見出し画像

『パパ活の社会学』(光文社新書)刊行記念:失われた愛、そしてセンチメントの行方を探して(坂爪真吾)

本日10月20日(土)朝日新聞朝刊に、『「身体を売る彼女たち」の事情』(ちくま新書)と『パパ活の社会学』(光文社新書)の広告をダブルで掲載していただきました。弊社による朝日ジャーック!(超小規模ですが・・・)

『パパ活の社会学』の帯イラスト、漫画家の榎本ナリコさんに描いて頂きました。お忙しい中、素敵なイラストを描いてくださり、本当にありがとうございました。

私が榎本ナリコさんの作品に出会ったのは、ちょうど20年前の高校時代(1998年)でした。

地元・新潟市古町withビルのヴィレッジヴァンガードで『センチメントの季節』1巻に出会って、衝撃を受けました。

私の高校時代の黒歴史は前著『孤独とセックス』(扶桑社新書)を参照して頂きたいのですが、思春期ど真ん中の私のハートにクリティカルヒットな文学的なオムニバス・内容・繊細な絵柄で、それはもう夢中になって読んだ記憶があります。

当時は女子高生の援助交際が社会問題化していた時期で、我々(という言葉をいきなり使ってしまうのですが)地方公立進学校の鬱屈した高校生にとって、宮台真司さんの本(終わりなき日常を生きろ)、桜井亜美さんの小説(イノセントワールド)、そして榎本ナリコさんのマンガ(センチメントの季節)は「三種の神器」とも言うべき存在でした。

ちなみに『センチメントの季節』全8巻の中で個人的に一番好きな作品は、『二度目の夏の章』(2001年)です。私の地元・新潟も出てきます。

大学一年生の夏、実家の新潟に帰省する時の高速バスの車内で読んで、強烈な喪失感の嵐に襲われて、その後数日間、魂が異次元に飛ばされた記憶があります。。。出てくる短歌もグサグサ刺さります。『パパ活の社会学』よりもむしろこっちを読んでください、とかいうと光文社さんに怒られそうですが(汗)、とにかく超名作です。

私は1981年生まれで、いわゆる「援交世代」と呼ばれている世代に属しています。

『センチメントの季節』を高校時代にリアルタイムで読んでいた男子、実際に当事者として援助交際に関わっていた女子が多い世代に属していると思います。

その「援交世代」が大人になって、援助交際の味を忘れられずに再び「パパ」を探し始める女性、当時同級生の女子と付き合えなかった穴埋めとして自ら「パパ」になろうとしている男性、そして私のように観察者・支援者として彼ら・彼女らに関わろうとする人間の集う世界が、今回の新書のテーマである「パパ活」の世界の一面なのだと考えています。

もう戻れないあの時代。感傷を引きずりながら、その時に解けなかった問い、喪失した何かを探し求めて『パパ活』の世界の扉を叩く私たち。

もちろん、扉の向こうには、解けなかった問いの答えが待っているわけでもなければ、喪失した何かを取り戻せる可能性があるわけでもない。

それでも、人は扉の向こう=『センチメントの行方』に吸い寄せられる。その原因は、一体何なのか。

あくまで私の主観的な解釈ではありますが、現代社会において『センチメントの行方』の一つが凝縮されている世界が「パパ活」なのでは、と思います。

そうした個人的な思いも含めて、今回、榎本ナリコさんに帯イラストを描いて頂けたことは、とても嬉しいです。

1998年~2002年に描かれた『センチメントの季節』全巻と、その15年後に描かれた『センチメントの行方』1~2巻を読んでから『パパ活の社会学』をお読み頂けると、より面白く読めると思いますので、ご興味のある方は今すぐkindleでチェックされてみてください。

というわけで、noteの前の援交世代のみんな。

「神様は、何も禁止なんかしてないですよ」(本文P139を参照)

行こうぜ!『センチメント』の向こうへ!!

『パパ活の社会学』の目次・詳細はこちら

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?