「未来」は誰も傷つけない ~『未来のセックス年表 2019-2050』の目指す未来~(坂爪真吾)
『未来のセックス年表 2019-2050』(SB新書)、本日3月6日(水)、発売になりました。
今回の表紙イラストは『GANTZ』『いぬやしき』『GIGANT(ギガント)』の奥浩哉さんです!(拍手)
未来感溢れる超美麗イラストを書いて頂き、中学生時代からのファンとしては、ガチで死にそうなレベルの多幸感に包まれております(鼻血)。
今回、SBC(ソフトバンククリエイティブ)さんから「これからの30年間で、私たち日本人の性がどう変化するかを予測する」という無謀・・・じゃなかった壮大なテーマで新書を一冊書かせて頂く、という貴重な機会を頂いたのですが、執筆の過程で強く感じたことは、「未来を語ることは、現在や過去を語ることに比べて、誰かを傷つけてしまう可能性が比較的少ない」ということです。
それはなぜか。
身もフタもない話になりますが、未来を語ることは、端的に言うと「マウンティングの手段になりにくいから」だと思います。
自分だけが、ある領域や集団の「現在」を知っている(と思い込む)ことは、容易に人をマウンティングへと駆り立てる要因になる。
LGBTや障害者、セックスワーカー、家出少女や貧困女子など、当事者や被害者、性的マイノリティの「今」「現場」「リアル」「気持ち」を代弁して、あるいは自分(たち)だけが彼らの「現在」を代弁できると称して、誰かや何かを攻撃する個人アカウントや団体は、老若男女を問わず、ネット上に溢れ返っています。
一方、自分だけが正しい「過去」を知っている(と思い込む)ことも、容易に人をマウンティングへと駆り立てる要因になる。
自分(たち)だけが正しい歴史の真実を知っている、歴史を語る資格があると称して、異なる歴史観を持つ相手や自分たちに都合の悪い主張をする相手を「歴史を知らない」として見下す振る舞い、「歴史修正主義者」と見なして攻撃する振る舞いもまた、左右を問わずネット上に溢れ返っています。
ネット社会においては、「現在」も「過去」も、歪んだ正義感や自己承認欲求を満たすための手段、頭の中で作り上げた仮想敵を叩いて気持ちよくなるための手段になってしまいがちです。
しかし、未来は違う。
当然ですが、未来については、誰も正解を知らない。「真実」や「ファクト」をドヤ顔で語ることもできない。どれだけ労力を費やして予測をしたとしても、そのうちのほとんどは外れてしまう。
「誰も無謬であることができない」という意味において、万人が無知かつ平等の立場に置かれる。
未来は全ての人にとって平等であり、「格差」が生じない。それゆえに未来を語ることは、基本的にはマウンティングの手段になりえない。
「断定」や「立証」ができないため、現在や過去を語ることに比べて、誰かや何かを傷つける可能性が少ない。
(穿った見方をすれば、誰も傷つけられない=マウンティングの武器になり得ないからこそ、これまで性の未来を積極的に語ろうとする人が少なかったのかもしれませんが)
性の未来を語る人が増えて、性の未来を語る・構想する・共有する楽しさがどんどん広まっていけば、「現在」と「過去」の呪縛に囚われて不毛なマウンティングを繰り返す人たちも減り、少しは息をしやすい・生きやすい世の中になるのではないでしょうか。
今回の新刊『未来のセックス年表 2019-2050』が、そうした空気を作るための一助になれば嬉しいです。
というわけで、お近くの書店・Amazon・kindleで、ぜひ「未来」を手に取って頂けると有難いです。そう、「未来は僕らの手の中」にあるのだから!
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