短縮のない読書

私は本屋だ。
すごく本読みというわけではないが、読書が好きで、本から様々なことを学んだ。(学校のサボりかた、お酒の飲み方、料理の仕方…)
本を読める余裕があることは素晴らしいことだと思っている。

私は仕事帰り、休みの日、喫茶店に行き、わざわざ本を読む時間を作る。それは至福だ。
誰にも邪魔されないそんな時を過ごすと不思議とスッキリする。
こんな気持ちをたくさんの人に味わってほしい。
本を読む時間のえもいわれぬ満足感を。

しかしそれをどのようにひとに伝えるか悩む。
個人的には苦手だが、本屋では「読書術」「読書案内」など、読書の指南本が溢れている。
少々参考にする程度ならいいが、それらの本を読むことで、本を選ぶときの失敗体験が減る。読書のよさ、それは人それぞれだけど体験という意味で、失敗を味わうのもまた一興。
私は今までたくさんの失敗本を手にしてきた。読めない悔しさを知っている。そしてその体験により、自分の好きな傾向がわかってくる。
しかし指南書を読んでしまえば、そのような事態は減るということになる。最近は本を選ぶことさえ失敗できない世の中になったのか。
感情を揺さぶられたり、擬似的に他人の人生を味わえたり、そういうところが読書のいいところだ。
それをすっ飛ばす、現代らしい"まとめ"のような指南書は良い読書体験には不要だ。

読書とはその本を読んでいる間の本と自分との関係であり、それ以上ではない。期待しすぎてはいけない。
本を読むということは、電車で隣り合わせなったひとと、ひと時を過ごして離れるように、日々の何気ない1ページなのだ。
その偶然を増やすこと(本を読むこと)で人生は豊かになっていく。
それを少しずつでもいいから伝え、広めていきたい。

2022.2.19 SHORTNOTEより転載

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