(物理モデリングのピアノ音源)

SWAMに続く物理音源シリーズです。今回はピアノ版。

前回、XLN Audioのピアノ音源をおすすめしましたが、あちらはバンドアンサンブルの中で、メロをとるにもバッキングをするにも割と使いやすい用途であげました。一方、完全な専門音源を使って、バンドの中のソロしかり、落ちサビなどでピアノだけになるような意味でのソロしかり、そういった場面で強い音源も持っておくと良いと思っています。その中で特にPianoteqをあえて推す理由としては、物理モデリングゆえの雑味が少なく通りの良い音なので、バンドの中のソロとして使うようにしています。

クラシックのような重厚な響きを出したい場合には、Synthogy IvoryやVienna Bösendorfer Imperialなどが良いかもしれません。ただし、ピアノに限らず、単体で良すぎる音源は響きが重厚すぎて、バンドの中ではうまく混ざらない・抜けないという問題もあるので、ただゴージャスな音源を買えばよいわけではないというのもポイントかなと思います。

Synthogy - Ivory
https://www.minet.jp/brand/synthogy/top/

Vienna - Bösendorfer Imperial
https://www.vsl.co.at/en/Synchron_Pianos_Bundle/Bosendorfer_Imperial

ちょっと重厚すぎる感じ、わかりますよね?


u-he - Repro(アナログシンセクローン)

ソフトシンセのメジャーなジャンルとして、アナログシンセのクローンものがあります。アナログシンセ、実機だと数十万クラスだし、持ち運ぶのも一苦労なので大変ありがたい限りです。

その中で私がよく使うのはProphet 5クローンのReproという製品でした。

Prophetはリードに使ってもバッキングに使っても良いということで、登場頻度が高いのも理由かもしれません。

ちなみに、Moog社やArturia社もソフトシンセのプラグインを出してるので、製品の好みがあれば、こちらもおすすめです。

https://software.moogmusic.com/synthesizers

https://arturia.jp/products/

私としてはアナログシンセの音の良さは認める一方、可搬性だったり、最終的なバンドアンサンブルに混じると結局はPAや弾き手の音色作りや、そもそもプレイヤーの演奏スキルやコンディションのほうが大事では…と思ってしまうスタンスです。(私が学生時代のときに見かけた"機材にはめっちゃ金かけてるけど、ショージキ演奏も出音も微妙だし練習もそんなしてなさそうな人"を見てたときの原体験から来ています…。)

ということで、分相応に、アナログシンセにお金をかけずにオーディオインターフェイスとパソコンにお金をかけるまでにして、今は持ってる道具の追求と練習のほうに脳味噌を割いています。まあ、どのみち買ったところで、やっぱり持ち運びも大変ですし。可搬性もやっぱり理由としてデカい。

Lennar Digital - Sylenth1(バーチャルアナログ音源)

Reproに続けて、バーチャルアナログ音源系をもう一つご紹介。こちらは特定の製品を模倣したものではなくオリジナルなものです。

このシンセの特徴は、CPU負荷が軽いこと、そして、エディットが簡単で、割と素直な音が出ることがあげられます。なので、だいたい音のイメージがついていて、自分で、作ったりいじったりしたいという時には、こちらでサクッと作りにいくことが多いです。プリセットもアルペジエイターが組まれてるものが多いですが、アルペジエイターの設定を逐一外して使ってます。

また、素直といってるのは、「バンドで使えそう」ということも指しています。売れているシンセ音源としては、SpireAvengerというものがあり、これらはとても人気である一方、EDMにかなり寄ったパッチが多く、音色が過激すぎて、そもそも手弾きやバンド・ミュージックに沿わないという感覚があります。どちらかというと、打ち込みメインでエレクトロな曲を作りたい人なら良いのかも。

シンセ音源を総括すると、自分の中ではこのように使い分けしています。

  • 素直な音を使いたい:Sylenth1

  • 特定の製品を思わせるような音を出したい:Reproなどのクローン

  • 複雑な変調をかけたシンセ音色を作りたい:Omnisphere

ちょうどOmnisphereと、SpireやAvengerを比較した動画もありましたので、参考までにご紹介します。

まとめ

Vol.3-4で、だいたい私が普段つかう音源は紹介しきりました!

基本的には、Vol.3で紹介したような音源で、まず幅広く対応できるようにして、あとは、自分のプレイスタイルにあわせて、今日紹介したような専門音源で、個性を出していくのがよいかなと思っています。

ピアノとシンセの章で紹介しましたが、音色が重厚すぎたり過激すぎるものは、そもそもバンドで使いづらいという問題もあるので、このあたりも参加してるバンドの個性を照らし合わせながら、検討してみると良いと思います。

次回は購入全般のアドバイス総まとめか、バイオリン音源×特殊コントローラー考察あたりでまた執筆を考えてみます。ご精読ありがとうございました!


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